ナンピンEAに何度も救われて、最後は資金の大半を失った話
EAを使っていて、一番楽しかったのはどんなときか。
そう聞かれたら、私はたぶん「ナンピンEAを動かしていたとき」と答えます。今から7年ほど前、EAを使い始めてそれほど経っていない頃の話です。
毎日のようにトレードする。含み損になっても、追加でポジションを持つ。
そして相場が少し戻ると、まとめて決済されて利益になる。
MT4やMT5を開くたびに残高が少しずつ増えていて、「今日も利益が出た」「今週もプラスだった」と確認する。
月利にすると10〜15%ほどの状態が、3ヶ月ほど続いたこともありました。これは正直、かなり楽しいです。
普通のEAなら、損切りが何回も続くことがあります。でもナンピンEAは、含み損になってもすぐには負けになりません。
私も過去に何度も、「さすがに今回はダメかもしれない」と思ったところから相場が戻り、何事もなかったように利益で決済される経験をしました。
それを何度も見ていると、不思議なもので、「結局、今回も戻るだろう」と思うようになります。
そして、ある日。戻らなくなります。
最初は「いつもの含み損」だった
きっかけは、大きな指標発表のあとでした。
指標が出る瞬間はEAをOFFにするよう裁量でルールを入れていましたが、その後に一方的なトレンドが続くところまでは防げませんでした。
指標そのものの値動きより、そのあとのトレンドの方が怖いのだと、このとき初めて実感しました。
最初から危険だと思っていたわけではありません。むしろ最初は、「またナンピンしてるな」くらいの感覚です。
1ポジション、2ポジション、3ポジション――含み損は増えていきますが、それまでにも同じような場面は何度もありました。
そして、そのたびに相場は戻ってきました。だから待ちます。もう少し戻れば決済される。
ここまで来たなら損切りするより、戻るのを待った方がいい。
そんなことを考えているうちに、さらにポジションが増えていきます。含み損も大きくなります。
それでも、過去に助かった経験がある。これが厄介でした。最初から一方的に負け続けるEAなら、もっと早く諦められたと思います。
でもナンピンEAは、それまでに何度も助かっている。
「今回も助かるかもしれない」という経験を、自分自身が持ってしまっているんです。
「今日は何円稼げるか」ではなくなった
普段は、「今日はどれくらい利益が出るかな」と思いながら口座を見ていました。
それが含み損が大きくなってくると、見るところが完全に変わります。
証拠金、含み損、ロスカットまでの余裕――チャートを開くたびに考えるのは、「これ、いつロスカットされるんだろう」ということばかりです。
それまで毎日のように積み上がっていた利益なんて、ほとんど気にならなくなります。
当時は本業と兼業でやっていたので、正直仕事も手につきませんでした。
今思えば、これは投資資金に対して自分の中で「気にならない金額」を超えて運用していたことが大きかったと思います。
10万円なら気にならなくても、100万円なら気になる。単純ですが、そういうことなんだと思います。
そして私が何度も思ったのが、「利益が出ていたときに、もっと出金しておけばよかった」でした。
残高が増えているときは、まだ増えると思っています。証拠金が2倍になったら出金しよう、と考えていました。
勝ちが確定してから出金する方が、自分の中では筋が通っている気がしていたからです。
ところが大きな含み損を抱えると、「あのとき出金していれば」に変わります。
もちろん、出金していたからEAそのものが助かるわけではありません。
でも、少なくともそれまでに積み上げた利益の一部は手元に残った。
利益が出ている最中には、なかなかそう考えられませんでした。
バックテストのDDと、自分のお金が減るのは全然違った
前の記事でも最大ドローダウンについて書きました。バックテストなら、「最大DD 30%」という数字を冷静に見ることができます。
グラフが沈んでいても、その後に回復していることが分かっていれば、「ここで30%くらい落ちたのか」と分析できます。
でもリアルタイムでは、その先が見えません。今30%減っていても、ここが底なのか分からない。
明日戻るのかもしれない。さらに下がるのかもしれない。
そしてナンピンEAの場合、相場が逆方向へ進むほどポジションが増えていきます。
「最大DD30%」という完成済みの数字を見るのと、自分のお金が今まさに減り続けていて、その先が分からない状態は、私にとってまったく別物でした。
これは実際に自分のお金で動かしてみて、かなり強く感じたことです。
私が使ったナンピンEAは、結局長く生き残らなかった
私はこれまで、いくつかのナンピンEAを実際に使ってきました。もちろん、これは世の中にあるすべてのナンピンEAについての話ではありません。
あくまで私が使った範囲での話です。
その中で、1年以上安定して生き残ったナンピンEAを私は経験していません。
途中までは本当に調子がいいものもありました。毎月利益が出る。残高も増える。「これは長く使えるかもしれない」と思う。
でも最後は、長いトレンドに巻き込まれる形で強制ロスカットになり、ほぼ全損したり、資金の8割程度がなくなったりする。
私はこれを何度か経験しました。
正直、ポジションが増えて含み損を抱えた状態が長く続くと、途中から半分諦めのような感覚になっていました。
強制ロスカットされた瞬間のことはあまり覚えていませんが、どこかでほっとした部分もあった気がします。
だから今は、毎日の利益が綺麗に積み上がっているEAを見ると、昔とは少し違うところを見るようになりました。
「このEAはいくら稼げるんだろう」より先に、「このEAは、最悪どこまで失う可能性があるんだろう」と考えます。
それでも、ナンピンEAには魅力がある
ここまで読むと、「じゃあナンピンEAなんて使わなければいい」という話に見えるかもしれません。
でも、そこまで単純だとは思っていません。
ナンピンEAが人気になる理由は、実際に使ってみるとよく分かります。
勝率が高くなりやすい。
毎日のように利益が確定する。
レンジのように価格が行ったり来たりする相場では、非常に綺麗に利益を積み上げることもあります。
そして何より、「負けを確定しないまま、戻って利益になる」という体験はかなり強烈です。
一度助かる。また助かる。次も助かる。これが続くほど、「このEAは強い」と感じやすくなります。
でも私が怖いと思うのは、むしろそこです。負け続けるEAなら、危険だとすぐ分かります。
少なくとも私が使ってきたものは、長い間勝ち続けたあとに、それまでとは桁の違う負けが来ることがありました。
だから「勝率が高い」「毎月利益が出ている」という数字だけでは、リスクの大きさが分かりにくい。
私自身、それを何度も実際のお金で経験しました。
資金管理で見るところが変わった
昔の私は、EAを見るときに、月利は何%か、年間でいくら増えるのか、勝率はどれくらいか、そういう数字をかなり気にしていました。
もちろん今でも利益は重要です。利益が出ないEAを運用する意味はありません。
ただ、それと同じくらい、「失敗したときに、いくら残るのか」を見るようになりました。
例えば100万円を運用するとします。1年間で20万円増える可能性がある。これだけを見ると、悪くありません。
でも、その20万円を得るために、「いつか100万円をほぼ全部失う可能性がある」という設計なら、話は変わってきます。
逆に、利益は小さくても、どこで損切りするのか、どこで追加ポジションを止めるのか、最大でどれくらいのリスクを取るのか。
それが最初から分かっている方が、私は運用しやすい。
結局、EAの資金管理は、「いくら稼げるか」だけではなく、「どこまで失う前提で作られているか」までセットで考えないと意味がない。
過去の失敗を通して、私はそう考えるようになりました。
それなのに、今またナンピンEAを作っている
ここまでナンピンEAで痛い目を見ておきながら、実は今、私はナンピンEAを作っています。
自分でも少し矛盾していると思います。
現在作っているEAは、最初から「安全なEA」を目指しているわけではありません。むしろ逆です。
ナンピンのリスクがあることを前提にして、どこまでポジションを追加するのか、含み損が大きくなったときに追加を止めるのか、どこで諦めるのか、最悪の場合どれくらいの損失を許容するのか。
そういうところから考えています。
昔は、「どうすればもっと利益が増えるか」を先に考えていました。
今は、「どうなったらこのEAは死ぬのか」を先に考えています。同じナンピンEAでも、見ているところはかなり変わりました。
ナンピンが悪いのではなく、知らずに使うのが怖かった
私はナンピンそのものを否定したいわけではありません。実際、今また自分で作っているくらいです。
ただ、過去の自分に一つだけ言えるとしたら、毎日利益が出ているときこそ、「この状態が終わるとしたら、どういう終わり方をするんだろう」と考えておいた方がよかったと思います。
毎日勝つ、高勝率、何か月連続プラス――こういう数字は魅力的です。私も何度も惹かれました。
でも、資金管理で本当に知りたいのは、その数字の反対側なのかもしれません。
負けるとき、どれくらい負けるのか。そして、その負けを自分は本当に受け入れられるのか。
バックテスト上では簡単に答えられても、実際に自分のお金が減っている最中に同じ答えを出せるとは限りません。少なくとも私は、できませんでした。
ナンピンEAは、いつか壊れるものだと今は思っています。それが明日なのか、10年後なのかは誰にもわかりません。
だからこそ、証拠金を厚くして耐える設計ではなく、少ない証拠金でもどこまでリスクを取って回せるのか。
今はそれを検証しています。壊れる前提で、どう終わらせるかまで先に決めておくこと。
その検証の過程で見えてきたことは、また改めて書けたらと思います。