12年トレードして、チャートに残ったのは移動平均線だけだった
先週、僕はドル円を64回売買した。
口座は2つ。どちらも実弾で回している。
そのとき見ていたチャートに、インジケーターは1つも入っていない。
移動平均線があるだけだ。

派手なオシレーターも、独自ロジックも、AI判定も、何もない。
昔は全部入れていた。全部試して、全部捨てた。
今日はその話をする。
インジを8個入れていた頃が、一番負けていた
当時のチャートを、今でも覚えている。
上にオシレーターが3段。チャート本体にラインが何本も。サブウィンドウには矢印が出るツール。全部同時に表示していた。
画面が、線で埋まっていた。
僕はそれを「分析している」と思っていた。
でも実際にやっていたのは、違う。
8個のうち、自分が入りたい方向を示している1個を探していた。
買いたいときは、買いを示す指標を見る。売りたいときは、売りのサインが出ているものを探す。
必ずどれかは出ている。8個もあるんだから。
これは分析じゃない。言い訳の材料集めだ。
僕はこの状態で、2回口座を空にした。
手法探しは、負けを自分の外に置く作業
身も蓋もないことを書く。
手法を変えている間は、上達しない。
新しい手法を10回試して、6勝4敗だったとする。良い手法なのか、悪い手法なのか。
わからない。10回では何も言えない。
でも人は待てない。3回続けて負けると「合わない」と判断して、次を探す。
そしてまた10回試して、また乗り換える。
この繰り返しの中では、どの手法も一度も検証されない。
負けた原因が手法にあるのか、自分の使い方にあるのか、永遠に切り分けられない。
新しいものを手に入れた瞬間、少し希望が湧く。あの感覚が良くない。
あれは前進じゃない。負けの理由を、自分の外に置き直しているだけだ。
僕が飛んだのは、手法が悪かったからじゃない。手法を評価できる回数を、一度もこなさなかったからだ。
誰も見ていない指標は、そもそも機能しない
ここからが本題だ。
かなり致命的な話をする。
相場が動くのは、そこに注文が集まるからだ。
「この価格で買おう」と考える人が多ければ、価格は反応する。少なければ、何も起きずに素通りする。
つまり、参加者の数が、そのまま効き目になる。
では、複雑で珍しい指標はどうか。
それを見ている人は、世界に何人いるだろうか。
数百人か、多くて数千人か。相場全体から見れば誤差だ。
誤差の人数が「ここで買おう」と思っても、価格は1ミリも動かない。
珍しいというだけで、不利になる。
僕が8個入れていた頃に効かなかった理由も、結局これだった。
移動平均線が効くのは、計算式が優れているからじゃない
その正反対にあるのが、移動平均線だ。
世界中が見ている。個人も、機関投資家も、アルゴリズムも。
だからこうなる。
多くの人が同じ線を見る → その線の近くに注文が集まる → 実際にそこで価格が反応する → 反応するから、さらに多くの人が見る
自己実現している。
ここは勘違いされやすい。
移動平均線は、計算式が優れているから効くんじゃない。みんなが見ているから効く。
理屈の正しさより、人数のほうが強い。
相場は多数決だ。そして移動平均線は、圧倒的に票を集めている。

線を減らすというのは、自分に言い訳をさせないということ
「移動平均線なんて、初心者が最初に習うやつでしょう」
僕もそう思っていた。だから、もっと高度なものを探した。
完全に逆だった。
移動平均線は、初心者向けだから基本なんじゃない。全員が使うから基本になった。 そして全員が使うから効く。
順番が逆なのだ。
そして、シンプルであることには、もうひとつ効能がある。
都合のいい解釈ができなくなる。
見るものが1つなら、迷う余地が少ない。
5つ出していれば、2つが買い、3つが売りを示す場面が必ず来る。そのとき人は、自分が入りたいほうを採用する。
昔の僕がやっていたことだ。
線を減らすというのは、視覚的にすっきりさせる話じゃない。自分に言い訳をさせない、という話だ。
銘柄が変わっても、同じものが効く
そして、ここがたぶん一番大きい。
移動平均線は、通貨を選ばない。
ドル円で効く理由と、ゴールドで効く理由は同じだ。「多くの人が見ているから」。
これはユーロドルでもポンド円でも、株価指数でも変わらない。参加者がいる市場なら、同じ理由で機能する。
これがどういうことか。
一度身につければ、全部の銘柄で使い回せる。
多くの人は、通貨ごとに手法を持とうとする。ドル円用の手法、ゴールド用の手法。銘柄が増えるたびに、覚え直す。
その必要がない。
僕はドル円もゴールドも見ているけれど、判断の仕方は変えていない。時間帯や値幅の癖は違うから、そこは調整する。でも「何を根拠に入るか」の部分は同じだ。
だから、新しい銘柄を触るときの立ち上がりが早い。
銘柄ごとに手法を買い足す必要がない。
これは地味だけど、長い目で見るとかなり効く。
「誰がやっても同じ判断になるか」が全部だと思っている
もうひとつ、僕が重視していることがある。
再現性だ。
同じ場面を、明日の自分が見ても、他人が見ても、同じ判断になるか。
ここが曖昧な手法は、続かない。
「なんとなく強そう」「そろそろ反発しそう」——こういう判断は、その日の気分で変わる。だから検証もできない。負けても、何を直せばいいかわからない。
逆に、条件がはっきり決まっていれば、こうなる。
・入らなかった場面を、後から検証できる
・負けたときに、条件を守ったのかどうか切り分けられる
・他人に説明できる
移動平均線は、この「はっきり決める」ができる。線と価格の関係は、見れば誰でも同じものが見えるからだ。
オシレーターの微妙な形を読む必要がない。
誰が見ても同じものが見える。だから再現できる。
ここから先は、記事には書かない
ここまでが、公開できる範囲の話だ。
じゃあ、その移動平均線を具体的にどう判断するのか。
どの期間を使うのか。どういう状態を「入っていい」と判断して、どういう状態を見送るのか。
そこは書かない。
僕が12年かけて詰めた部分だし、正直、ここが全てだからだ。
「移動平均線を見ろ」というところまでは、誰でも言える。教科書にも書いてある。
でも、教科書を読んで勝てるようになった人を、僕は見たことがない。
足りないのは、判断の基準だ。
毎週、実際に張って確かめている
考え方だけ書いて終わりにしたくないので、実際の話をする。
僕は毎週、実弾で張っている。
そして、入る前にXでシナリオを投稿している。「ここから戻す」「ここは売り上がる」といった見立てを、動く前に書く。
外れることもある。そのときは外れたまま残る。
先週のドル円で言えば、2つの口座を合わせて64回エントリーした。結果はプラスで終わった。


大事なのは金額じゃない。
その64回すべてを、移動平均線だけで判断しているということだ。
チャートには他に何も出ていない。だから、それ以外で判断のしようがない。
12年やって、これで足りるという結論になった。
僕が作っているものも、結局これの自動化でしかない
インジケーターも作っている。それも書いておく。
ただ、あれは新しいロジックじゃない。
みんなが見ている線を、毎回同じ基準で判定しているだけだ。
さっき書いた「再現性」を、機械にやらせている。それだけの話で、特別な発明は何も入っていない。
なぜ機械にやらせるか。
人間は、疲れると基準が緩むからだ。
「今日はまだ入っていないから」「これくらいなら大丈夫だろう」
そうやって条件を甘くする。僕もやる。
だから機械に判定させている。発明じゃなくて、妥協を防ぐための道具だ。
本当にむずかしいのは、覚えることじゃない
最後に、正直なことを書く。
移動平均線の考え方は、覚えるだけなら簡単だ。この記事に書いたことも、読めば理解できると思う。
問題はそこじゃない。
自分のチャートを開いて、自分で判断できるようになることだ。
「この場面は、入っていい形なのか」 「今のは見送るべきだったのか」 「昨日と同じ基準で判断できているか」
独学だと、ここで詰まる。
正解を教えてくれる人がいない。だから判断がブレる。ブレるから、負けたときに何が悪かったのかわからない。
わからないから、また新しい手法を探しに行く。
振り出しだ。
この記事の最初に戻る。
僕はここで何年も溶かした。当時、隣で「それは違う」と言ってくれる人が一人いたら、たぶん半分の期間で済んでいた。
覚えることより、判断をすり合わせること。
そこが一番効くと、今は思っている。
まとめ
・インジを8個入れていた頃が、一番負けていた
・線が多いほど、自分に都合のいい解釈ができてしまう
・手法探しは、負けの理由を自分の外に置き直す作業
・誰も見ていない指標は機能しない。参加者の数がそのまま効き目になる
・移動平均線が効くのは、正しいからではなく、みんなが見ているから
・銘柄が変わっても同じ理由で効く。覚え直す必要がない
・大事なのは再現性。誰が見ても同じ判断になるか
・むずかしいのは覚えることではなく、自分で判断できるようになること
いまチャートに出しているインジケーター、何個あるだろうか。
そのうち、なくても困らないものはいくつあるだろうか。
たぶん、ほとんどだと思う。
記事に書かなかった「判断の基準」の部分を、教材にまとめてある。