30通貨ペアを1枚ずつ開くのをやめた — SMCの根拠が重なったペアを1枚の円で探す方法
MT4/MT5のインジケーターを開発している lab.aiueo です。
SMC(スマートマネーコンセプト)で複数の通貨ペアを見ていると、確認が追いつかなくなる瞬間があります。
この記事では、その原因と、確認の順番を逆にするという考え方、そしてそれを形にした SMC-Compass for MT5 の読み方を書きます。
10枚目を開くころには、1枚目が動いている
ウォッチリストの上から順にチャートを開く。EURUSD、GBPUSD、USDJPY……。
それぞれで Order Block はどこか、FVG は埋まったか、上位足はどちら向きかを確かめる。
10枚目あたりで、ふと1枚目に戻ると、さっき「まだ早い」と判断したペアがもう動いている。
見落としたわけではありません。確認している間に、状況のほうが変わったのです。
なぜ「1枚ずつ」では追いつかないのか
確認の回数が多すぎるからです。
SMCの根拠を5つ(Order Block、FVG、Premium/Discount、Liquidity Sweep、上位足の向き)に絞っても、それを買いと売りの両方で見るので、1ペアあたり10回の確認になります。
これを毎回手でやるのは現実的ではありません。結局「いつも見るペアだけ」を見ることになり、それ以外で条件がそろった場面は目に入らなくなります。
確認の順番を逆にする
1枚ずつ開いてから判断するのではなく、全ペアを同じ物差しで先に採点し、その結果を1枚の地図に置く。人間はまず地図を見て、目立つところだけを開けばいい。
このとき大事なのは、地図に載せる情報を絞ることです。私は2つだけにしました。
- 方向 … 買いの根拠が多いか、売りの根拠が多いか
- 強さ … 根拠がいくつ重なっているか(0〜5)
これを円に落とすと、上が買い、下が売り、中心から遠いほど強いという表示になります。30ペアが1枚の円に収まり、外側に出ているペアだけを見ればよくなります。
何を数えるか
直近の確定足について、次の5つを調べます。満たしたものが1点です。買いと売りで別々に数え、高いほうが方向、その点数が強さになります。買い3点・売り1点なら「買い・強さ3」です。
| 要素 | 買いの点になる条件 | 売りの点になる条件 |
|---|---|---|
| Order Block | 有効な上昇側OBに触れている | 有効な下降側OBに触れている |
| Fair Value Gap | 埋まっていない上昇FVGに触れている | 埋まっていない下降FVGに触れている |
| Premium / Discount | 終値がレンジの50%以下(割安圏) | 終値がレンジの50%以上(割高圏) |
| Liquidity Sweep | 直近に安値を一度抜いて戻された | 直近に高値を一度抜いて戻された |
| 上位足 | 上位足の流れが上向き | 上位足の流れが下向き |
構造のブレイク(BOS / CHoCH)は点数としては数えず、Order Block を見つけるときと、割高・割安のレンジを決めるときの土台として使います。Order Block も割高・割安のレンジも、ブレイクを起点に決まるものだからです。
確定足で数えることも大事です。形成中の足で数えると、足の途中で点数が付いたり消えたりして、地図がちらつきます。確定足だけで数えれば、あとから表示が書き換わることもありません。
地図は「どこを見るか」を決めるためのもので、「いつ入るか」は決めません。
私が作ったツールでも、エントリーの矢印や決済ライン(TP/SL)は出していません。勝率やバックテスト成績も、表示も訴求もしていません。地図で目立ったペアを開いて、そこから先の判断はご自身で行う、という役割分担です。
SMC-Compass for MT5
この考え方をMT5のインジケーターにしたものです。30通貨ペアのSMCの状況を、チャート上の円形レーダー1枚にまとめて表示します。採点の基準は、同じシリーズの SMC-Signal のパネルに出る現在のスコアと共通です。
レーダーの見方
| 表示 | 意味 |
|---|---|
| 上半円(BUY) | 買いの根拠のほうが多いペア |
| 下半円(SELL) | 売りの根拠のほうが多いペア |
| 中心からの距離 | 強さ(0〜5)。外周に近いほど根拠が重なっている |
| ●の色と大きさ | 強さ2→5 に向かって明るく、大きくなる |
| ペア名 | 強さ3以上のペアにだけ付く |
| 下の1行 | 通貨強弱ランキング。左ほど強い通貨 |
既定では、強さ2未満のペアは表示しません。 レーダーに何も出ていないのは「根拠が重なったペアが今はない」という意味で、故障ではありません。
読み違えやすい3つの点
見た目がシンプルなぶん、直感で読むと外すポイントがあります。 ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。
1. 強さは「高さ」ではなく「中心からの距離」
同じ方向のペアが1か所に重なると読めないので、ドットは左右に扇状に散らして置いています。横に大きく振られたドットは、縦の目盛りで読むと低く見えます。
取扱説明書を作るためにスクリーンショットを見直していて、目盛りの「1」のあたりにある淡いドットが実は強さ2だったことに気づきました。
強さは縦の高さではなく、中心からの距離で読んでください。同じ強さのペアは、中心から同じ距離の円周上に並びます。左右の位置そのものには意味がありません。
2. 同点のときは「買い」側に出る
買いと売りの点数が同じときは、買い側(上半円)に表示します。
Order Block や Liquidity Sweep は、買いと売りの両方に同時に当てはまることがあるので、2対2、3対3 は普通にありえます。上半円にあるペアでも、チャートを開いたら売りの根拠も同じ数だけ並んでいた、ということがあります。レーダーは候補を見つける場所、判断はチャートを開いてからです。
3. 足が確定するまで、ドットは動かない
採点は1本前の確定した足で行うので、足の途中で価格が大きく動いても点数は変わりません。
また、30ペアを一度に計算すると重くなるので、5秒ごとに8ペアずつ順番に計算しています。新しい足ができてから全体が入れ替わるまで20秒ほどかかります。「足が変わったのにまだ古い表示のペアがある」のは、この順番待ちです。
見つけたら、クリックして開く
レーダー上の●やペア名をクリックすると、そのペアのチャートが同じ時間足で新しく開きます。
「1枚ずつ開く」を「目立つところだけ開く」に変えるための機能です。開いたチャートに SMC-Radar を貼ればゾーンの位置が、SMC-Signal を貼れば根拠の内訳が見えます。
通貨強弱ランキングの作り方
レーダーの下に AUD > USD > NZD > … > GBP のように通貨が並びます。左ほど強い通貨です。
30ペアの採点結果から作っています。EURUSD が「買い・強さ3」なら、EUR に +3、USD に −3。これを全ペアで足し合わせ、関わったペアの数で割って並べています。レーダーで買いのペアが、ランキングでも「強い通貨 × 弱い通貨」になっていれば、通貨全体の流れとも向きが合っていると読めます。
アラート
強いペアが新たに現れたとき、または方向が買い⇔売りに転換したときに知らせます。ポップアップ、スマートフォンへのプッシュ通知、サウンドを個別にON/OFFできます。
どのチャートに貼っても、30ペアすべてが通知の対象です。貼った直後の1巡目は鳴らず、同じペアは既定で4本ぶん再通知しません。通知は売買の指示ではなく、「条件が重なったペアが現れた」というお知らせです。
MT5で使うときに知っておいてほしいこと
- 貼った直後は、ドットが少しずつ増えます。MT5 はほかの通貨ペアの価格データを必要になった時点で取り寄せるためです。2回目以降はすぐに表示されます。対象の30ペアは「気配値表示」に自動で追加されます。
- MT4版とは表示が完全には一致しません。同じ業者でもMT4とMT5は別々のサーバーから価格を受け取っているため、高値・安値がわずかに違い、点数が1つ変わることがあります。仕様であり、不具合ではありません。
- 設定は日本語で表示されます。パラメータ画面の項目名が日本語の説明で出ます。
| やりたいこと | 調整するもの |
|---|---|
| 強いペアだけに絞りたい | 「これ未満の強度は非表示」を 3 に上げる |
| 名前の付くペアを増やしたい | 「ラベル表示の最小強度」を下げる |
| 見るペアを入れ替えたい | 「通貨ペア1〜30」を書き換える |
使い方の流れ
- レーダーで候補を探す … H1 のチャートに貼っておき、外周寄りのペア、名前の付いたペアを見る
- 通貨強弱ランキングと照らし合わせる … 「強い通貨 × 弱い通貨」になっているか
- クリックしてチャートを開く … どのゾーンに触れているか、反対方向の壁がないかを自分の目で確かめる
- 何も出ていなければ見送る … 「条件の重なったペアがない」と一目で分かるのが、全ペアを一度に見る利点
動作環境
| 対応プラットフォーム | MetaTrader 5(Build 2485以降) |
| 適用先 | 通貨ペアのメインチャート(どの通貨ペアでも可) |
| 対象 | 最大30ペア(既定は主要通貨の28通り+XAUJPY・XAUUSD。入れ替え可) |
| 推奨時間足 | M15 / M30 / H1 / H4 |
| DLLの使用 | なし |
| 外部インジケーター | 不要 |
業者ごとの銘柄名の末尾(.raw や m など)は、貼ったチャートの銘柄名から自動で読み取ります。
なぜ作ったか
SMC-Compass は、もともとMT4向けに作った製品です。「毎朝30ペアを1枚ずつ開くのがつらい」という私自身の困りごとから生まれました。
MT5版を作ったのは、国内業者のMT4提供終了が現実のスケジュールとして動いているからです。移植の際には、MT4版とMT5版に同じ診断用の出力をさせて突き合わせ、検証した時点では30ペアすべてで採点の内訳と最終的な方向・強さが一致することを確かめました。
見た目が単純なツールほど、「なぜそう表示されるのか」を説明しないと、正しい挙動が不具合に見えてしまいます。取扱説明書(PDF・16ページ)には、この記事の読み方の注意をすべて載せています。
MT4版をすでにお持ちの方へ。判定ロジックとパラメータ構成は同一ですが、別製品として買い直す形になる点はあらかじめご承知おきください。
本製品は、複数の通貨ペアについてスマートマネーコンセプトの条件の重なりを表示する分析支援ツールです。売買シグナルの提供、投資助言、運用成果の保証を行うものではありません。
表示される内容は過去および現在の価格から機械的に算出したものであり、将来の値動きを予測するものではありません。本製品を利用した取引によって生じたいかなる損害についても、制作者は責任を負いません。投資判断はご自身の責任において行ってください。