村上世彰氏および野村絢氏らの研究
A:本日は旧村上ファンドとも総称される、村上世彰氏らについて教えてください。
R:村上世彰氏はもともと通商産業省(現経済産業省)の官僚だった。1999年に退官後、村上ファンド(M&Aコンサルティング)を設立。アクティビストとして活動していた。2006年に証券取引法違反容疑で逮捕。シンガポールに移住後、2010年代に投資活動を再開。村上氏らとは、長女の野村絢氏や、多数の法人(レノ、南青山不動産、シティインデックスイレブンス、エスグラントコーポレーションなど多数)を指す。グループの家系図はかなり複雑で、外部から全貌を把握することは困難。
A:最近は、野村絢氏が目立つようになってきています。
R:野村絢氏は今や日本最大の個人投資家とも評されている。野村氏は「投資先との基本的な対話は私が担うことが増えてきた。社長との面談になると父が出向くことも多い。父個人は2006年に証券取引法(現・金融商品取引法)違反容疑で逮捕されてからほとんど投資していない。父とは上司部下ではないので対等に意見を言い合う。投資手法はすべて父から学んだ」と、2025年6月24日付の日本経済新聞で述べている。
A:野村氏が個人で保有または保有していた日本企業も多数に上ります。
R:三井住友建設(2025年12月上場廃止)、フジ・メディア・ホールディングス(4676)、アルプスアルパイン(6770)、新光商事(8141)、平和不動産(8803)、日本特殊陶業(5334)、三井松島ホールディングス(1518)、三井住建道路(1776)などへ投資実績がある。
A:村上世彰氏らの運用資産残高は数千億円と見られています。
R:いまはすべて自己資金。そのため、村上世彰氏や野村氏は日本有数の資金規模を誇る個人投資家であり、自己資金のみで投資する「ファミリーオフィス」として活動している。出資者の意向を伺う必要がないため、投資収益やエグジットまでの期間を気にする必要もない。
A:他のアクティビストには資金の出し手が存在しています。
R:資金の出し手となるアセットオーナーの監視が働かないため、村上氏らは自身の気の済むように投資ができる。この点に関して野村氏は「思い切り稼ぎたい、という気持ちはあまりない。大株主になり会社を変えて良くしていく過程が楽しいから投資している。他人のお金を運用していたらもうけないといけない。我々は利益を度外視しても問題はないので、業績が不透明でリターンに確信が持てなくても、正義感に駆られて投資し、物を言うときがある。京セラ(6971)などでは役員任期や政策保有株について指摘した。そんなに洗練された投資家でもなく、日本人の親子が自分たちの納得するように投資しているだけだ」と2025年6月24日付の日本経済新聞で述べている。
R:「村上ファンド」と言われていた時代は、欧米の機関投資家からの資金を預かるファンド・マネジャーだった。上述のとおり、村上世彰氏は2006年に証券取引法(現・金融商品取引法)違反容疑で逮捕され、その後はしばらく投資の世界から離れていたものの、いまでは日本を代表するアクティビストであり、かなりグレーゾーンを攻めている。そのため、真っ当な投資家と言えるのかは疑問である。
A:村上氏らは複数の法人を駆使して株式を共同で取得し保有していますが、これはなぜでしょうか。
R:金融商品取引法は10%以上の株を持つ主要株主が6カ月以内に株式を反対売買して得た利益は企業側が返還を求めることができるとしている。法に抵触しないよう、一名義で主要株主になることは避けていると見られている。
A:投資手法も変わってきています。以前は必要以上に資金をため込む企業に自社株買いや配当を求めることが多かった印象です。
R:村上ファンドとして活動していた頃は、資本効率を意識した経営が上場企業にまだ浸透していなかったこともある。但し今も、村上氏はPBR1倍に強いこだわりをみせ、それを下回る企業に対しては厳しい姿勢をとっている。
A:ファンド・マネジャーから個人投資家に変わったことで、どのような変化が見られますか。
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