なぜインジを重ねても勝てないのか ― 検証の末に残ったのは「価格の構造」だった
「このインジ単体だと勝てないけど、あのインジと組み合わせれば勝てるはずだ」── ぼくは長いあいだ、そう信じてフィルターを盛り続けていました。
結論から言うと、これはうまくいきませんでした。単独で優位のないインジをいくつ重ねても、勝てるようにはならなかったんです。むしろ条件を増やすほど、過去のデータにだけ都合よく合っただけの「見せかけの右肩上がり」になりやすくて、別の期間に持っていくと崩れました。この記事は、その遠回りの末にぼくが何を捨てて、何を残したのかを正直に書いたものです。
申し遅れました、lulu.fx と申します。GOLD(XAUUSD)を中心にトレードしている現役の裁量トレーダーで、自分でEA(自動売買プログラム)を組んでは検証する、ということを繰り返しています。いまはプロップファームの (A社) に挑戦中です。
この「インジケーターの検証で分かった強み・弱点」シリーズでは、ADX・移動平均・オシレーター・一目均衡表・出来高、それにツールごとの実装の違いまで、ひとつずつ手を動かして確かめてきました。今回はその締めくくりとして、「じゃあ結局、何を軸にすればよかったのか」という答えを書きます。フィルターを盛りすぎて疲れている人に、いちばん届いてほしい回です。
フィルターを盛るほど、なぜか弱くなった話
まず、ぼくがいちばん長くハマっていた痛みの話から。
勝率を上げたい。負けを減らしたい。そう思ったとき、いちばん自然に思いつくのが「条件を足す」ことです。「移動平均が上向きのときだけ」「ADXが一定以上のときだけ」「オシレーターが売られすぎじゃないときだけ」── こうやってフィルターを重ねていくと、過去データ上の成績は、驚くほどきれいになっていきます。
グラフが右肩上がりになって、負けトレードがどんどん消えて、勝率が上がっていく。この瞬間はほんとうに気持ちいいんです。「ついに勝てるロジックを見つけた」と思ってしまう。ぼくは何度もこの快感を味わいました。
ところが、です。その「完成したロジック」を、検証に使っていない別の期間に当てはめると、あっけなく崩れました。きれいだった右肩上がりが、別の年ではガタガタになる。ひどいときには、フィルターを足す前のシンプルなロジックのほうが、まだマシな結果だった、ということすらありました。
これは一度や二度じゃありません。条件を足すたびに過去成績はよくなるのに、未来(別期間)では弱くなる。「盛れば盛るほど、本番で弱くなる」という、逆の現象がずっと起きていたんです。当時のぼくには、なぜそうなるのかが分かりませんでした。
「弱い+弱い」は「強い」にならない
たくさん検証していくうちに、ぼくはひとつの当たり前に気づきました。
単独で優位のないインジは、組み合わせても優位が生まれないことが多い、ということです。よく考えれば当然なんですが、渦中にいると見えなくなります。「単体では勝てないけど、合わせれば勝てる」という発想には、実は根拠がないことが多いんです。
なぜか。ひとつの理由は、同じような弱点を持つインジ同士を組み合わせても、負けが分散されないからです。
たとえば移動平均もADXも、どちらも「価格をならして平均する」系の計算です。だからトレンドがはっきりしている場面には両方とも強く、レンジで細かく往復する場面には両方とも弱い。性質が似ているんです。この2つを重ねても、負ける場面(レンジのダマシ)がそっくり重なるだけで、片方が負けをカバーしてくれるわけではありません。
投資でリスクを分散するときは、値動きの傾向が違うものを組み合わせますよね。同じ動きをするものばかり集めても分散になりません。インジの組み合わせも、これと同じでした。似た者同士を何個並べても、弱点は消えず、むしろ同じ場面でまとめて負ける。
「勝率を上げるための組み合わせ」のつもりが、実際には「同じ負け方を強化する組み合わせ」になっていた ── これが、盛っても勝てなかった大きな理由のひとつでした。
条件を増やすと「過剰最適化」に近づく
もうひとつ、もっと根深い理由があります。「過剰最適化(オーバーフィッティング)」です。
聞き慣れない言葉かもしれないので、やさしく言い換えます。過剰最適化とは、過去のたまたまの並びに、ロジックを合わせ込みすぎてしまうことです。テスト勉強でいうと、「過去問の答えだけを丸暗記して、本番の新しい問題には対応できない」状態にそっくりです。
ここが怖いところなんですが、フィルターを足すほど、過剰最適化は進みます。条件を1つ足すたびに、ロジックは「過去のこの局面ではこう、あの局面ではこう」と、過去の並びの細部に合わせ込んでいく。だから過去成績はどんどんきれいになる。でもそのきれいさは、「未来にも通用する強さ」ではなく「過去への合わせ込み」でしかないんです。
具体例を挙げます。ぼくはあるとき、いくつものインジのフィルターを重ねて、検証期間の成績が文句なしの右肩上がりになるロジックを作りました。勝率も高く、負けが本当に少ない。「これは本物だ」と思って、検証に使っていない別の期間に当てはめてみたら ── ほとんど機能しませんでした。過去にだけ都合よく合っていただけで、相場の並びが変わったとたん、ぴたっと止まった。
この罠に、ぼくは何度もはまりました。そして、ようやく学びました。「検証期間でのきれいさ」は、強さの証明にはならない。むしろ、きれいすぎるときほど過剰最適化を疑うべきだ、と。条件を盛った複雑なロジックは、たいていこの罠を抱えています。
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