EA開発者目線で語る。ナンピン型EAについて
皆さんは、「ナンピンEA」と聞いてどんなものを思い浮かべますか?
「下がったら買い増すやつでしょ」——はい、正解です。ただ、開発する側から見ると、ひとくちにナンピンと言っても設計思想はまるで違います。おとなしい草食系から、口座を一撃で溶かす肉食系まで。そして販売ページの成績表だけでは、その区別はほとんどつきません。
今日は、EAを作る側の人間として、ナンピンEAの「系統分類」をしてみようと思います。少しマニアックな話になりますが、この分類が頭に入ると、ナンピンEAを見る目が一段変わるはずです。
前提:ナンピンの基本原理
一応おさらいです。ナンピンとは、ポジションが逆行したら同方向に買い増し(売り増し)、平均取得価格を有利にする手法です。150円で買い、149円でもう1本買えば平均は149.5円。全値戻しを待たずに、少しの戻りで救出される——これが原理です。
相場はジグザグ動く以上、「少しの戻り」は高確率で発生します。だからナンピンEAは勝率が高く、資産曲線が滑らかになる。ここまでは、どのタイプにも共通です。
問題は、ここから先の「積み方」と「畳み方」の設計です。
↓ナンピン系EAは大体こんな資産曲線になります。
ナンピンEAの系統分類
開発者として私は、ナンピンEAを見るとき次の3つの設計パラメータで判断しています。
- ナンピン幅:何pips逆行したら次を積むか
ロット倍率:積むたびにロットを何倍にするか
最大本数:何本まで積むか(そして打ち止め後どうするか)
エントリーロジックがどれだけ凝っていても、ナンピンEAのリスクの正体はほぼこの3つで決まります。極端に言えば、エントリーは飾りで、積み方が本体です。この視点で、主な系統を見ていきます。
① 固定ロット等間隔型(草食系)
同じロットを、一定幅ごとに淡々と積むタイプ。最もおとなしい設計です。ポジションが増えても損失の膨らみ方は線形で、計算が立ちやすい。その代わり平均建値の改善も遅く、深い逆行からの救出力は弱め。「ナンピンの中では」最も事故が小さいタイプです。
② マーチンゲール型(肉食系)
積むたびにロットを1.5倍、2倍と増やすタイプ。平均建値がぐいぐい有利になるので、浅い戻りでも全体をプラスにできます。成績表は一番美しくなります。
ただし、ここで簡単な算数を。倍率2.0で積むと、7本目のロットは初期の64倍、合計保有は127倍相当です。倍率1.5でも7本目で約11倍、合計約32倍。ロットは等比級数で膨らむので、「あと1本」の重さが桁違いになっていきます。マーチン型の破綻は、この等比級数と証拠金の追いかけっこに負けた瞬間に起きます。販売ページで倍率の記載を探して、2.0に近いほど警戒レベルを上げる——これが私の見方です。
③ グリッド・リピート型
相場観をほぼ持たず、一定間隔の注文網を敷いて往復のジグザグを刈り取るタイプ。厳密にはナンピンと別物扱いされることもありますが、「逆行するほどポジションが増える」構造は同じです。レンジでは無類の強さ、一方向に走られたときの弱さも同じ。設計の肝は「網をどの価格帯に、どこまで広く張るか」で、想定レンジを抜けた瞬間に地獄が始まります。
④ バスケット回収型(合算決済)
積んだ全ポジションを個別に決済せず、合計損益がプラスになった瞬間にまとめて畳むタイプ。「平均建値+数pips」に全体の出口を置くイメージです。決済が一括なので取引履歴が読みやすく、「今どれだけ戻れば全解放か」が常に明確なのが特徴。ただし裏を返せば、浅い戻り一発に全額を賭ける設計でもあります。
⑤ ゾーンリカバリー型(両建て系)
逆行したら、損切りせず反対方向のポジションを重ねて損失を固定し、どちらかに抜けたら回収を狙うタイプ。「損切りしないのに損失が固定される」と聞くと魔法のようですが、往復でロットが膨張し続け、スプレッドとスワップを食われ続けます。レンジに捕まると、身動きの取れない両建ての塊だけが残る。個人的には、開発難易度に対して報われにくい系統だと思っています。
開発者目線の本音:なぜナンピンを選びがちなのか
さて、ここからは作り手の内情です。ゴゴジャンにもMQL5にもナンピン型EAは多いですよね~
少し身も蓋もないことを書きます。
EAを公開すると、フォワードテストが世間の目に晒されます。公開直後のフォワードが赤字で始まるのは、開発者として相当に胃が痛い。
そしてナンピン型は、構造上フォワードが良く見える可能性が高いのです。負けを確定させずに耐えるので、単発型EAが正直に負けを刻む横で、確定ベースでは連勝が続く。ドカンの前日まで、成績表は無傷に見えます。
つまり開発者にとってナンピン型は「公開後しばらく、高い確率で格好がつく」設計です。この安心感は、正直に言って魅力的です。私自身、開発中に「これ、ナンピンにすれば数字が一気に化粧されるな」と思う瞬間は何度もあります。
追い風の存在:ゴールドとドル円
もう一つ、外せない視点が相場環境です。ここ数年のゴールドは歴史的な上昇、ドル円も長期では円安優勢が続きました。この2銘柄の買いナンピンは、極端に言えば「いつか戻るのを待てば大抵どうにかなった」わけです。
だからこの2銘柄の買いナンピンEAが量産されやすい土壌があります。国内に限らず、海外のEA販売サイト(MQL5マーケット)でも人気上位はほぼナンピン系です。世界中の開発者が、同じ構造と同じ追い風に引き寄せられている。
ただし、上昇相場だったから助かっていたのなら、それは戦略の実力というより時代の追い風かもしれません。潮目が変われば、同じ設計のEAたちは同じ方向のポジションを抱えたまま、一斉に苦しくなる可能性があります。
少しだけ宣伝
実は私もナンピン系EAを出しております...
可能な限りリスクを排除した設計にしたつもりです。良ければご覧ください。