資産形成に成功した人が絶対にやらないこと10選
投資の本を読むと、たいてい「やるべきこと」が書いてあります。
積立投資をしなさい。分散投資をしなさい。長期で持ちなさい。インデックスファンドを選びなさい。これらはすべて正しいことです。しかし多くの人が「やるべきこと」を知っていながら、なかなか資産が増えないという現実があります。
なぜでしょうか。
理由のひとつは、「やってはいけないこと」を知らないからです。
正しいことをやっていても、同時に間違ったことをやっていれば、その努力は相殺されます。毎月3万円を積み立てながら、一方でFXのレバレッジ取引で同じ金額を溶かしていれば、前進しているようで実は原点に近い場所にいます。
今日の記事は「やるべきこと」の話ではありません。資産形成に成功した人たちが、口を揃えて「これだけはやらなかった」と言うことの話です。
一つ目は「相場を予測しようとすること」
資産形成に成功した人が最もやらないことのひとつが、相場を予測しようとする行為です。
「今が買い時かどうか」「もうすぐ暴落するのではないか」「この銘柄はいつが天井か」。こうした予測に時間とエネルギーを使い続けることを、資産形成に成功した人はしませんでした。
なぜなら、相場の短期的な動きを正確に予測できる人間は世界中に存在しないからです。これは厳しい言い方ではなく、事実としてそうです。世界中のプロのファンドマネージャーが運用するアクティブファンドのうち、長期にわたって市場平均を上回り続けるものは全体の20%以下です。プロでも8割が市場の動きを読み切れないという現実があります。
それでも多くの個人投資家が「自分には読める」という感覚を持ち、予測に基づいて売買を繰り返します。一度たまたま予測が当たると、自分に才能があると錯覚します。しかし長期で見れば、その予測の精度は運と変わらないことがほとんどです。
資産形成に成功した人が実践していたのは、予測をやめて「仕組みで動く」ことでした。毎月決まった日に決まった金額を積み立てる。相場がどうなっていても変えない。これによって「今が買い時かどうか」という問いを考える必要がなくなります。予測を手放した人だけが、感情から自由になれます。
二つ目は「暴落時に売ること」
資産形成の失敗者と成功者を分ける最大の分岐点は、暴落時の行動にあります。
暴落が来ると、多くの人が怖くなって売ります。2020年のコロナショックで日経平均が30%以上下落したとき、多くの個人投資家がパニックになって保有資産を売り払いました。そしてその後の急回復と上昇を、指をくわえて見ていました。
資産形成に成功した人はこのとき売りませんでした。それどころか、一部の人は「安くなった」と捉えてむしろ積立額を増やしました。
これは勇気の話ではありません。理解の話です。
自分が30年後の老後のために積み立てているのだとしたら、今年の株価が30%下がることは、30年という目的の達成を妨げるものではありません。30年後に経済が今より大きくなっていれば、今年の下落は単なる通過点です。
暴落時に売ってしまう人は、長期の目的を持っていないか、あるいは持っていても短期の感情に負けてしまう人です。資産形成に成功した人は、暴落という嵐が来たとき、帆を畳んで嵐が過ぎるのをただ待つことができました。
人間の脳は損失を利益の約2倍強く感じるように設計されています。100万円の利益より100万円の損失の方が心理的ダメージが大きい。この本能に逆らって「売らない」という選択をするために、成功した人は「なぜ投資しているのか」という目的を常に明確にしていました。
三つ目は「流行りの銘柄に飛びつくこと」
SNSで話題になった銘柄、ニュースで特集された企業、友人から聞いた「絶対上がる」という情報。こういった流行りの銘柄に衝動的に飛びつくことを、資産形成に成功した人はしませんでした。
理由は単純です。あなたがその情報を知ったとき、すでに多くの人がその情報を知っています。そして多くの人が知っている情報は、すでに株価に織り込まれています。
投資の世界に「噂で買って事実で売れ」という格言があります。噂が広まる段階で株価は上昇し、実際の発表があった時点では「材料出尽くし」として下落することが多いということです。SNSや経済ニュースで話題になった銘柄を見て「これは上がりそうだ」と感じたとき、その情報はすでに遅すぎる可能性が高いのです。
資産形成に成功した人は、流行りを追う代わりに「理解できるものだけに投資する」という原則を持っていました。自分がそのビジネスモデルを説明できない企業の株は買わない。なぜ上がると思うのかを5分で説明できないなら買わない。この原則が、衝動買いによる損失から資産を守り続けました。
四つ目は「一つの銘柄や資産に集中させすぎること」
「これは絶対に上がる」という確信を持って、資産のすべてを一つの銘柄に集中させる。あるいは株式だけ、不動産だけ、仮想通貨だけという単一資産への偏重。これを資産形成に成功した人はしませんでした。
世界中の企業の中で、10年後に確実に存在し、かつ今より高い株価がついている企業を特定することは、プロでも非常に難しい作業です。かつてトップ企業だった企業が10年後に大きく凋落する例は、歴史上いくらでもあります。日本でも一世を風靡した企業が経営危機に陥る事例を、私たちは繰り返し目撃してきました。
分散投資は「どこかが上がれば良い」という消極的な戦略ではありません。「どこかが大きく下がっても全体が壊滅しない」という、資産を守るための積極的な戦略です。
全世界の株式に分散投資するインデックスファンドは、数千社に同時に投資することを意味します。その中のどれかが倒産しても、残りの数千社が成長し続ける限り、資産全体への影響は限定的です。分散は利益を薄めるのではなく、リスクを薄めます。そしてリスクを薄めることで、長期で市場に居続けることができます。
五つ目は「手数料の高い商品を選び続けること」
これは多くの人が軽視しているコストの問題です。
投資信託には信託報酬という手数料がかかります。この手数料は毎年、保有額に対して一定のパーセンテージで引かれます。たとえば信託報酬が年率1%のファンドと年率0.1%のファンドでは、0.9%の差があります。
この0.9%の差は小さく見えますが、長期では驚くほどの差になります。
1000万円を20年間運用した場合、年率6%のリターンがあったとして、手数料1%を引いた実質リターンが5%の場合と、手数料0.1%の実質リターン5.9%の場合を比較します。前者は約2653万円、後者は約3122万円になります。手数料の差だけで約470万円の違いが生まれます。
資産形成に成功した人は、この手数料の差を軽視しませんでした。同じような投資対象を選ぶなら、手数料の安い方を選ぶ。これは当たり前のようでいて、多くの人が実践できていないことです。銀行や証券会社の窓口で勧められる商品は、手数料が高いケースが多いです。なぜなら金融機関は手数料収入によって利益を得ているからです。
成功した人は金融機関の「お勧め」を鵜呑みにせず、自分で手数料を確認して比較する習慣を持っていました。
六つ目は「生活防衛資金を投資に回すこと」
「余裕資金で投資する」という言葉があります。これは投資の絶対原則のひとつですが、守れていない人が意外に多いです。
生活防衛資金とは、急な病気や失業、突発的な出費に備えるための現金です。一般的には生活費の3か月から6か月分を現金で手元に置いておくことが推奨されます。月に20万円の生活費なら60万円から120万円です。
この生活防衛資金まで投資に回してしまうと、何か緊急事態が起きたときに投資を解約して現金化する必要が生じます。問題はそのタイミングが、相場の悪い局面と重なることが多いという点です。病気になる、仕事を失う、大きな修繕が必要になる、こういった緊急事態はストレスが高い状況で発生します。そのストレスの中で資産が目減りしている局面で投資を解約することは、精神的に非常に辛い体験です。そしてその辛い体験が「投資なんてするんじゃなかった」という誤った結論につながります。
資産形成に成功した人は、投資を始める前に生活防衛資金を確保しました。この現金は投資に回さない。どんなに魅力的な投資機会が来ても、ここには手をつけない。その鉄則が、緊急時に冷静な判断を維持させ、長期投資を続けることを可能にしました。
七つ目は「レバレッジを過剰にかけること」
FXの10倍レバレッジ、信用取引による株式の2倍から3倍の取引。これらは少ない資金で大きな利益を狙える反面、少ない変動で大きな損失を被るリスクを持っています。
資産形成に成功した人の多くは、レバレッジを使いませんでした。あるいは使ったとしても、非常に限定的な範囲に留めていました。
理由は数学的です。
レバレッジをかけた投資で50%の損失を出すと、元に戻るには100%の利益が必要です。100万円が50万円になったとき、50万円を100万円に戻すには100%のリターンが必要です。50%の損失を取り戻すのは、50%の利益では足りないのです。
さらにレバレッジ投資では強制ロスカットという仕組みがあります。相場が一定以上動いた場合、証拠金が不足して自動的に強制決済される仕組みです。これによって投資家は「相場が戻るまで待つ」という選択肢を奪われます。
暴落時に「持ち続けることが大切」という原則は、レバレッジ投資には適用されません。強制ロスカットによって、望まない最悪のタイミングで市場から退場させられるリスクがあります。
資産形成の本質は「大きく増やすこと」より「大きく減らさないこと」です。レバレッジは増やすスピードを上げると同時に、減るスピードも上げます。資産形成に成功した人は、このリスクの非対称性を理解していました。
八つ目は「税金の仕組みを無視すること」
投資の利益に対しては約20%の税金がかかります。100万円の利益が出ても、手元に残るのは約80万円です。
この税金を「仕方ないもの」として無視する人と、合法的に最小化する方法を学んで実践する人では、長期で見て大きな差がつきます。
NISAとiDeCoという二つの制度は、この税金の問題に対する国からの答えです。NISAでは投資の利益が非課税になります。iDeCoでは掛け金が所得控除になり、かつ運用中の利益も非課税です。これらを使わない手はありません。
資産形成に成功した人は、これらの制度を理解して最大限に活用していました。毎年のNISA枠を使い切る。iDeCoの上限額まで拠出する。この二つだけで、何十年かの運用期間中に節税できる金額は数百万円に及ぶことがあります。
また確定申告を通じて損益通算という仕組みも活用していました。ある投資で損が出ているとき、利益の出ている投資と組み合わせることで、課税される利益を減らすことができます。これも多くの人が知らないまま使わずにいる仕組みのひとつです。
お金を増やすことと、増やしたお金を税金で減らさないことは、資産形成の両輪です。収益を上げながらコストを下げるという経営の基本と同じ発想が、個人の資産形成にも当てはまります。
九つ目は「誰かの成功体験をそのまま真似すること」
SNSやYouTubeで「この投資で1000万円になりました」という発信を見て、同じことをしようとする。これを資産形成に成功した人はしませんでした。
人の成功体験には、再現性がないことが多いです。
FXで大きく儲けた人の話を聞いたとき、その人が成功した理由が「その時期の相場環境が特別だった」という場合があります。2020年から2021年にかけて特定の仮想通貨に投資した人が大きな利益を得ているとしても、それはその時期の特殊な相場環境があったからです。同じことを今やれば同じ結果になるとは限りません。
また生存バイアスという問題があります。FXで1000万円儲けた人は声高に語りますが、同じことをやってFXで500万円失った人は語りません。成功体験は可視化されますが、失敗体験は隠れます。見えている成功例だけを参考にすると、成功の確率を実際より高く見積もってしまいます。
資産形成に成功した人は、誰かの成功体験から「アイデアを得る」ことと「そのまま真似する」ことを区別していました。他の人の体験を参考にしながら、自分の状況、自分のリスク許容度、自分の時間軸に合った方法を自分で考えて選択していました。
十番目は「途中で諦めること」
最後にして最も重要なことです。
資産形成に成功した人と失敗した人の最大の違いは、最終的には「続けたかどうか」です。正しい方法を知っていても、途中でやめてしまえばゼロです。
人が資産形成を途中でやめてしまう理由はいくつかあります。暴落が来て怖くなった。生活が苦しくなって積立額を削った。結果が出るのが遅くて飽きた。もっと良い方法を探し続けて迷走した。
資産形成は10年単位の話です。最初の3年は劇的な変化を感じにくいです。100万円を5パーセントで運用しても、1年で増えるのは5万円です。「頑張ってもこれだけか」という感覚が生まれやすい時期です。しかし10年後には162万円になり、20年後には265万円になり、30年後には432万円になります。最初の3年と最後の3年では、まったく異なる体験になります。
資産形成に成功した人は、この「最初は地味だが後半に加速する」という複利の構造を理解していたからこそ、地味な積み重ねに飽きることなく続けられました。途中で更に良さそうな方法に乗り換えることもしませんでした。仕組みを一度作ったら、あとは触らない。その「触らない力」こそが、長期投資の最強の武器です。
これを読んだあなたへ
十個のやらないことを読んで、いくつかに心当たりがあった人もいるはずです。
大事なのは、今日から変えることです。昨日まで相場を予測しようとしていたなら、今日からやめる。暴落が来たとき売りたくなったら、この記事を読み返す。手数料の高い商品を持っていたなら、今月中に見直す。
資産形成の失敗のほとんどは、知識の不足よりも行動のパターンに原因があります。正しいことをやり続けながら、同時に間違ったことをやり続けている。その間違ったことをひとつずつ減らすことが、資産形成の加速につながります。
やることを増やすより、やらないことを決める方が、長期投資においては効果が高いことがあります。余計なことをしない。触らない。待つ。これが資産形成の真髄です。
派手な投資話より、地味な「やらないこと」の実践が、10年後20年後の資産の差を生み出します。
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