TradingViewのストラテジー結果を、初期設定のまま読まない――取引の4割が強制決済だった
はじめに:MT5でなくても、起きることは同じ
この連載では、MT5のバックテストを例に、成績をうのみにしない確かめ方を書いてきました。今回はTradingViewです。Pine Scriptでストラテジーを書き、ストラテジーテスターの成績を見ている人も多いと思います。
TradingViewに最初から入っているストラテジー「MovingAvg Cross」を、EURUSDの1時間足で、設定を何も変えずに動かしました。期間は2025年1月から2026年10月です。取引一覧を書き出して中身を調べると、成績の数字をそのまま読んではいけない理由が見つかりました。
決済済み2,192件のうち、893件が強制決済
取引一覧には、決済の理由が書かれています。数えると、次のとおりでした。
| 決済の理由 | 件数 |
|---|---|
| 売りのサインで決済 | 650 |
| 買いのサインで決済 | 649 |
| 強制決済(Margin call) | 893 |
全体の約41%が、サインではなく強制決済で終わっていました。
中身を見ると、強制決済の取引はどれもごく小さな数量です。通常の取引の数量の中央値は約82,000通貨、強制決済の取引は約250通貨でした。初期設定では資金の全額で注文するため、売りと買いを入れ替えるたびに端数の小さな取引が生まれ、証拠金が足りずにすぐ強制決済されていたと見られます。
この端数が、成績の数字をゆがめる
強制決済の893件は、すべて負けです。ただし数量が小さいので、負け額は1件あたり数ドル。これが混ざると、取引数、勝率、中央値が大きく変わります。
| 項目 | そのまま | 強制決済を除く |
|---|---|---|
| 取引数 | 2,192 | 1,299 |
| 勝率 | 19.3% | 32.6% |
| 1件あたりの中央値 | −0.66ドル | −33.63ドル |
| プロフィットファクター | 0.94 | 0.95 |
| 合計損益 | −6,050.67ドル | −4,964.33ドル |
勝率は実際より低く見え、「ふだんの1件」の負けは実際よりずっと小さく見えます。第2回で「PFより先に見る」と書いた取引数と中央値が、どちらも当てにならなくなっています。
もう一つ、この結果は手数料が0のままでした。初期設定では、手数料もスリッページも入っていません。
読む前に、「プロパティ」を3つ直す
ストラテジーの設定(歯車のアイコン)の「プロパティ」で、成績を読む前に次の3つを実際の運用に合わせます。
- 注文サイズ:資金の全額ではなく、実際に使う固定の数量にします。端数の取引と強制決済が出なくなります
- 手数料:使う口座の実際の手数料を入れます。口座の公式ページの表記で確かめてください
- スリッページ:約定価格のずれを、少し多めに見積もって入れます
直したら、取引一覧を書き出し直してから点検します。設定がずれたままの成績をどれだけ細かく調べても、結論はずれたままです。
設定を直しても、結論は変わらないことがある
今回の例は、強制決済を除いてもPFは0.95で、平均の95%信頼区間はゼロをまたぎます(判定はNOISE)。さらに、買いは+1,301.67ドル、売りは−6,266.00ドルで、買いだけがプラスでした。この期間のEURUSDは約1.03から1.12へ上がっています。第3回のチェックリストの「買いと売りに分ける」でいえば、相場の向きを拾っているだけの可能性がある形です。
設定を直すのは、成績を良くするためではありません。正しく読める状態にするためです。そのうえで、これまでの連載と同じ確認を当てます。
まとめ
- TradingViewの初期設定のままだと、取引の4割が強制決済の端数だった
- 端数が混ざると、取引数・勝率・中央値が当てにならない
- 読む前に「プロパティ」で、注文サイズ・手数料・スリッページを実際に合わせる
- 直してから、取引数、中央値、大勝ちの除外、前半と後半、買いと売りを確かめる
おまけ:TradingViewの取引一覧も、そのまま点検できます
自作の点検ツール「EA頑健性チェック」は、TradingViewの取引一覧(CSV・XLSX)にも対応しました。取引一覧をドラッグ&ドロップすると、この記事の確認をまとめて行います。強制決済の多さや、手数料の設定が0のままになっていることも知らせます。この記事の数字も、このツールで出したものです。
自分では疑いにくい、という方向けに、点検を受けられるサービスも用意しています。EAバックテストの頑健性を第三者が点検します ¥14,800(Skijan)。MT5のレポート最大3本をお預かりし、所見書(PDF)にまとめて3営業日以内にお返しします。判定の基準は固定で、結果が良くなかった場合に結果を変えることはできません。
※本記事は筆者自身の検証の進め方を紹介するもので、特定の銘柄・手法・ストラテジーの売買を勧めるものではありません。過去の検証結果は将来の成績を保証するものではありません。