【NIKE 2026年10-K完全解剖 第1回】:王者の急ブレーキ ― 自社株買い「93%激減」と75億ドルの防波堤
株式
ICHIRO|決算書解剖ラボ
世界最高峰のスポーツブランドとして君臨し続けるナイキ(NIKE, Inc.)。その最新アニュアルレポートである「2026年 Form 10-K」を開くと、同社が今まさに迎えている歴史的な事業・財務の転換点が克明に記録されています。
Form 10-Kの27ページに掲載された「PERFORMANCE GRAPH(株価パフォーマンス比較グラフ)」。ここには、過去5年間にわたり配当を再投資し続けた場合の累積トータルリターンが示されています。2021年のコロナ禍における巣ごもり需要やスニーカーブーム、そしてDTC(直営EC・直営店舗)シフトの絶頂期に歴史的高値をつけたナイキの株価は、その後の市場拡大の鈍化、直営シフトに伴う卸売パートナーとの軋轢、中国市場の失速といった逆風を受け、S&P 500指数を大きくアンダーパフォームし続けました。
しかし、真に注目すべきは株価そのものではなく、その裏で経営陣がどのような「外科手術」を財務諸表(B/S・C/F)に施したかです。
2026年度(FY26)の決算書において最も目を引く異変。それは、同社が過去長年にわたって実行してきた巨額の「自社株買い(Share Repurchase)」に急ブレーキをかけたことでした。かつて年間40億ドル以上を投じていた自社株買いは、今期わずか1.23億ドルへと激減(前期比約93%減)しています。
王者はなぜ、市場が歓迎するはずの自社株買いをここまで徹底して止めたのか。その理由を連結キャッシュフロー計算書(60ページ)と開示情報(Item 5)から読み解いていきます。