第6回:平均回帰力を“見える化”する ─ MeanReversionAnalyzer 開発編
ここまでの記事では、
- ランダムウォーク
- 平均回帰
- OU過程
- Half-Life
- 「戻る力」が期待値に与える影響
を、理論とシミュレーションで見てきました。
そして見えてきたのは、
「相場によって、戻りやすさが全然違う」
という事実です。
USDJPY は比較的戻りやすい。
一方で EURTRY や BTC は、
一方向へ走り続けることが多い。
つまり、
「どの通貨が、どれくらい平均回帰するのか?」
を定量化できれば、
- 逆張りが有効な相場
- 押し目が機能しやすい相場
- トレンドが継続しやすい相場
を客観的に分類できるはずです。
そこで今回、
その“戻る力”をリアルタイム分析するために開発したのが、
MeanReversionAnalyzer
です。
■ MeanReversionAnalyzerとは?
MeanReversionAnalyzer は、
通貨ペアの
「平均へ戻る力」
を、物理学と金融工学のモデルを使って測定する
MT4用インジケータです。
多くのトレーダーは、
「移動平均から離れすぎたら、そのうち戻る」
という感覚を持っています。
しかし実際には、
- すぐ戻る通貨
- 全然戻らない通貨
- そのまま走り続ける通貨
が存在します。
このインジケータは、
その違いを
θ(シータ)
という数値で可視化します。
■ イメージは「バネにつながれた価格」
イメージすると分かりやすいです。
● EMA(移動平均)= バネの中心
● 現在価格 = ボール
● θ(シータ)= バネの硬さ
価格がEMAから離れると、
市場はその価格を戻そうとします。
ただし、
その“戻る力”は通貨によって違います。
θ が大きい
→ バネが硬い
→ 価格がすぐ戻る
→ 平均回帰しやすい
θ ≈ 0
→ バネがほぼない
→ ランダムに漂う
→ ランダムウォークに近い
θ < 0
→ バネが逆向き
→ 離れるほど加速
→ 強トレンド
■ なぜ「価格そのもの」を分析してはいけないのか?
ここが今回かなり重要です。
最初は、
を回帰して、
平均回帰係数を求めようとしていました。
しかしこれだと:
- EURTRY
- BTC
- NASDAQ
のような長期上昇資産で、
「平均回帰している」
と誤判定してしまいます。
なぜなら、
実際の相場は:
だからです。
つまり、
「価格そのもの」
ではなく、
「平均からのズレ」
を見る必要がある。
■ MeanReversionAnalyzer の核心
そこで本インジケータでは、
を作り、
その乖離が:
- 戻るのか
- 拡大するのか
を分析します。
つまり見ているのは、
「価格」ではなく、
「平均からどれだけズレたか」
です。
■ 数学的背景:OU過程
使用しているモデルは、
金融工学で有名な:
Ornstein-Uhlenbeck Process(OU過程)
です。
式で書くと:
意味はシンプルです。
Z が平均から離れる
↓
-θ の力で戻される
↓
ただし σ のランダムノイズも存在
つまり、
「戻る力」と「ランダム性」
のバランスを見ています。
■ 実際に何が表示されるのか?
チャート左上に、
リアルタイムで分析結果を表示します。
=== MeanReversionAnalyzer ===
Pair : USDJPY
TF : H1
EMA : 200
--- TREND ---
Theta(Raw) : 0.0012
EMA Slope : -0.12%
--- REVERSION ---
Theta(Dev) : 0.0531
HalfLife : 13.2 bars
Deviation : -1.82%
ADF : Stationary
Hurst : 0.37
--- REGIME ---
Range Mean Reversion
■ Half-Life がかなり面白い
今回かなり重要なのが:
Half-Life(半減期)
です。
これは:
「乖離が半分に戻るまでの平均時間」
を意味します。
例えば:
-
HalfLife = 5
→ かなり早く戻る -
HalfLife = 50
→ なかなか戻らない
つまり、
「どれくらい待てば戻りやすいか?」
まで見えるわけです。
これは裁量でもかなり役立ちます。
■ 4つの相場レジームを自動判定
本インジケータでは、
相場を4種類に分類します。
| レジーム | 状態 |
|---|---|
| Range Mean Reversion | レンジ回帰 |
| Trend + Pullback Reversion | トレンド+押し目 |
| Strong Trend | 一方向トレンド |
| Random Walk | ランダム |
これが非常に便利です。
例えば:
- RSI逆張りが効きやすい相場
- 押し目買いが有効な相場
- 順張りしか危険な相場
を区別できます。
このインジケータは、
未来予測ツールではありません。
そうではなく、
「今、この相場に統計的優位性があるのか?」
を分析しています。
つまり:
- 平均回帰の優位性
- トレンド継続の優位性
- そもそもエッジがない状態
を見ています。
■ 今後やりたいこと
現状でもかなり面白いのですが、
今後はさらに:
- マルチペアランキング
- 通貨強弱との組み合わせ
- AIによるレジーム分類
- ペア別最適Half-Life
- 時間足別θマップ
なども試していきたいと思っています。
■ 第6回まとめ
- 相場には「戻る力」の強弱が存在する
- その力を θ(シータ)で定量化できる
- 重要なのは「価格」ではなく「平均からの乖離」
- OU過程で回帰性を測定できる
- Half-Life によって「戻る速度」も分かる
- 相場をレジーム分類できる
- MeanReversionAnalyzer は“相場の性質”を解析するツール
■ 次回予告(第7回)
次回は、
「実際の28通貨ペアは、どれくらい平均回帰するのか?」
をランキング形式で分析していきます。
- USDJPY は本当に戻りやすいのか?