AIによってEAは"聖杯"と化すのか——実際に組み込んでみて分かったこと
連載の番外編です。最近、「AI搭載」を謳うEAやインジケーターを見かける機会が増えました。「AIが相場を予測する」「AIが最適なタイミングを判断する」——こうした言葉を見ると、つい期待してしまう気持ちも分かります。EAの世界には昔から「聖杯(絶対に勝てる手法)」という言葉がありますが、AIはその聖杯になり得るのでしょうか。
今回は、実際にUSDJPY UltimateにAIの仕組みを組み込んで検証している立場から、率直に感じていることをお話しします。
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先にお伝えしておきたいこと
この連載では一度も触れていませんが、実はUSDJPY UltimateのコードにはAIを使った実験的な機能がすでに組み込まれています。ただし、デフォルトではOFFになっており、現時点で販売中のバージョンの成績には一切影響していません。あくまで開発中の検証段階の機能です。この前提のうえで、実際にやってみて分かったことをお話しします。
「AI搭載」と聞いて、多くの人が思い浮かべるもの
ここ数年で、AIに質問すれば、状況に応じて考え、その都度もっとも良さそうな答えを返してくれる、という体験が一気に身近になりました。チャット形式のAIに何かを相談すると、こちらの状況を汲み取って、いくつかの選択肢を比較しながら、そのときどきに合った答えを出してくれます。
「AI搭載EA」という言葉を見たとき、多くの人が無意識に思い浮かべるのは、おそらくこれに近いイメージだと思います。今のチャート、今のニュース、今の相場の空気まで汲み取って、AIがそのつど最良の判断を下してくれる——そんな、賢い相談役のような存在です。
実際に組み込まれているAIは、
それとはかなり性質が違います
EAに組み込むAIモデルは、あらかじめ過去のデータで一度学習を済ませた、いわば「固定された計算式」です。動作するたびにその場で考え直したり、文脈を汲み取ったりはしません。入力されるのも、ADXの値やSRSIの状態、ボリンジャーバンドの幅といった、これまでの記事で紹介してきた指標と同じ、数値化された特徴量が数個だけです。ニュースを読んでいるわけでも、相場全体の空気を感じ取っているわけでもありません。出てくるのも、対話ではなく、一つの数値です。
つまり、実態としては「賢い相談役」というより、「もう一つの、やや複雑な指標」に近いものです。これは決して期待外れという意味ではなく、AIというものへの世間的なイメージと、EAに組み込まれる実際のAIの姿には、かなりの距離があるということです。この前提を踏まえたうえで、実際に試した内容をお話しします。
試した3つのアプローチ
「AIをEAに組み込む」と一言で言っても、やり方は一つではありません。実際に検討・実装したのは、大きく分けて3つのアプローチでした。
結論から言うと、現時点で最も筋が良いと考えているのは3番目のアプローチです。理由は単純で、①と②は「相場全体の先行きを予測する」という、人間の裁量トレーダーでも一番難しいとされる問題にAIで挑む形になりますが、③は「すでに絞り込まれたシグナルの中から、さらに質の低いものだけを取り除く」という、対象がはるかに限定された、扱いやすい問題設定になるからです。難しい問題をAIに丸投げするのではなく、AIが答えやすい形に問題を分解する。ここが一番の学びでした。
なぜAIは「聖杯」にならないのか
パラメータが増えるほど、
過去データへの合わせ込みも起きやすくなる
この連載を通じて、過去データへの合わせ込み(過最適化)を避けることの大切さを繰り返しお話ししてきました。AIモデルは、通常のルールベースのフィルターよりもはるかに多くの内部パラメータを持ちます。表現力が高いということは、裏を返せば、与えられた過去データに対して「たまたま」うまく適合してしまう余地も、それだけ大きいということです。
実際、学習に使ったデータの期間では非常に良い予測精度が出ているように見えても、学習に使っていない別の期間で試すと、精度が大きく落ちる、ということが起こり得ます。これは、AIを使ったEA開発において、通常のルールベースの検証以上に警戒しなければならない部分だと実感しています。学習データと検証データを厳密に分け、学習に使っていない期間でどう振る舞うかを見る。この手順を踏まないまま「AIが良い成績を出した」と判断するのは、危険だと考えています。
「AIを積めば精度が上がる」という単純な話ではなく、「AIを積むなら、通常以上に厳格な検証体制が必要になる」というのが、実際に手を動かしてみた実感です。
それでも、活用の余地はあると考えている
ここまで慎重な話をしてきましたが、AIを完全に否定しているわけではありません。ADX・MA・SRSIの値・ボリンジャーバンドの状態といった、すでに人間が意味を理解して作ってきた特徴量をもとに、「この組み合わせのときは、経験的に分が悪い」というパターンを見つけ出すこと自体は、AIが得意とする領域です。
重要なのは、AIを主役に据えて「AIの判断がすべて」という設計にすることではなく、これまでお話ししてきたSRSI・4重フィルター・資金管理という土台の上に、AIを補助的な一層として積み重ねることだと考えています。土台がしっかりしていない状態でAIだけに判断を委ねると、何が起きているのか誰にも説明できないブラックボックスになってしまいます。それは、この連載で一貫してお話ししてきた「隠さない設計」とは、正反対の方向です。
AIによってEAは「聖杯」と化すのか
今のところの答えは「なりません」です。AIは魔法の杖ではなく、扱い方を誤れば通常以上に過去データへの合わせ込みを起こしやすい、扱いの難しい道具です。ただ、問題を適切に分解し、厳格な検証を重ねたうえで、既存のロジックを補う一層として使うなら、活用の余地はあると考えています。この検証は現在も続けており、実用に足ると判断できた段階で、あらためてご報告します。
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【ドル円専用】王道のトレンドフォロー型EA「USDJPY Ultimate」※本記事は特定の金融商品への投資や売買を推奨するものではなく、開発中の検証内容を紹介することを目的としています。記事内で触れているAI関連の機能は現時点で実験段階であり、販売中のUSDJPY Ultimateの現行仕様には含まれていません。将来的に導入される場合も、その内容や時期を保証するものではありません。過去の検証結果は将来の運用成果を保証するものではありません。