【開発録】EAは曜日をどう扱うか — 窓開け、スワップ3倍デー、週末持ち越しの設計論
【要点】
・FXには曜日ごとの傾向があり、EAの設計では、窓開け、スワップ、週末持ち越しの3点が、曜日と結びつきやすい
・ただし、スワップ3倍の曜日などは、通貨ペアやブローカーで異なる。自分の口座の仕様で確認する必要がある
・「曜日の偏り」は観測であって、将来の保証ではない。設計では、避ける設計と使う設計のどちらを取るかを、先に決めておく
■ 1. 前提:FX市場の週の構造
FXは、平日は基本的に連続して取引される。一方、週末は市場が止まる。この「止まる」ことが、曜日ごとのクセを生む出発点になる。
【画像:fig26_week_table.png】
表のとおり、月曜、水曜、金曜に、設計上の論点が集中する。なお、表の内容は一般的な傾向であり、ブローカーや銘柄による違いがある点に注意が必要だ。
■ 2. 月曜:窓開け(ギャップ)
金曜の終値と月曜の始値は、一致するとは限らない。この差を窓開けと呼ぶ。週末に材料が出た場合、月曜の始値が大きく飛ぶことがある。
【画像:fig27_gap_image.png】
「窓は埋まる」と言われることがあるが、毎回そうなるわけではない。したがって、窓が埋まる前提でロジックを組むことは、避けたほうがよい。
設計上の選択肢は、大きく2つある。窓を避けるか、窓の直後を狙うかである。
ラボのGBPJPY Anomaly v03は、後者にあたる。
毎週月曜の01:30に買い、60分後に決済するか、40pipで損切りする。2
016年1月から2025年12月のバックテストで、総取引は298回、プロフィットファクターは2.93、勝率は71.14%、最大ドローダウンは0.55%だった。
発注するのは月曜のうち6割ほどで、年に30回ほどになる。
ここで注意したいのは、この数字が「過去の観測」だという点だ。
曜日の偏りは、観測できても、続く保証はない。また、取引数が約300回と、決して多くはない。
数字を良く見せるために、取引数を犠牲にしていないかも、あわせて見る必要がある。
もうひとつ、WeekOpen Portfolioのように、固定の時刻ではなく「市場が再開した最初の足」を基準にする設計もある。
週末の休場を検知して動くため、サーバー時刻のずれに依存しにくい。
■ 3. 水曜:スワップ3倍デー
多くの通貨ペアでは、水曜の持ち越しに、3日分のスワップが付く。
週末をまたぐ日数が、水曜にまとめて計上されるためである。スワップがプラスなら3倍もらえ、マイナスなら3倍引かれる。
ただし、3倍が付く曜日は、通貨ペアや、金・指数などの銘柄、ブローカーによって異なる場合がある。
ここは断定せず、自分の口座の仕様を確認する必要がある。
EAの設計では、持ち越しを前提とするロジックほど、この影響が大きい。
短時間で決済するロジックでは、ほぼ影響しない。ラボでは、水曜に実行すると警告を出すツール(魔の水曜警告アラート)を用意している。
ただし、これは運用上の注意を促すものであり、ロジックの優劣とは関係がない。
スワップの水準そのものも、ブローカーが随時見直すため、一度確認して終わりにはできない。
持ち越しを前提とするロジックを運用するなら、定期的に仕様を見直す運用が望ましい。
■ 4. 金曜:週末持ち越しの扱い
金曜の設計論点は、週末をまたぐかどうかである。
またげば、月曜の窓開けの影響を受ける。
有利に飛ぶ場合もあれば、不利に飛ぶ場合もある。
ラボのUSDJPY Squeeze-Momentum v6は、週末フラット(持ち越しなし)で設計している。
WeekOpen Portfolioも同様に、週末持ち越しなしである。
窓を、最初からリスクとして外す考え方だ。
また、金曜の終盤は、取引が減りやすく、毎月第1金曜は、米国の雇用統計がある。
値動きが大きい日は、スプレッドが広がりやすいため、約定コストの面でも注意が必要になる。
■ 5. 曜日×時刻:偏りを組み合わせて見る
曜日単体の傾向は、粗すぎることがある。
ラボのGBPJPY Anomaly v04は、曜日と時刻を組み合わせた110のセルを定義し、偏りが見られるセルだけを売買の対象にしている。
期間は2016年1月から2025年12月で、総取引は3,025回、プロフィットファクターは1.51、前進検証は10サイクルすべてプラスだった。
ただし、2016年と2018年は年間損失で、すべての年で勝てているわけではない。
曜日と時刻を組み合わせると、傾向を細かく拾える一方で、セルが増えるほど、偶然の偏りを拾う危険も増える。
この点は、過剰最適化の問題として、別に検証する必要がある。
■ 6. サーバー時刻のずれ
MT4のサーバー時刻は、夏時間と冬時間で1時間ずれる。
たとえば、GBPJPY Seam Morning v1は、サーバー時刻で夏は01:00、冬は02:00を基準にしている。
曜日の切れ目や、「月曜の朝イチ」という見え方も、この影響を受ける。
EAの設計と運用の両方で、サーバー時刻を前提に置く必要がある。
■ 7. まとめ なお、本稿で挙げた数字は、いずれもバックテストの実測値で、将来の成績を示すものではない。
曜日の偏りが今後も続くかどうかは、フォワードで確かめていく必要がある。
曜日は、カレンダー上の区切りではなく、設計の一部である。
窓を避けるのか、狙うのか。スワップを避けるのか、受け入れるのか。選択は、曜日ごとに出てくる。
曜日の傾向は、観測された偏りとして扱い、検証で確かめて、記録する。
我々Semura Lab.は、傾向を決め打ちせず、事実として確認する姿勢を、これからも保っていく。
EAの設計や検証の進め方で気になる点があれば、よろず相談所でお気軽にどうぞ。
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