EAが負け始めたら、止めるか続けるか。数か月の成績では見分けにくい理由と、崩れ方5つの型・止める線の書き方
FX聖杯研究所の所長です。50歳のシステムエンジニアで、「勝てそう」に見える自動売買の手法を、過去データで確かめて壊していく記録をつけています。
有料記事①で、「本番とのずれを疑う」と書きました。今日は、そのずれがどこから来るのかを、崩れ方の型に分けて書きます。
有料記事①「EAを買う前に確認する20項目と、危ない答えの組み合わせ」:https://www.gogojungle.co.jp/finance/navi/articles/127413
EA(FXの売買を自動で行うプログラム)の商品ページには、過去データでの検証の成績が載っています。この成績が、買って動かし始めると崩れることがあります。
この記事に出てくる数字は、すべて説明のための計算例です。 私自身の検証結果や成績ではありません。
有料部分に何が入っていて、読むと何ができるようになるかは、無料部分の一番最後に一覧で書いています。
結論
過去データの成績は、「決まった条件で、決まった期間に動かしたら」の成績です。本番は、その条件と期間の外で動きます。だから崩れることがあります。
崩れ方は、大きく5つの型に分けられます。
- 取引コストのずれ: 本番では、買値と売値の差が広がったり、注文が不利な値段で成立したりする
- 過去に合わせすぎ: 過去のデータに合う設定値を選んだので、まだ見ていない期間で勝てない
- 相場の変化: 利益が、相場の性質が合った一時期に集まっている
- 一部の大勝ち頼み: 利益が、数回の大きな勝ちに集まっている
- 検証の作りのずれ: 検証に使ったデータの細かさや数え方が、本番と違う
見分けるときは、2つの考え方を使います。
- 基準を先に決める: 商品ページを開く前に、「この数字なら崩れを疑う」線を書いておく
- 本番とのずれを疑う: 成績を見たら、5つの型のどれで崩れそうかを先に探す
最大の危険は、崩れていても、本番の最初の数か月では見分けられないことです。計算例は下に書きます。
型③の確かめ方:一番良い年を抜いてみる
5つの型のうち、商品ページの数字だけで、すぐに確かめられるものを1つ見せます。型③の相場の変化です。
計算例です。あるEAの商品ページに、5年間・取引500回で、合計50万円の利益と書いてあったとします。金額は取引コスト(買値と売値の差や手数料)を引いたあとの額です。
条件:5年間(2021〜2025年)・取引500回(1年に約100回)・取引の量は毎回同じ。説明のための計算例です。
5年で50万円なら、1年に10万円ずつ増えたように見えます。でも年ごとに分けると、2022年だけで42万円です。合計の84%が、1つの年に集まっています。
2022年を抜くと、残りの4年で8万円。1年あたり2万円です。商品ページの「5年で50万円」から思い浮かべる手法とは、別の手法に見えます。
実際の相場でも、2022年はドル円が10月まで一方向に大きく上がった年でした。この計算例のEAが、一方向に動く相場で大きく勝つ作りだったなら、そういう年が来ない本番の成績は「1年に2万円」の方に近くなるかもしれません。
確かめ方は2つです。
- 年ごと(または月ごと)の損益のグラフを探し、一番良い年が合計の何割かを出す
- 一番良い年を抜いても、残りの年で黒字が残るかを見る
型①・②・④・⑤にも、商品ページの数字で確かめる方法があります。それは有料部分に書いています。
最大の危険:崩れていても、数か月では見分けられない
では、買って動かし始めたあとに、本番の成績で崩れたかどうかを見ればよいのでしょうか。ここに落とし穴があります。
計算例です。2つの手法を比べます。どちらも、1回の勝ちと1回の負けは同じ1000円(取引コストを引いたあと)とします。
- 崩れた手法:勝率(取引のうち、勝った回数の割合)45%。続ければ赤字になる
- 崩れていない手法:勝率55%。続ければ黒字になる
この2つを本番で動かしたとき、取引回数ごとに、見た目が逆になる確率を計算しました。
条件:1回ごとの勝ち負けが、前の結果に左右されない場合。勝ちと負けが同じ回数のときは、どちらにも数えていません。説明のための計算例です。
取引30回は、月10回なら3か月です。この時点で、崩れた手法が黒字に見える確率は約23.1%。4回に1回近くは、崩れているのに黒字に見えます。崩れていない手法が赤字に見える確率も、同じ約23.1%です。
取引100回(約10か月)でも約13.5%。ほぼ見分けがつくのは、300回(月10回なら2年半)のあたりからです。
つまり、本番の最初の数か月の成績で「崩れていない」と安心するのも、「崩れた」と慌てて止めるのも、どちらも当てになりません。
これを最大の危険と考える理由は、本番の成績を待っても、早くは答えが出ないからです。この計算例の崩れた手法なら、答えが出る300回のころには、平均で3万円の赤字になっています(1回の勝ち負け1000円の場合)。
PF(総利益を総損失で割った数字)の記事では、取引回数が少ない成績は当てにならないと書きました。同じことが、買ったあとの本番の成績にも起きます。
PFの記事「PFとは? EAの商品ページの『PF 1.5』でも赤字になる3つの場合」:https://www.gogojungle.co.jp/finance/navi/articles/126730
2つの考え方
基準を先に決める。 本番の成績で早く見分けられないなら、買う前と動かし始める前に、線を書いておくしかありません。「一番良い年が合計の半分を超えたら疑う」「資産の目減りがここまで来たら止める」のように、数字を見る前に書きます。成績を見てから線を決めると、気に入った手法に合わせて線が動くからです。
本番とのずれを疑う。 商品ページの成績を見たら、5つの型のどれで崩れそうかを先に探します。良い数字ほど、どの条件で出た数字かを確かめます。私はいま、自分の検証プログラムの結果と、FXの取引ソフトの検証機能の結果を、1回の取引ごとに突き合わせています。型⑤の「検証の作りのずれ」を、自分の検証で見落とさないためです。結果の数字は出しません。
最後に
今日の計算例では、5年で50万円の成績のうち42万円が、1つの年に集まっていました。そして、崩れた手法でも、取引30回の時点では4回に1回近く黒字に見えました。
この記事の計算と図はAIを使って作り、数字はすべてプログラムで検算しています。
必ず勝てる方法を約束することはしません。でも、聖杯はあると信じて探しています。私が探している聖杯は、取引コストを入れても、まだ見ていない期間でも崩れない売買ルールです。
過去データの成績は、その条件とその期間での成績です。崩れ方の型を知っていれば、本番の成績を何か月も待たなくても、商品ページの数字から崩れを疑えます。一番良い年を抜いて数え直すだけで、一時期の相場に頼った偽物を1つ外せます。偽物を1つ外すたびに、聖杯に1歩近づきます。
用語のまとめ
- EA:FXの売買を自動で行うプログラム
- 過去データでの検証:EAを過去の値動きの上で動かして、成績を出すこと
- 取引コスト:売買のたびにかかるお金。買値と売値の差(スプレッド)や手数料
- 設定値:売買ルールの中の数字
- 勝率:取引のうち、勝った回数の割合
- 資産の目減り:一番多かったときから、どれだけ減ったか
※この記事は投資の助言ではありません。数字はすべて説明のための計算例です。
この先の有料部分で手に入るもの(980円)
無料部分では、5つの型の名前と、型③の確かめ方と、数か月では見分けられない理由まで書きました。ここまでで、型③の偽物は見分けられます。
有料部分は、残りの4つの型の確かめ方と、商品ページを開いてから動かし始めるまでの手順を、そのまま使える形にしたものです。
使い方は3段です。
- 商品ページを開く前に、「疑う線と止める線の書き方の例」を見て、自分の線を書く
- 商品ページを開いたら、5段の手順の順に数字を書き写し、確認表に記入する
- 動かし始める前に止める線を書き、動かし始めたら本番の記録表に月ごとに書く
有料記事①との違い: 有料記事①は、買う前に「危ない答えの組み合わせ」を見つけるための記事です。この記事は、過去データの成績が「どの型で崩れるか」を見分け、動かし始めたあとに「崩れた」と判断する線まで決めるための記事です。①を読んでいなくても読めます。
向いている人: EAを買おうとしている人、または動かしている人で、商品ページの数字を自分で読みたい人。
向いていない人: おすすめのEAの名前を知りたい人。商品名は書いていません。勝てるEAを約束する記事でもありません。
有料部分の数字も、すべて説明のための計算例です。私自身の検証結果や成績は入っていません。
無料部分で外せるのは、型③の偽物1つです。5つの型を全部確かめられれば、買う前に見分けられる偽物の型が5つに増えます。偽物を1つ外すたびに、聖杯に1歩近づきます。