ChoCHは本当に機能するのか|2,627件を実測した結果
スマートマネーコンセプト(SMC)を学ぶと、必ず ChoCH(Change of Character)が出てきます。構造の転換を示すサインとして、教材でも動画でも当たり前のように扱われています。
ただ、ひとつだけ誰も答えてくれない問いがあります。
ChoCH は、実際のところ何割が続くのか。
「よく効く」「ダマシも多い」という感覚的な話は山ほどあります。しかし数字を出している人を、私は見たことがありませんでした。だから自分で数えることにしました。
測定の方法
意見ではなく実測にするため、私が開発した MT5 インジケーターの構造判定コードそのものを取り出し、実際のヒストリカルデータ上で再生しました。後付けの理屈ではなく、チャート上で実際に描画されるのと同じ判定です。
- 対象通貨:XAUUSD / EURUSD / GBPUSD
- 時間足:M15 / H1 / H4
- 系列数:9(3 通貨 × 3 時間足)
- 検出された構造イベント:5,110 件
- そのうち ChoCH:2,627 件
「確認された」の定義:ある ChoCH の次に発生した構造イベントが、同じ方向だった場合を「確認された」と数えます。逆方向だった場合は「確認されなかった」とします。
結果
おおよそ 2 回に 1 回。コインを投げるのとほとんど変わりません。
先にはっきりお伝えします。この 48.0 % は「構造が継続した割合」であり、勝率ではありません。構造が継続しても利益になるとは限りませんし、構造が崩れても損失になるとは限りません。エントリー、損切り、利確をどう置くかで結果は変わります。この数字をトレードの成績として読まないでください。
では、48 % という数字を知ったところで何の役に立つのか。ここからが本題です。
この平均値は、3 つの重要な事実を隠しています。そのうちひとつは、多くの教材が推奨している手法が実は逆効果であることを示しています。
事実 1:通貨と時間足で 9 ポイントの差がある
48.0 % は 9 系列の平均です。系列ごとに分けると、はっきりした幅が出ます。
| 通貨 | 時間足 | BOS | ChoCH | 確認率 |
|---|---|---|---|---|
| EURUSD | M15 | 275 | 262 | 53.4 % |
| XAUUSD | H1 | 282 | 258 | 52.5 % |
| XAUUSD | M15 | 271 | 285 | 49.5 % |
| XAUUSD | H4 | 294 | 307 | 49.3 % |
| GBPUSD | H1 | 267 | 282 | 48.8 % |
| EURUSD | H1 | 268 | 293 | 46.9 % |
| GBPUSD | H4 | 287 | 324 | 45.4 % |
| GBPUSD | M15 | 253 | 294 | 45.1 % |
| EURUSD | H4 | 286 | 322 | 44.1 % |
44.1 % から 53.4 %。9 ポイントの幅があります。つまり「ChoCH の信頼度」を一律に語ることに意味はありません。自分が実際に触っている通貨と時間足で、どちら側にいるのかを知る必要があります。
なお BOS と ChoCH の件数はほぼ同数です(2,483 対 2,627)。相場は「トレンド継続の方が多い」わけではなく、転換と継続はほぼ同じ頻度で出ています。
事実 2:小さい時間足は「精度」ではなく「頻度」の問題
| 時間足 | 確認率 | ChoCH / 週 |
|---|---|---|
| M15 | 49.2 % | 22.4 |
| H1 | 49.3 % | 5.5 |
| H4 | 46.2 % | 1.6 |
ここは意外でした。M15 の確認率は H4 より高いのです(49.2 % 対 46.2 %)。「小さい時間足はダマシが多い」という通説は、少なくともこの測定では支持されませんでした。
本当の違いは頻度です。M15 では週に22.4 回、H4 では週に1.6 回。M15 を見ている人は、H4 の人の 14 倍の判断を迫られます。精度が同じなら、判断回数が多いほど疲弊し、ミスが増えます。小さい時間足の難しさは、サインの質ではなく人間側の負荷にあります。
事実 3:シグナルが「読める」までの遅れ
ここが、ほとんど誰も語らない部分です。
ChoCH は「価格が直近の高値または安値を明確に抜けた」時点で成立します。しかしチャート上でそれが確定して読めるようになるのは、スイングの確認が終わってからです。その間には時間差があります。
| 時間足 | 中央値 | 平均 |
|---|---|---|
| M15 | 1 時間 | 2.0 時間 |
| H1 | 4 時間 | 6.7 時間 |
| H4 | 16 時間 | 30.3 時間 |
H4 で ChoCH を確認してからエントリーする場合、中央値で 16 時間、平均で 30 時間が経過しています。価格はすでに動いた後です。
これは「後から見れば完璧に見えるチャート」と「リアルタイムで見えるチャート」の差そのものです。検証で良い成績が出るのに実戦で再現できない原因の多くは、この遅れを計算に入れていないことにあります。
そして、逆効果だったもの
SMC の教材でほぼ必ず出てくる助言があります。
「上位足の方向に沿った ChoCH だけを取りなさい」
理屈は通っています。実際に数えると、こうなりました。
| 条件 | 件数 | 確認率 |
|---|---|---|
| H4 の方向に沿ったChoCH | 359 / 783 | 45.8 % |
| H4 に逆らうChoCH | 463 / 887 | 52.2 % |
上位足フィルターは、確認率を 6.3 ポイント下げました。
6 系列すべてで同じ方向の結果です。偶然ではありません。
理由を考えると腑に落ちます。ChoCH は定義上転換のサインです。上位足のトレンドに沿った ChoCH とは、すでに進んでいる方向へ「もう一度」転換するという意味になり、実際には押し目や戻りの中の小さな揺れであることが多い。逆に上位足に逆らう ChoCH は、本物の転換の初動を捉えている場合がある、ということです。
この結果は、そのまま「上位足に逆らえ」という意味ではありません。確認率が高いことと、期待値が高いことは別の話です。ただ、上位足フィルターを「安全装置」として無条件に信じるのは、少なくともこのデータでは支持されません。
見分けられるのか、という問い
ここまでの数字を、実際のチャートを見ながら何度も確認しました。そこで分かったことを、うまくいかなかった側から書きます。
確認されなかった ChoCH は、教科書どおりの形をしています。直近の安値を明確に割り、スイングも整い、誰が見ても ChoCH です。そして次の構造イベントは逆方向でした。2 回に 1 回はこれが起きます。形が綺麗であることと、続くこととは無関係です。
確認された ChoCH も、形はほとんど同じです。並べて見比べても、事前に見分けられる決定的な違いを、私は見つけられませんでした。ヒゲの長さ、実体の大きさ、出来高。どれも決め手にはなりませんでした。
そして BOS と ChoCH が短い間隔で入れ替わる場面があります。継続と転換が交互に出て、どちらが本物かを当てにいきたくなるところです。ここで当てにいくのではなく、どちらに転んでも損失が許容範囲に収まる建て方をしておくことのほうが、48 % という数字とは整合的です。
この測定の限界
数字を出す以上、どこまで言えるのかも書いておきます。
- 期間が均等ではありません。M15 は 91 日、H1 は 368 日、H4 は 1,409 日をカバーしています。時間足間の比較には、この差を頭に入れてください。
- 「確認」の定義はひとつの選び方にすぎません。次の構造イベントの方向で判定しています。値幅や時間で定義すれば、別の数字が出ます。
- スイング判定のパラメーターに依存します。スイングの強さを変えれば、検出されるイベントの数も確認率も変わります。
- これは損益ではありません。繰り返しますが、48.0 % は構造の継続率です。トレードの成績ではありません。
まとめ
- ChoCH の確認率は48.0 %(2,627 件)。ほぼ五分五分です。
- 通貨と時間足で44.1 % から 53.4 %の幅があります。一律には語れません。
- M15 は H4 より精度が低いのではなく、頻度が 14 倍です。
- H4 では、シグナルが読めるまで中央値 16 時間かかります。
- 上位足フィルターは、確認率を6.3 ポイント下げました。
ChoCH は「当てるための道具」ではありません。五分五分の分岐点を、事前に、同じ基準で見つけるための道具です。そこから先、どちらに転んでも生き残る建て方をするのはトレーダーの仕事です。
この測定に使った構造判定は、私が MT5 用に開発したインジケーターのものです。同じ判定をチャート上でリアルタイムに描画します。興味のある方は、以下のページからご覧いただけます。
・製品ページ:市場構造・オーダーブロック ダッシュボード MT5
・体験版(7日間・全機能):購入前にすべての機能を試せます
本記事は分析および教育を目的としたものであり、投資助言ではありません。記載した数値は過去のヒストリカルデータに基づく構造の継続率であり、将来の成果や利益を保証するものではありません。外国為替証拠金取引には元本を超える損失のリスクがあります。最終的な投資判断は、お客様ご自身の責任で行ってください。