【特別無料サンプル|バリューで紐解く企業とマーケット(柳下裕紀)】2025年11月No.1『セリア(2782)バリュエーション分析(アップデート)』
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執筆:柳下裕紀
◎セリア(2782)バリュエーション分析
イタリア語の「真面目な」を意味する社名セリア、まさに名は体を表す地道な経営・事業運営の企業で、直近では2025年3月期、そして今期2026年第2四半期まで決算が出ていますが、改めてその企業DNAが色濃く差別化の因として明確になっている気がします。
株価的には御存知の通り、かなり低迷が続いてきました。当然ながら、これは100円ショップという業態、つまり、需要および供給に於いてデフレの恩恵を最大限に受けるビジネス特性に対して、インフレに転じたことがマイナスになるとの見方が強まったためです。当然円安も経営面でネガティブ要因なので、ダブルで嫌気された訳ですね。
しかしその中で、一貫して増収を継続、売上高は16期連続で過去最高更新しています。一方で、特に上記のネガティブ要因(円安、インフレ)が強まった2022年以降、営業利益は3期連続で減益となっていましたが、2025年3月期は二桁の増益、今期も増収増益予想です。
2010年3月期から直近までの15年間で、売上高は3.74倍、営業利益額は7.35倍、年平均成長率CAGRでは売上高が約8%、営業利益が約12.5%と、競合他社に比べて突出して高い同社の参入障壁、フランチャイズバリューを生み出している競争優位性は何なのか?という所から先にまず確認しておきたいと思います。
①100円ショップだからこその差別化戦略
セリアがPOSシステムを最大限活用していることは知られています。重要な強みであり、仕組み構築の重要なツールではありますが、それは参入障壁ではなく、参入障壁を強化するための重要な戦略要素の一つです。
POSを使っている企業は沢山あり、商品力の高さでは圧倒的に高いセブンが有名ですね。
要するに、このPOSが価値創造を強化するツールになるかどうかは利用の仕方次第、何のために使うのかが明確であること、当然参入障壁を意識して高める為で、そこが明確に分かれば、最大限効果的に利用出来る、というのがポイントです。
そこも踏まえて再度、参入障壁は何か?ということで、答えはこの章のタイトル通り、非常にオーソドックスに製品開発力で、基本のキと言えますが、ただ、100円ショップであるセリア、敢えて100円ショップなのに、商品差別化が参入障壁になっている、競争優位性であることが、セリアが競合に対してフランチャイズバリューを稼げている理由でもありますし、これは、競合他社が200円、300円の商品をドンドン平気で出すようになっている一方で、同社が全品100円均一を堅持していることで、益々大きな意味を持つようになっています。
セリアがPOSを導入した2004年で、そこから、私がいつも説明していますが、投資(設備やM&A)というのは大体5年以降から、その効果が本格的に出現し始めると言っている通り、2009年から明らかに数字が大きく変化してきています。
セリアは、明らかにダイソーなど競合とは違う品揃えで、手作り素材とか、女性向けのDIY商品が充実していて、非常におしゃれです。無印的なイメージもあります。会員さんが勘違い?したように、私が大好きな猫皿も非常に有名ですが、オリジナリティが高くて品揃えが充実しています。
実は、このインフレ下でここがさらに強みとして強化されていますが、それは後述します。
取扱商品アイテム数はキャラクター関連商品の拡充に伴い、約28,000点に増加しました。店舗当たりでは平均で約15000点、年間では約7000点が入れ替わり、他社より圧倒的に新陳代謝が高いです。
その他の100円ショップとの違い、まず食品が圧倒的に少ない、特に他社では置いている調理加工品とか調味料とか、一般的な食品は置いていないですね。一部あるのは菓子ですが、それも2025年3月期で1.3%と非常に少ない、殆どが雑貨(98.6%)です。他社は菓子も含めた食品が大体2割前後あります。
食品は他のスーパーでも100円以下で販売している場合も多いので、あまり価格でお得感を打ち出す事は出来無いのですが、基本的に集客効果が高いとされています。手っ取り早く、何となく入って手に取る客が割と居るという事ですね。
同社は敢えてそうした商品は入れない、それはブランディングという意味で『カラーザデイズ(日常を彩る)』というコンセプトを挙げた店舗の価値を下げるからです。
何となく入る、ではなく、目的を持って、セリアらしさを求めて来店する顧客のロイヤリティを囲い込む、という所にこだわっている訳ですね。
仕入先は約150社で、主な取引企業は、レック株式会社(東証1部7874)、エコー金属株式会社(非上場、家庭日用雑貨、DIY用品などを100円ショップ向けに販売)、サンノート株式会社(非上場、100円ショップ向けに紙製品、ファイル、筆記用具などを販売)、協和紙工株式会社(非上場、紙製品の製造販売)など、つまり同業他社の100円ショップとも取引をしている所が多いので、大きく変わりませんが、異なるのは、セリアがこうした協業メーカーとの共同開発品を多数揃えていることです。これも後程詳しく説明します。
しかし、再確認すると、あくまでも100円ショップですから、例えば無印などとは異なり、付加価値を上げる為の自由度が圧倒的に低いのは分かりますよね。
そこで同社は、まず、DIY製品によって顧客のロイヤリティを引き上げる様々な施策、特にスイッチングコストを引き上げる為に、まず販売方法の工夫として、Seriaの商品を使った手作りレシピを紹介する、アクセサリーや、インテリア、ガーデニング、編み物、バッグ、文具、ラッピング、服飾、そしてお菓子もこの展開に入れていて、手作り素材が充実しています。
さらに手作りコンテストを開催してオリジナル作品を広く募集し、優秀な作品には特典を贈呈したり、科学工作チャレンジとして学研のkidsnetとのコラボで、 Seriaの商品を使った手作り工作(夏休みの自由研究)を紹介したり、書籍「SeriaではじめるDIY」を出版してアイデアを紹介したり、様々な試みで顧客のロイヤリティを上げているのです。この辺りのアプローチはホームデポが同じような取り組みをしています。
好きなキャラクターのぬいぐるみを着せ替えて楽しむ「ぬい活」を提案して特にZ世代などの新たな客層を獲得しているのもこの取り組みからです。取引先のメーカーと組んでオリジナル商品を相次ぎ開発し、ネットでは「セリアで買えるぬい活グッズ」を紹介する愛好家のサイトがいくつも立ち上がっています。
②価値創出モデル構築をサポートするPOS
改めてPOSシステムについて。
実は2000年代前半、セリアはかなり経営難の状態で、当時は販売商品の多様化、店舗従業員の勘と経験に頼った発注・在庫管理、圧縮陳列と、ダイソーと同じやり方を踏襲していたことが背景にありました。
そこで、2003年に創業者の甥である現社長河合映治氏、大垣共立銀行で統計的手法に基づくシステム構築業務を担当していた同氏が入社して常務となり、2004年以降のデータ活用をもとにした変革を推進した訳です。
言った通り、100円ショップであること、そして参入障壁が商品の差別化であること、このビジネスモデルを基本としてフランチャイズバリューを創出する為には、どう仕組みを構築していくか、それを強力にサポートできるのがPOSな訳です。
直営店と本部が即時に販売個数などを把握するリアルタイムPOS(販売時点情報管理)をいち早く2004年に導入した訳ですが、今でこそダイソーもセリアに倣ってPOSをかなり入れてきていますが、当時はドンキ方式で商品を山積みにし、売れ筋や死に筋を気にせずアイテムの多さで勝負する、当時は9万アイテム扱っていましたが、『100円ショップにPOSは要らない』と言っていたんですね。
Seriaは、POS情報から、独自の分析手法により商品ごとの「お客様支持率」であるPI値を算出し、店舗ごとに最適な品揃えを実現しています。
PI(Purchase Index)値というのは、小売りでは良く知られた指標で、レジ通過客千人当たりの購買指数、例えばある商品を購入している顧客数が、千人中100人だったら、その商品のPI値は10%、というシンプルな計算です。
セリアはそのオリジナルバージョンであるSPI(Seria Purchase Index)値をベースにして、理想的な商品構成を導き出し、店舗・商品別と全店ベースそれぞれのSPI値をリアルタイムに算出し、比較しています。
各店舗のPIを算出(PIをベースとする理由は、店舗ごとに⽣じる来店客数の違いによる販売数量の差を排除するため)してこれらを合成し、かつ店舗特性(店舗⾯積、地域など)、季節などのファクターを加味して調整したこの独⾃データをもとに序列を作成するのです。
3万近い商品の購買データを、需要のある商品から順番に羅列できるアルゴリズムで分析したところ、上位2割の売れ筋商品が8割の売り上げを占めることがみえてきました。
ある商品が特定の店舗だけで売れていなければ、売り方を工夫することによって、売れる可能性があると判断して、店舗ごとに理想の商品構成をはじき出し、最適な量で発注業務を指示します。全体の売れ筋動向から機会損失も防げます。一見、特定の季節用と思われる商品も、データを検証すると一年を通じて全く異なる使われ方をするケースが多いと判明したり、これは頭だけ、イメージで考えただけでは分からないことです。そこで一年中店頭から在庫を切らさないという判断が出来たりします。
そして、このPOSで算出したSPIをフルに活用するべく、発注支援システム「自律型仮説検証モデル」を2006年に自社で内製構築しました。
上述の序列が上位の商品ほど在庫を多く持つように計算し、各店舗にどの商品を何個発注すればよいかを通知するものですが、店舗では発注⽀援システムの⽰す商品と数量を基に発注端末から注⽂することで、需要に⾒合った商品の品揃えが可能となるため、店舗スタッフ個⼈の勘や経験に頼らない、データ分析に基づく、確実に売れる商品の品揃えが実現出来るようになり、最適な品揃えにより、必要以上の過剰発注による無駄を抑えることが可能となり、コスト削減を実現しています。
集めたデータを在庫管理に落とし込み、不慣れなパートでも手軽に作業できるようなシステムを全店で本格導入するようにしたことでコストが下がり、従業員は接客や店舗のレイアウト、商品の見せ方を工夫することに時間を割くことができるようになるわけです。
リアルタイムで店舗の稼働状況を見れますから、近くの店舗同士で人員を融通する事も出来て、1店あたり平均10人で動かすようにしています。
また、発注⽀援システムでは、発注後の販売と在庫によって、販売予測・在庫予測と実在庫との差異は⾃動的に再計算されます。このようなプロセスにより、常に仮説と検証を繰り返すことになるのです。
上述の「ぬい活」も、こうした嗜好性の高い商品は一過性のブームに終わることもあり、本来は攻守の判断が難しい分野で、勢いに乗って商品を拡充した途端、在庫の山が積み上がるケースも多いですが、販売動向や在庫推移に基づくデータから人気定着の手応えを得て、1年間でアイテムを3倍、販売個数を4倍に伸ばしました。別価格帯の商品拡充に動く他社をよそに、100円の安心感との両立で広く生活雑貨を購入する従来の客層とは別に、特定の目当ての商品のために来店する層を強固に囲い込んでいます。
同社は商品を仕入れ先から全量買い取っており、「当たり外れ」が大きい商品でも共同開発するメーカーにとって組みやすいのです。セリアもまずは一部の店舗に投入してデータで検証し、在庫リスクを抑えながらアイテムの拡充や改廃を機動的に判断できるため「(推し活グッズなどは)実は相性が良い分野」なのですね。
2022年7月から販売を始めた19世紀の著名デザイナー、ウィリアム・モリスのデザイン商品なども拡充し、多岐にわたる商品をまんべんなく並べる従来型の100円ショップから進化し、売れ筋分野でのパーソナルな需要にも対応した「ミニ専門店」の要素も備えて違いを打ち出す戦略にシフト出来ているのもPOSと発注システムによる在庫管理が思い切った商品開発にチャレンジ出来る体制を可能にしているからです。
③100円の制約を強みに転換するビジネスモデル
一般的な小売業に於いても、売れなければ価格を下げて処分する為、商品の売れ行きは需要と価格の関係性で決まりますね。ただ何度も言いますが、セリアは価格を100円に固定しています。一方で、他の100円ショップは200円、300円と価格帯を広げていて、特に為替の変動から利益を確保する為に値上げをしている所が殆どですが、セリアは頑なに100円均一を変えません。セリアは100円で売ることにこだわり、逆にそこを変える事によって詰めが甘くなると考えている訳です。
これは非常に筋肉質な考え方で、単価を変えないからこそ需要動向の分析を徹底して経験値として蓄積し、仮説と検証を繰り返すことで、絶え間なく新たな提案をし続け、売上高を伸ばしながらも失敗を最小限に抑える緻密な経営の実現に繋がっています。
河合社長は「値上げするくらいなら100円で売れるものを作るのが顧客にとっての一番の価値ではないか」と強調していますが、上述のぬいぐるみの関連小物など、「ぬい活」や「推し活」のなかには原価を抑えながらでも支持を集める商品が多数あって、さらには来店客の裾野を広げる効果もあります。
商品仕様を見直し、低原価商品の開発を進める中で、パッケージの簡素化なども定着させています。
例えば、傘やスリッパ、あるいは大きな土鍋などの元々原価が高かったが100円ショップの定番だったようなものは無くし、キャラクターのような商品のミニチュアやステッカーなどが増え、さらにプラスチックでも大型の製品ではなく、冷蔵庫の中の収納用品のような小型化したものをメインに展開したり、その辺は全てコストと需要を丁寧に見ながら商品供給していく姿勢に変わりはない訳ですね。
最初に書いた協業メーカーとの共同開発についても、POSの独自分析データを活かし、明確なターゲットに向けてタイムリーな新商品開発を実現しています。
共同開発品、現在は、PBが10%と、30%程度は専売商品(メーカー商品であるが同社のみで販売している製品)で、これらの売上比率を高める中で、毎月入れ替えることで、集客力を引き上げている訳です。
その為に、POSの情報を取引先とも共有して一緒に検討しています。そうすると長期的にWinWinの信頼関係も築けるので、デザインや色などの商品そのものだけでなく、産地を変えたり、どう原価改善できるか、と言った商品開発の肝の部分まで、その場しのぎではなく、一緒に知恵を出し合える訳です。
無駄な発注を抑える事が出来るということは、過剰な在庫を持たないという事ですから、コレ、FCFの運転資本の圧縮に繋がります。在庫の圧縮は如何にフランチャイズバリューの源泉であるFCFを最大化するか、資本効率性を上げるか、のカギになります。
100円ショップ基本のキとして、何故安く販売できるかの理由は、大量仕入れの現金払い、返品不可のルールなどで仕入れ値、原価を押さえ、粗利を高くしている訳です。
同社の商品は、仕入れ先のメーカーの多くが原材料などを海外から調達しているため、円安は原価を押し上げる要因になりますが、セリア自体は全て円で仕入れていますから、直接影響を受けるのは取引先です。
同社は需要をしっかり見極めている、対する競合は、100円の商品でこういうものが出来なくなったから、新たな100円の商品を作るのではなく、かなり安易に価格を上げ、300円や500円までにも行ってバラエティーショップ化しているので、スタンスが全く違うのです。インフレが加速してきた2023年以降は特にその競争優位性が一気に強まり、顧客の行動変化が出てきてています。
これは、以前参入障壁の中の⑦政府の政策を何故あまり高く評価しないか、の説明に通じますね。
真の参入障壁=永続的に企業価値を創出する競争優位性は、オープン且つ公正な競争環境の中で、企業自らの努力、創意工夫によって生み出されるものなはずなので、⑦は自主的・主体的な競争優位性の確立とは言え無い、だから『継続性』を感じられないと言いましたが、自ら難題に挑む気概を持つ意欲旺盛な人々、厳しい経営環境を乗り越える事を選んだ企業の方が、必ず高い価値を創造しています。セリアも敢えて自ら制約条件を厳しく課すことで高いバリューを創造しようとする姿勢を貫いたからこその勝機が生まれた訳で、これは高く評価すべきだと思います。競争優位性としての価格決定力の逆のメリットともいえます。
一方で、例えば価格が高く設定出来なくてもコスト競争力がある企業になり、投下資本を小さくする、或いは、⑥の経験曲線効果、経験を積む事で、作業効率化による労働生産性の上昇を達成出来、1単位当たりのコストが低くなる、という事と合わせて、さらに高い利益に結び付ける事が出来ます。
セリアは毎月商品を投入しているので、当然確実に売って回転率を高め、売り場のスペースを確保しなければなりません。
コンビニなど通常の小売店で売れないものは、メーカーに返品を行う事が出来ますが、100円ショップは、返品をしない約束のもとで仕入れ値を下げるなどしていますので、商品が売れなかった場合の損失は自社で被らなければならないということです。
在庫をバックヤードに積んでおけばスペースの無駄で資本効率が落ち、資金繰りも悪化します。資金繰りを向上させ在庫管理を合理化し、確実に売れる品揃えをする、その為のシステムな訳ですね。
特に2026年3月期の経営テーマは「業務のデトックスに取り組む」としており、現在は3000~4000店に増加しても対応が可能な進化した社内の業務プロセス、商品の発注や店舗の在庫の最適化、サプライチェーンに於ける情報共有などは、その程度の店舗数に増えても問題はないように構築されているとしています。
しかし、セリアの目標店舗数は6000店舗(現在、100円ショップ全体で9000)で、それを目指す上では古くからある非効率な社内業務プロセスを改善していく必要があり、例えば紙ベースの経費精算の電子化や、毎年の新規出店の際の各種手続きに向けた書類作成などの事務作業負担、これは新規出店に向けて新しい取引先との交渉をする時間がとりにくくなる「不」を生んでおり、早期に簡略化して改善し、さらに社内向けに出店候補地を増やすための支援ツールも開発しています。
また同じく店舗にはセルフレジを積極的に導入しています。2025年9月現在で導入台数は4075台、セルフレジ利用率は43%と全国的に高まっています。
セルフレジ導入で機械費用、決済手数料、そして設備投資と減価償却費が増加しますが、従業員の負担軽減、商品陳列効率向上による増収効果、現金管理の手間軽減、店舗人件費の低減効果が見られており、インストアオペレーションの効率化によって営業利益率も上昇しています。
④価値創出モデル構築に不可欠な店作り
直近2025年3月期末時点で、店舗数は2037、純増は51と特に多くはありませんが、現在不採算店とのスクラップ&ビルド(2024年をピークに徐々に度合は減少)を積極的に進めており、出店・退店ともに非常に数が多くなっています。そして、直営店が2002と全体の98.28%、この比率は過去一貫して増え続けています。FCは35店舗のみです。
FCについては何度も御話してきた通り、セリアにとって直営店をメインにする重要性は、スターバックス(顧客に寛げる空間を提供し、顧客回転率を意図的に落とすような店舗運営を行うため)と同じように、フランチャイジーに任せることによって(スタバのブランドだけを利用して集客を図り、顧客回転率を上げるような)店舗運営がブランド価値を毀損する方向に行くのを回避するためというのが第一です。
POSを入れたのが2004年、発注システムを内製で自社構築したのが2006年、そして、最適解の新デザイン店舗を開発したのが2007年、「カラー・ザ・デイズ(日常を彩る)」のコンセプト、店内をパステル調に統一し、余裕を持って陳列させる形によって他社との差別化を図ることが非常に重要だからです。
店舗形態は、所謂商業施設の中にあるインショップ型とロードサイド型がありますが、当然インショップ型の方が集客力は高いですね。特にセリアの店舗あたり売上高の高さ、これはキャンドウやワッツなどと比べて約3割高いですが、その集客力が評価され、出店要請が増加してきたことがあり、施設の来店客や全体イメージに合わせるべきインショップ型の増加もColor the daysを開発した理由でもあります。
商業施設のテナント料は基本的に歩合制賃料ですから、集客効果の高い店を誘致したい、特に2014年前後から、同業他社の契約切れに伴う出店要請が増加傾向になってきて、商業集積地全体への拡張効果を考えた時に、施設側のエコシステムに於いて、優位な企業が出店機会も増加して行く流れに乗ってきた訳です。
同社がColor the daysを開発して展開を大きく進めた理由の第一は、上述したような行動変容、つまり、100円ショップに来店する顧客の消費行動が、かつての衝動買いから目的買いに変化していることをPOSシステムのデータから把握したからで、商品の差別化をこの変化に対応する為にさらに鮮明にすべきという判断がありました。
女性視点の内装、商品陳列を施し、女性の支持が高い商品の構成比を増加させた訳で、従来型100円ショップの圧縮陳列を見直し、余裕のある目的の商品を探しやすい店舗を設計したのですから、直営店の必要があります。
そして、このビジネスモデルは或る意味ストック効果をもたらします。目的買いにぴったりと合致した客は、一度来店するとリピートの固定客になりやすく、客単価も上がる傾向にある訳です。新店舗を開店すると、その周辺からその店舗に来客する固定客が新たに誕生し、期間経過に伴い積み上がることが確実に見えています。これは他の100円ショップでは見られないですね。
店舗あたり出店費用は40百万円程度で、基本な内装費用のみですが、インフレで上昇している改装コストも、什器を金属製からプラスチック製にするなどの創意工夫によって抑えています。
店舗はパートおよびアルバイト中心の運営体制を構築していますが、出店数の制約は金額や人材というよりも、出店候補地の有無にあって、100円ショップの商圏は人口2万人と考えられますが、今後の急激な環境の変化による出店の機会を逃すことがないよう準備をしており、中期的な出店目標を達成するための十分な投資余力を有しているといえます。主には他社のシェアを獲得することを中心に、出店ペースを見込んでいます。
⑤ローエンドの対象市場定義型モデルによる価値創造
参入障壁と、それを強化するための戦略を確認しましたが、それを如何に最大限に引き出し、持続させていくか、戦略的な仕組みを複層的に構築出来るかがカギです。
このために必要な価値創造のビジネスモデルですが、セリアは、ローエンドの対象市場定義型です。
対象市場定義型で価値創造するポイント、一つは既存の業態、この場合は100円ショップですが、その既存業態が成熟して飽和状態になって業界内での地位の変化が起こりにくい状態になっている前提があります。
例えばそれがアパレルやメガネ、家具のような非効率で高コスト体質、旧態依然の仕組み温存による高利益の享受がまかり通っていたりすれば、まずはSPAのように徹底した低価格で新規参入してくるカテゴリーキラー、ユニクロやJINSやニトリなどの出現によって、一気に業界構造を壊す方向に行ったりしますが、100円ショップは価格では自由がありませんからアプローチが異なります。
対象市場定義型というのはローエンドではあっても価格や品ぞろえと言った同じ土俵で勝負する訳では無い、全く異なるアプローチで潜在的に有ったニーズから新たな市場を創造するモデルです。
まさにセリアがそうですね。DIYの手作り素材や女性向けの店舗づくりにアンバンドリングで絞り込む事で食品などは捨てる、さらに高い原価でコンセプトにも沿わないモノは捨てる、それによって価値が創造されているのです。
そこで顧客ロイヤリティを引き出すソリューションを沢山提供し、商品力という参入障壁を最大限に活かして引き出す為のPOSというツールによる分析と発注、さらには協業メーカーとのエコシステムをベースとした商品開発、そして店づくりで圧倒的に高めていく、これが同社のビジネスモデルです。
⑥最終バリュエーション
説明してきた通り、経営環境の変化、一般的には逆風をむしろチャンスと捉え、制約を逆に成長と優位なポジショニング確立の糧としてきた同社の多様化ニーズを捉える商品開発力は益々強化され、オペレーションの効率化も一層進む中で、戦略的出店によるシェアの拡大が加速すると予測しますが、特に6000店という目標は、今の出店ペースで行けば50年近くかかってしまう計算のため、社長も仄めかしていた通り、複数出店案件が見込める企業との関係強化がどこかで発表されて「巨額の投資」によって、さらに高い成長ステージに乗せていく局面がどこかで出てくるだろうとは思っています。
その際にはまた数字の再考察と検証を行う必要が出てくるでしょうが、当面はやや上方修正した安定成長を継続すると想定して数字を作りました。
前回の2024年3月期で作ったバリュエーションは、5年間をやや逆風に寄せたFCF成長率を想定しましたが、今回はEVAのCAGRに近い12%としました。
リスクフリーレートは2.5%と高めに設定しましたが、セリアのβはマイナスなのでCAPMのWACCは非常に低すぎ、ROEでも低いので、少し保守的に資本コストは5.5%、合わせて永久成長率は4.2%としています。
向こう5年の売上と営業利益の予測も作ると、まず新規出店は今期は会社予想通り、50店舗、次の2年を60店舗、残り2年を70店舗とし、店舗当たり平均売上が2027年以降2.5%づつ増える想定としました。
2025年3月期の限界利益率は約13%ですが、2027年以降は若干保守的に11%で計算してザックリFCFを算出すると、ほぼ(FCF成長率12%の)数字と合致します。
以上。
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では、第2弾へ
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