為替介入でドル円1日5円。その日、私のEAは1回も取引していませんでした ――過去23年分の為替介入で、EAが何をしていたか洗い出しました――
FX
7月30日、ドル円が1日で5円動きました。
その日、皆さんはポジションを持っていましたか。
私は自動売買(EA)でドル円を運用している兼業トレーダーです。
朝、スマホでレートを見て「これはまずい」と思い、慌てて口座を確認しました。
結果から言うと、私のEAはその日、1回も取引していませんでした。
ただ、それを「うまく回避した」と書くつもりはありません。
調べてみたら、半分は設計どおりで、半分はただの運でした。
今回は、7月末に何が起きたのかを整理したうえで、
過去23年分のバックテストで「介入の日にEAは何をしていたのか」を
実際の数字で確認していきます。
▼対象EAはこちら(Mikazuki USDJPY)
https://www.gogojungle.co.jp/systemtrade/fx/79530
https://www.gogojungle.co.jp/systemtrade/fx/79530
■ 7月30日に何が起きたか
7月28日から29日にかけてのFOMCで、政策金利は3.50〜3.75%で据え置かれました。
会見がハト派と受け止められ、ドルが売られます。
そして7月30日。
ドル円は163円台後半から157.98円まで、1日で5円を超える下落となりました。
報道によれば、日本の通貨当局による実弾介入と、ニューヨーク連銀による
レートチェックが実施されたとみられています。
タイミングも意外でした。
7月30日は日銀の金融政策決定会合の1日目です。
会合の最中に動くとは多くの市場参加者が想定しておらず、
それが値動きを増幅させたとみられています。
同じ日、米財務長官は「円は著しく過小評価されている」と発言しました。
そして韓国当局もウォン買い介入を実施したと伝えられています。
米国から「円安すぎる」という発言が出て、同日に韓国も動いた。
これは、日本が単独で戦っている構図とは少し違って見えます。
今後、日米、あるいは日米韓による協調介入があるかもしれない。
少なくとも、その可能性は頭の片隅に置いておくべきだと思っています。
ただし、それが「いつ」「いくらで」起きるかは、私には分かりません。
分からないものを予想する代わりに、私は過去のデータを見ることにしました。
■ 7月末、私のEAは何をしていたか
まず、実際の記録です。
GogoJungleで公開されているフォワードテストの数字を、そのまま載せます。
期間 2026年5月12日〜7月28日
取引数 36件
勝率 83.3%(30勝6敗)
累計損益 +109,017円
平均保有 5.9時間(中央値3.7時間)
そして、最後の取引がこれです。
7月28日 05:55 買い 163.704(損切り 163.264)
7月28日 11:18 利益確定 163.804 +4,700円
このあと、7月29日から31日まで、新規エントリーはゼロ。
ポジションの持ち越しもゼロでした。
7月30日の安値は157.98円です。
最後に買った163.704円との差は、5円72銭。
損切りラインの163.264円からでも5円28銭下です。
もしあのポジションを持ち続けていたら、
損切り注文がまともに機能したかどうかも怪しい水準でした。
■ ただし「回避した」わけではありません
ここは正直に書きます。3日間の内訳が違うからです。
7月29日 FOMCの日 → 設計どおりの停止
7月30日 介入の日 → フィルターの対象外
7月31日 日銀会合の日 → 設計どおりの停止
私のEAには、FOMC・米雇用統計・日銀会合の日付が最初から組み込まれていて、
その前後は新規エントリーを止めるようにしています。
29日と31日は、これが働いた結果です。
しかし30日は違います。
日銀会合の「1日目」はフィルターの対象になっていません。
つまり、EAは普通に取引できる状態でした。それでも取引しなかった。
理由はおそらく、もっと単純なものです。
たまたまAIのエントリー条件を満たす特徴量がチャートに現れなかった。それだけの話です。
■ 過去の「円買い介入」を全部並べてみました
ここからが本題です。
私のEAは2003年5月から2026年6月までのティックデータで検証しています。
つまり、過去の為替介入がすべて含まれています。
今回起きたのと同じ「円買い・ドル売り介入」、
つまり相場が急落する方向の介入は、過去に8日ありました。
2022年 9月22日 145円台 → 一時140円台
2022年10月21日 151円台 → 一時144円台
2022年10月24日 149円台 → 一時145円台
2024年 4月29日 160円台 → 一時154円台
2024年 5月 2日 157円台 → 一時153円台
2024年 7月11日 161円台 → 一時157円台
2024年 7月12日 (追撃介入)
2026年 4月30日 160円台後半 → 155円台半ば
この8日について、3つの見方で数字を出してみます。
● 見方1:介入が実施された「当日」だけ
介入当日にエントリーした取引だけを抜き出します。
件数 7件
勝ち 7件(全勝)
損益 +553
損切り決済 0件
※金額はバックテストの口座通貨建てです。
意外かもしれませんが、EAは介入の日を避けていません。
普通に取引しています。そして、損切りには一度も到達していません。
印象的だったものを2つ挙げます。
2024年7月11日 00:35 買い 161.617
08:26 利益確定 161.720(+10pips)
→ その後、当日中に介入。161円台から157円台へ
2026年4月30日 02:35 買い 160.257
05:30 利益確定 160.357(+10pips)
→ その後、160円台後半から155円台半ばへ
どちらも、介入当日に買って、数時間で10pips取って降りています。
そして降りた後に、相場が崩れています。
これは「読んでいた」のではありません。
利益確定の幅が10pipsと短く、平均保有時間も3時間ほど。
長く持たない設計だから、たまたま嵐の前に席を立っていた。
そういう話だと理解しています。
● 見方2:介入日の前後1日まで広げる
介入の前日・翌日を含めると、こうなりました。
取引数 12件
利益確定 11件
損失 1件(時間切れ決済 -3.12)
合計 +779
12件中11件が利益確定。唯一の損失も、時間切れによる小さなものでした。
● 見方3:介入日の前後1か月
もう少し引いて、介入日の前後30日という単位で見ます。
2022年 9〜10月 46件 +1,255 勝率84.8% 最大損失 -1,235
2024年 4〜 5月 23件 +230 勝率78.3% 最大損失 -430
2024年 7月 22件 +617 勝率86.4% 最大損失 -616
2026年 4月 23件 +1,331 勝率91.3% 最大損失 -244
参考までに、全期間の平均は1か月あたり約10件、+331です。
介入局面の前後は、平均よりやや取引が多く、成績も悪くありません。
ただし、月単位で切ると負けている月もあります。
2024年5月は、介入があった月ですが月間で -454 のマイナスでした。
「介入局面は必ず得意」とまでは言えません。
■ 参考:逆方向の「円売り介入」では負けていました
念のため、逆方向の介入についても触れておきます。
相場が急騰する「円売り・ドル買い介入」です。
2003年5月〜2004年3月 約32.8兆円の大規模介入
67件 -628.52 (通期でマイナス)
2010年 9月15日 当日エントリーなし
2011年 3月18日 当日エントリーなし(G7協調介入)
2011年 8月 4日 前日からの売りが損切り -579.83
2011年10月31日 当日2件、両方利益確定 +452.80
私のEAは買いに偏った設計です。
直近のフォワードテストでも36件中30件が買いでした。
下げたところを拾う戦略なので、急騰方向の介入とは相性が良くありません。
今回起きているのは円買い介入、つまり急落方向です。
今後の協調介入も、あるとすれば円高方向になる可能性が高いでしょう。
過去のデータを見るかぎり、そちらはまだ相性の良い方向ではあります。
ただし――
■ 都合の良い数字だけを見ないようにします
ここまで書いておいて何ですが、私はこの結果をあまり信用していません。
理由が3つあります。
ひとつ目。サンプルが少なすぎます。
23年間で円買い介入は8日、当日エントリーはわずか7件です。
7件全勝と言っても、統計的に何かを主張できる数ではありません。
ふたつ目。負けている局面が現に存在します。
2024年5月は月間でマイナスでしたし、逆方向の介入局面では通期で負けています。
「介入に強いEA」という言い方は、正確ではありません。
みっつ目。これが一番大きいのですが、
バックテストのスプレッドは、実際の介入時の広がりを完全には再現できません。
現実の介入時には、スプレッドの急拡大、約定拒否、想定を超える滑りが起こります。
バックテストで損切りに当たっていないからといって、
実際の相場でも同じとは限りません。
■ 結局、何が言えるのか
私が今回のデータから受け取ったのは、
「介入に強い」ということではなく、もっと地味な2つのことでした。
ひとつは、長く持たないことの意味です。
利益確定10pips、平均保有3時間という設計は、地味で面白みがありません。
大きく取れないのかとよく聞かれます。
でも、嵐に居合わせる時間が短いというのは、それ自体が守りになっています。
もうひとつは、予定が分かっているものは避けられる、ということです。
FOMC、米雇用統計、日銀会合。
価格は予想できませんが、日付はもう決まっています。
そこだけは、事前にルールにしておくことができます。
ちなみに次の予定はこうです。
8月 7日(金) 米雇用統計
9月 4日(金) 米雇用統計
9月16日(水) FOMC
9月18日(金) 日銀 金融政策決定会合
来週の相場がどうなるかは、私には分かりません。
でも来週に何があるかは、もう分かっています。
予想することと、備えることは別物だと思っています。
私にできるのは、後者だけです。