「サインが出たら買う」をやめたら見えた ― 検証でわかったインジの本当の役割
デモ取引を始めたばかりの頃、ぼくのやり方はとてもシンプルでした。チャートにインジケーター(相場の状態を計算して線や矢印で見せてくれる指標)を並べて、「買いサインが出たら買う、売りサインが出たら売る」。それだけです。矢印が点いた瞬間にポチッと注文する。最初の何日かは、それで勝てた気になっていました。
でも、しばらく続けると、勝ちと負けが交互に来て、トータルではじわじわ削られていく。「サインは出てるのに、なんで負けるんだろう」。当時のぼくは、インジの設定が悪いんだと思って、数字をいじったり、別のインジに乗り換えたりを延々と繰り返していました。今なら分かります。問題は設定じゃなくて、「インジに方向(買う/売る)を決めさせていたこと」そのものでした。
申し遅れました、lulu.fx と申します。GOLD(XAUUSD)を中心にトレードしている現役の裁量トレーダーで、大量のデータやデモ取引を突き合わせながら、自分でEA(自動売買プログラム)を組んでいます。いまはプロップファームの (A社) に挑戦中です。
この「検証でわかる:FX初心者が勝てない理由」シリーズは、大量のデータとデモ取引を検証してわかった、初心者が勝てない“本当の理由”を、1つずつ書いていくものです。全5回のうち、今回は第3回。テーマは、多くの初心者がハマる「インジケーターへの頼りすぎ」です。
先に、いちばん大事なことを書いておきます。これは「インジは役に立たない」という話ではありません。インジは、使いどころを間違えなければ、ちゃんと武器になります。問題は「頼りすぎ」──方向を決める主役に据えてしまうことなんです。この違いを、順番に見ていきます。
デモで「サインが出たら打つ」を繰り返して、なぜか勝てなかった
まず、当時のぼくがどれだけインジ頼みだったかを、正直に書きます。チャートには、移動平均線(一定期間の平均価格をつないだ線)、オシレーター(買われすぎ・売られすぎを0〜100などで示す指標)、トレンド系のインジ──とにかく色々並べていました。そして「このインジが上向いたら買い」「あのインジが基準を超えたら売り」という、自分で決めたルールに従って、機械的に打っていました。
デモだと、これがそこそこ勝てるんです。だから「よし、ルールが固まった」と思い込む。ところが、勝ったり負けたりを繰り返すうちに、資金の曲線はだんだん右肩下がりになっていく。負けるときの負け方が、いつも似ていることにも、当時は気づいていませんでした。相場が横ばい(レンジ)のときに、サインが出るたびに逆方向に振られて、往復ビンタで削られる。これが典型的なパターンでした。
後になって、たくさんのインジの設定を1つずつ検証してみました。数え切れないほどのパターンを回してみて、はっきり見えてきたのが、「インジ単体を“方向の主役”にすると、優位が薄い場面がとても多い」という傾向です。ここで大事なのは、「だからインジはダメ」ではないということ。方向を決める役をインジに背負わせると弱いだけで、役割を変えると話が変わってくるんです。
なぜ「インジで方向を決める」と弱いのか
理由はいくつかあるんですが、ぼくが検証を通して腹落ちしたのは、大きく2つです。
1つ目は、ほとんどのインジは、価格を後から加工したものだということ。移動平均線もオシレーターも、元をたどれば「過去の価格の計算結果」です。つまり、価格が動いた“あと”に反応する。だからインジのサインを方向の合図に使うと、どうしても一歩遅れる。相場が素直にトレンドを出しているときはそれでもいいんですが、横ばいや細かい上下では、遅れて出たサインが、ちょうど反転の直前だったりします。ぼくが往復ビンタで削られていたのは、まさにこれでした。
2つ目は、インジの数値は、使うツールによってブレることです。これはこのシリーズの別の回でも触れたテーマなんですが、同じ「ADX」や「RSI」でも、検証用のツールで計算するのと、MT4で計算するのと、別のテスターで計算するのとで、表示される数値が微妙に違うことがあります。計算方式や平滑化(値をならす処理)のやり方が、ツールごとに少しずつ違うからです。
これは地味に効きます。「この指標が○○を超えたら買い」というルールを組んでも、その“○○”という数字自体が、環境を変えるとズレる。デモ(や検証ツール)でピッタリ機能していた閾値が、リアルの口座では微妙に別の値になっていて、機能しない。インジの数値に強く依存した手法は、こうやって土台からグラつくんです。
一方で、価格そのもの──「昨日の高値」「直近の安値」「今日ここまでの値幅」──は、どのツールで見ても同じです。加工されていない“生の事実”なので、ブレようがない。この違いが、方向を何で決めるべきかの答えに、そのままつながっていきます。
ここまでが、この記事の無料部分です。ここから先は、「じゃあ、方向は何で決めればいいのか」という肝心の答えを書いていきます。ぼくが検証の末にたどり着いた「価格の構造」で方向を決める具体的な4つの見方と、そのうえでインジを“脇役”として効かせる順番です。
ここから先(続きを読む)で公開:
- 方向を決める「価格の構造」4つの見方(高値安値の階段・前日の値幅・節目のブレイク・押し目ゾーン)
- インジを「確認役=脇役」に回すと途端に効きだす、具体的な使い方
- 同じインジ・同じ設定でも結果が変わる、「価格 → インジ」という順番の話
- インジ頼みの手法が、リアルのコストを引くと期待値ゼロに沈む理由
- ぼくが「終わってしまう線」を毎日見えるようにしている、自作ツールの話