通貨強弱で相場の方向は分かるのか|28ペア・1年分を実測した結果
通貨強弱メーターは、MT5 のインジケーターの中でも人気のあるジャンルです。「いちばん強い通貨を買って、いちばん弱い通貨を売る」。そう説明されることもよくあります。
ただ、この使い方には前提がひとつあります。いま強い通貨は、この先も強いままだ、という前提です。
通貨強弱は、本当にこれからの方向を教えてくれるのか。
私は通貨強弱のインジケーターを自分で開発しています。だからこそ、感覚ではなく数字で確かめておきたいと思いました。主要 28 ペアの 1 年分のデータで、実際に数えてみました。
測定の方法
強さの計算には、私が開発しているインジケーターの計算式をそのまま使いました。初期設定の「RSI 方式」と、比較のための「価格変動方式」の 2 通りです。
- データ:IC M〇〇〇 の MT5、H1(1 時間足)
- 対象:主要 8 通貨の組み合わせ28 ペアすべて
- 期間:2025 年 10 月 1 日から 2026 年 10 月 16 日まで(全ペア共通の 6,502 本)
- 測定点:6,098 回(1 時間ごと)
RSI 方式:ペアごとに RSI(14)を計算し、50 からの差を 2 倍して ±100 に換算します。通貨が左側(基軸通貨)にあるペアではその値を足し、右側(決済通貨)にあるペアでは引き、7 ペア分を平均したものがその通貨の強さです。価格変動方式:RSI の代わりに、直近 24 本の変化率を使います。
1 時間ごとに「いちばん強い通貨」と「いちばん弱い通貨」を決め、その 2 つでできるペア(強いのが EUR、弱いのが JPY なら EURJPY)を、4 時間後、8 時間後、24 時間後に確認しました。確かめたのは次の 3 点です。
- 方向:強い通貨を買い、弱い通貨を売る方向に進んだか
- 持続:いちばん強い通貨は、時間がたっても、いちばん強いままか
- 値幅:そのペアは、ほかのペアより大きく動いたか
結果 1:方向は五分五分
2 回に 1 回にも届きません。コインを投げるのと変わらない数字です。
| 確認したタイミング | RSI 方式(初期設定) | 価格変動方式 |
|---|---|---|
| 4 時間後 | 48.5 % | 49.5 % |
| 8 時間後 | 48.1 % | 49.0 % |
| 24 時間後 | 49.4 % | 49.4 % |
4 時間後でも 24 時間後でも、計算方式を変えても、結果はほぼ 50 % です。通貨の強さが表しているのは「ここまでに何が起きたか」です。この先どちらに進むかは、そこには含まれていません。
先にはっきりお伝えします。この測定では、売買の損益を一切計算していません。スプレッドも、損切りや利確の位置も入っていません。ここに出てくる数字は「方向が合っていた割合」であり、勝率ではありません。トレードの成績として読まないでください。
結果 2:強さは数時間で入れ替わる
では、強さそのものはどれくらい続くのか。いちばん強かった通貨が、その後もいちばん強いままだった割合を数えました。
| 確認したタイミング | 1 位のまま(RSI 方式) | 2 位以内(RSI 方式) | 1 位のまま(価格変動方式) |
|---|---|---|---|
| 4 時間後 | 53.3 % | 74.1 % | 62.6 % |
| 8 時間後 | 40.7 % | 60.7 % | 49.2 % |
| 24 時間後 | 19.8 % | 34.9 % | 16.3 % |
通貨は 8 つあるので、偶然でも 12.5 % は 1 位のままになります。4 時間後の 53.3 % はそれを大きく上回っていて、強さには数時間の「持ち」があることが分かります。ところが 24 時間後には 19.8 % まで下がり、偶然の水準に近づきます。
通貨の強さは「いま」の情報です。半日たてば半分以上が入れ替わり、1 日たてばほとんど残っていません。
結果 3:動くペアを示す力はある。ただし小さい
方向は分からない。強さも長くは続かない。では、通貨強弱には意味がないのでしょうか。値幅を見ると、少し違う結果が出ました。
ペアによって、普段の値動きの大きさは違います。GBPJPY と EURGBP をそのまま比べても意味がありません。そこで、各ペアの値動きを「そのペアの直近 10 日間の、平均的な 1 時間の値動き」の何倍か、で揃えました。比べる相手には、毎回ランダムに選んだペアを使っています。
| 確認したタイミング | 強い/弱いペア | ランダムなペア | 真ん中のペアより大きく動いた割合 |
|---|---|---|---|
| 4 時間後 | 2.14 倍 | 1.95 倍 | 54.2 % |
| 8 時間後 | 3.02 倍 | 2.79 倍 | 52.5 % |
| 24 時間後 | 5.10 倍 | 5.13 倍 | 51.5 % |
RSI 方式の数値です。価格変動方式でもほぼ同じでした(4 時間後 2.14 倍、8 時間後 3.02 倍、24 時間後 5.22 倍)。
4 時間後、「強い通貨/弱い通貨」のペアは、ランダムに選んだペアより約 1 割大きく動いていました。いま動いているペアに目を向ける力は、たしかにあります。ただし差は小さく、24 時間後には消えています。
一方で、どのペアを見るか自体の影響は大きいことも分かりました。同じ 4 時間で、いちばん動いたペアは、真ん中のペアの平均3.2 倍動いています。同じ相場でも、見ているペアによって、見えるものがまったく違います。
では、どう使えばいいのか
この結果から、私は通貨強弱を次のように使うのが筋だと考えています。
- 方向を決める道具としては使わない。方向は、チャートの構造やご自身の手法で判断します。
- 「どこを見るか」を絞る道具として使う。28 ペアを毎回すべて見る代わりに、いま強弱の差が開いているペアから見ます。
- 時間がたった数字は信用しない。強さは数時間で入れ替わります。昨日の強弱で今日のペアを選ぶことに、データ上の根拠はありません。
- 複数の時間足と、強さの推移を見る。数時間で入れ替わるのですから、その強さが短期と長期で一致しているのか、強くなっている途中なのか、すでに戻し始めているのかを確認する価値はあります。ただし、この点は今回の測定では検証していません。
この測定の限界
数字を出す以上、どこまで言えるのかも書いておきます。
- 1 つのブローカー、1 年分、H1 だけの結果です。別の期間や時間足では、数字が変わる可能性があります。
- 計算はインジケーターの初期値で行っています。RSI は 14、価格変動は 24 本です。設定を変えれば結果も変わります。
- 1 時間ごとの測定は互いに重なっています。4 時間後を見る測定は、隣の測定と 3 時間分が同じです。6,098 回は独立した試行ではないので、数字は傾向として読んでください。
- 損益ではありません。スプレッドもスワップも入っていません。
まとめ
- 強い通貨の方向へ進んだのは、4 時間後で48.5 %。方向は分かりません。
- いちばん強い通貨が 1 位のままだったのは、4 時間後で53.3 %、24 時間後で19.8 %。強さは「いま」の情報です。
- そのペアは 4 時間で、ランダムなペアより約 1 割大きく動きました。動く場所を示す力は、小さいながらあります。
- 同じ時間でも、ペアによって値動きは3.2 倍違います。どこを見るかは重要です。
通貨強弱は、羅針盤というより地図に近い道具です。どちらへ進むかは教えてくれませんが、いまどこが動いているかは教えてくれます。
今回の計算に使ったのは、私が MT5 用に開発している「通貨強弱ダッシュボード PRO」と同じ計算式です。28 ペアの強弱、3 つの時間足、直近 15 回の推移を 1 つのパネルに表示します。
・製品ページ:通貨強弱ダッシュボード PRO MT5
本記事は分析および教育を目的としたものであり、投資助言ではありません。記載した数値は過去のヒストリカルデータに基づく測定結果であり、将来の成果や利益を保証するものではありません。外国為替証拠金取引には元本を超える損失のリスクがあります。最終的な投資判断は、お客様ご自身の責任で行ってください。