AIでEAの商品概要を盛らずに書く――材料・禁止・構成の3つを渡す頼み方
はじめに:AIに任せると、商品概要は盛られる
商品概要をAIに書いてもらう人は多いと思います。数分でそれらしい文章ができるので、便利です。
ただ、そのまま任せると、だいたい盛られます。「安定した収益」「あらゆる相場に対応」「初心者でも安心」。どのEAにも当てはまり、どれも根拠が書かれていない言葉です。
盛った概要は、売れたあとに返ってきます。購入者は概要を読んで期待を決めるので、成績がその期待に届かなければ、問い合わせや低い評価になります。前回のチェックリストでEAを確かめても、概要で盛ってしまえば台無しです。
今回は、AIを使いながら、盛らずに魅力を伝える商品概要の書き方です。私の点検ツールの商品ページも、この方法でAIと一緒に書きました。
AIが盛る理由:材料なしで「魅力的に」と頼むから
よくある頼み方は、こうです。
- 「このEAの商品説明を、魅力的に書いて」
- 「売れる商品概要にして」
AIが知っているのは、たいていEAの名前と、「トレンドフォロー」「EURUSD」などの数語だけです。そこへ「魅力的に」と頼まれると、AIは足りないところを、世の中のEAの商品ページによくある言葉で埋めます。それが「安定」「高勝率」「放置でOK」の正体です。
つまり、盛られるのは、AIが嘘つきだからではありません。書くべき事実を渡していないのに、文章を強くしろと頼んでいるからです。これは第1回の「バックテストを良くして」と同じ構造です。
対策も同じです。「良く書いて」ではなく、「この事実だけを使って、分かりやすく書いて」と頼みます。
頼み方の型:材料、禁止、構成の3つを渡す
AIに渡すものは3つです。
- 材料:書いてよい事実の一覧。前回のチェックリストの数字と、販売ページに書く前提(テスト期間、手数料、推奨資金の根拠)がそのまま使えます
- 禁止:材料にないことを書かないこと。使わない言葉も具体的に指定します
- 構成:何をどの順に書くか。弱点と注意の欄を必ず入れます
そのまま使える依頼文を置いておきます。【】の中を自分のEAの内容に替えてください。
これから渡す事実だけを使って、EAの商品概要を書いてください。 【材料】 ・EAの仕組み:【例:1時間足の移動平均の向きに合わせて入るトレンドフォロー】 ・通貨ペアと時間足:【】 ・バックテストの期間と取引数:【】 ・最適化に使っていない期間の成績:【】 ・テストに入れた手数料とスプレッド:【】 ・得意な相場と、苦手な相場:【】 ・勝率と、ふだんの1件の損益(中央値):【】 ・推奨資金と、その根拠にしたドローダウン:【】 【守ること】 ・材料にない数字や事実は、一つも書かない。足りなければ、書かずに「この情報があれば書ける」と最後に一覧で知らせる ・次の言葉は使わない:安定、確実、絶対、聖杯、高勝率、放置でOK、あらゆる相場、初心者でも安心、誰でも稼げる ・将来の成績を約束する書き方をしない ・形容詞ではなく、数字と条件で説明する 【構成】 1. どんなEAか(2〜3文) 2. どんな相場で動き、どんな相場では動かないか 3. 検証の前提(期間、取引数、手数料、最適化に使っていない期間の成績) 4. 弱点と注意(負けが続く局面、推奨資金とその根拠) 5. 向いている人、向いていない人
ポイントは「足りなければ書かずに知らせる」の一文です。これがないと、AIは空欄をそれらしい言葉で埋めます。これがあれば、自分がまだ確かめていないことが、一覧で分かります。
「弱点と注意」を書かせると売れなくなる、と心配になるかもしれません。でも、弱点が書いてある概要は、他の数字も信じてもらえます。そして、向いていない人が買わなくなるので、買ったあとの「話が違う」が減ります。
例:同じEAの、盛った概要と盛らない概要
連載で使ってきたMT5のサンプルEA「Moving Average」を、仮に出品するとして書いてみます。(前回のチェックリストでは「まだ出品しない」という結論でした。あくまで書き方の例です。)
盛った概要(材料なしで「魅力的に」と頼んだときにありがちな例)
移動平均を駆使した独自ロジックで、相場の大きな流れを確実に捉えます。バックテストではPF1.55を記録し、安定した右肩上がりの資産曲線を実現。設定は簡単で、初心者の方でも放置するだけで運用できます。
PF1.55だけは本当の数字ですが、ほかの文には裏付けがありません。「確実に捉える」「安定した」は、第2回・第3回で見た実際の姿(10回に7回は負け、利益の約88%が前半)とは反対です。
盛らない概要(前の節の依頼文に、実際の数字を渡したとき)
どんなEAか EURUSDの1時間足で、移動平均の向きに合わせて入るトレンドフォロー型のEAです。小さく負ける取引が多く、たまの大きな勝ちで取り返す形です。
動く相場、動かない相場 一方向に大きく動く相場で利益を出します。レンジ相場では小さな負けが続きます。
検証の前提 2026年1〜9月、193件。勝率29.5%、勝ちの平均+47.39ドル、負けの平均−12.81ドル。テストに手数料は入っていません。利益の多くは期間の前半に出ています。
弱点と注意 大きな勝ちが来ないあいだは、資産がじわじわ減ります。バックテストの最大ドローダウンは337ドルですが、取引の順番しだいでは約580ドルまで深くなりうるため、推奨資金はこの値をもとに決めています。
向いている人 負けが続く期間を理解したうえで、数か月単位で見られる方。毎月の安定した利益を求める方には向きません。
盛らないほうを読むと、このEAはまだ出品すべきでないことも見えてきます。「利益の多くは前半」「手数料なし」と書かざるを得ないからです。正直な概要を書こうとすると、それ自体が出品前の点検になります。
書いたあとの点検:同じAIに「盛ったところ」を探させる
依頼文を工夫しても、AIはときどき材料にないことを書きます。そこで、書き上がった概要を、今度は点検役として同じAIに読ませます。第1回で書いた「同じAIを、悪いところを探す役に回す」方法です。
次の商品概要を、購入者の立場で厳しく点検してください。 ・材料にない数字や事実を書いている文 ・数字の裏付けがないほめ言葉(安定、優秀、強力など) ・将来の成績を約束していると読める文 ・読んだ人が実際より良い成績を期待しそうな文 をすべて抜き出し、それぞれに「どう直せば事実だけになるか」を示してください。 【材料】(書くときに渡したものと同じ) 【商品概要】
最後に、自分の目で2つだけ確かめます。
- 概要に出てくる数字を、レポートと一つずつ照らし合わせる。AIは数字を丸めたり、取り違えたりします
- 「この概要を読んで買った人が、最初の3か月で負けても納得できるか」を考える。納得できないなら、弱点の欄が足りません
まとめ
- AIが盛るのは、事実を渡さずに「魅力的に」と頼むから
- 渡すのは、材料・禁止・構成の3つ。「足りなければ書かずに知らせる」を必ず入れる
- 書いたあとは、同じAIに盛ったところを探させ、数字は自分でレポートと照らし合わせる
- 正直な概要を書こうとすると、それ自体が出品前の点検になる
私自身がAIとどうEAの開発と検証を進めているかは、続きの第5回「3つのAIを使い分けてEAを検証する」に書きました。
おまけ:材料の数字をまとめて出すには
依頼文の【材料】に入れる数字の多くは、自作の点検ツール「EA頑健性チェック」が出す結果そのものです。MT5のバックテストレポートを渡すと、取引数、中央値、前半と後半、コストの余裕、順番しだいのドローダウンなどをまとめて文章で返します。その結果を、そのままAIへの材料に使えます。
自分では疑いにくい、という方向けに、点検を受けられるサービスも用意しています。EAバックテストの頑健性を第三者が点検します ¥14,800(Skijan)。MT5のレポート最大3本をお預かりし、所見書(PDF)にまとめて3営業日以内にお返しします。判定の基準は固定で、結果が良くなかった場合に結果を変えることはできません。
※本記事は筆者自身の進め方を紹介するもので、特定の銘柄・手法・EAの売買を勧めるものではありません。過去の検証結果は将来の成績を保証するものではありません。