【三通貨パリティで読むFX ─ 日常の“歪み”を稼ぎに変えるTriParity分析】第4回:歪みを数字にするーParity GapとZスコアで"行き過ぎ"を測る
三通貨パリティで読むFX ─ 第4回「歪みを数字にする」
前回は、3通貨を1つの三角形(Triad)として扱い、「本来こう噛み合うはずだ」という三通貨パリティの考え方を見てきました。 第4回では、その“噛み合いのズレ=歪み”を 数字とライン にまで落とし込み、 「どこから入って、どこで終わるか」 をはっきりさせていきます。
今回の内容は、以下のYouTube動画でも図解つきで解説しています。先に動画で全体像をつかみたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 第4回 歪みを数字にする ─ Parity GapとZスコアで“行き過ぎ”を測る(YouTube)
本稿では、 Parity Gap(パリティギャップ) と Zスコア を使って、 「なんとなく高い/安い」という感覚を「Z=2.3」といった数字の根拠に変えるプロセスを整理します。
1. 「なんとなく歪んでいる」を卒業する
多くのトレーダーは、チャートを見ていて次のように感じたことがあるはずです。
- 「さすがに行き過ぎだろう」
- 「これは戻りそうな形になってきたな」
- 「独特なクセをついているな…」
つまり、“感覚としての歪み”は何となく掴めています。 しかし、実際にエントリー条件に落とし込もうとすると、
- どれくらい動いたら「行き過ぎ」と言えるのか?
- どの程度まで戻ったら「歪みが解消された」と言えるのか?
といった点が 言葉では説明しづらく、ルール化もしづらい のが現実です。 感覚だけでは、「どこで入って、どこで逃げるか」が決まりません。
2. 3通貨パリティの「本来の噛み合い方」をおさらい
まずは、三通貨パリティの“基準線”をもう一度だけ整理します。
ユーロ・ポンド・ドルの3通貨があれば、
- EURUSD(A/B)
- GBPUSD(B/C)
- EURGBP(A/C)
という3本のペアが作れます。
この3本には、本来つぎのような関係式が成り立つはずでした。
EURUSD ÷ GBPUSD ≒ EURGBP
つまり、 「3通貨の本来の噛み合い方」を関係式で定義しておく ことで、 そこからどれだけズレたかを測る準備が整います。
3. Parity Gapとは何か? ─ 「理論上の整合」と「現実」の差
ここからが本題です。
TriParityの考え方では、次のステップで「三角関係のズレ」を取り出します。
- A/B, B/C, A/C の3ペアを取り、
- 「A/B × B/C」から理論上のA/Cを計算し、
- それと 実際のA/Cレートの差 を取ります。
この「理論的にこう噛み合うはず、という値」と
「実際のレート」とのギャップこそが Parity Gap(パリティギャップ) です。
数式で表すと、ログを使って次のように書けます。
Gapₜ = ln(A/C) − { ln(A/B) + ln(B/C) }
- 3本が完全に噛み合っていれば → Gapₜ ≒ 0
- どこかのペアが“行き過ぎ”ていれば → Gapₜ がプラスまたはマイナスに大きく振れる
要するに、 「3通貨の三角関係全体としての歪み」を1つの数値にまとめたもの が Parity Gap です。
4. Gapのプラス・マイナスは何を意味する?
Parity Gapは、符号(+/−)にも意味があります。
- Gapₜ > 0 のとき
- 理論値に比べて「買われ過ぎ」の方向に歪んでいる。
- EURUSD / GBPUSD / EURGBP のTriadなら、
ユーロ買い/ポンド売り側に歪んでいる イメージです。
- Gapₜ < 0 のとき
- 理論値に比べて「売られ過ぎ」の方向に歪んでいる。
- 同じTriadなら、
ユーロ売り/ポンド買い側に歪んでいる という解釈になります。
どちら向きに偏っているのか──その向きと強さを、Gapのプラス・マイナスが教えてくれます。
5. 「生の差分」の問題点
ただし、Parity Gapを そのままの大きさで比べる と問題が出ます。
- ゴールド(XAU)のようにボラティリティが大きいTriadでは、
生のGapの数字も自然と大きくなりやすい。 - 一方、EURGBPのようにおとなしいペアを含むTriadでは、
小さな数字でも十分“異常”かもしれない。
このように、単純に Gapの大きさだけ を見ていても、
Triad同士で「どちらが本当に異常か」は比べられません。
そこで登場するのが Zスコア です。
6. なぜZスコアにするのか? ─ 「その歪みは、本当に“異常”か」
Zスコアは、一言で言えば 「今の歪みが、過去と比べて標準偏差の何倍分外れているか」 を表す指標です。
イメージとしては、次のようなステップです。
Step1:過去のGapの「平均」と「ばらつき」を測る
- あるTriadについて、一定期間のGapₜ(t=1,2,3,…)を集めて、
- 平均値(μ)
- 標準偏差(σ)
Step2:現在のGapが、その平均からどれくらい離れているかを見る
- 現在のGapを
Gap_nowとしたとき、
Z = (Gap_now − μ) ÷ σ
- Z ≒ 0 → 「ほぼ平均どおり、歪みは平常運転」
- Z ≒ +2 ~ +3 → 「過去の統計から見て、かなり買われ過ぎ」
- Z ≒ −2 ~ −3 → 「かなり売られ過ぎ」
このように、Triadごとのクセを“標準化する” のがZスコアの役目です。
7. Zスコアの共通物差し
Zスコアにしてしまえば、
- ゴールドでも
- ユロポン(EURGBP)でも
「Z = ±2」と表示されていれば、意味は同じ です。
- −2.0 付近:かなり売られ過ぎ
- +2.0 付近:かなり買われ過ぎ
- 0 付近:平常運転
こうした 共通の物差し によって、「この歪みは本当に異常か?」を客観的に判断できます。
8. Distortion Line(歪みライン) ─ 「歪みのZスコア」を1本のラインにする
TriParity分析をシステム化したツール(FX Distortion Catcherなど)では、 このZスコアを Distortion Line(歪みライン) としてチャートに描きます。
- 横軸:時間(バー)
- 縦軸:Zスコア(歪みの大きさと方向)
オシレーターのような形で、
- 上側(+)に大きく振れたら → 「買われ過ぎ/上方向に行き過ぎ」
- 下側(−)に大きく振れたら → 「売られ過ぎ/下方向に行き過ぎ」
- 真ん中の0ライン付近に戻ってきたら → 「歪みが解消されつつある(回帰)」
こうして “歪み → 回帰(Distortion → Reversion)” の流れが、1本のラインで見えるようになります。 ここが、ボリンジャーバンドやRSIなどの “1ペア完結”の行き過ぎ指標 と決定的に違う点です。 Distortion Lineは 3通貨の三角関係から導かれた行き過ぎ指標 なのです。
9. 「どこからがエントリーゾーンか?」とタイミングの重要性
Zスコアまで落とし込むと、いよいよトレードルールに近づきます。
Rule 1:|Z| が一定以上になったら「行き過ぎゾーン」
- 例:|Z| ≥ 2.0 で、はじめてエントリー候補として見る。
Rule 2:Zが0方向へ向き始めたところを「回帰開始」とみなす
- 例:+2.0 以上から +1.5 → +1.0 と戻ってきた局面でエントリーを検討。
この 「行き過ぎゾーン」×「回帰開始」 が、 いわゆる “おいしい区間(The Tasty Zone)” です。
大事なのはタイミングで、 Zが伸びきって、0方向へ向き始めたところを捉える ことがポイントです。 ピーク直前で焦って入るのではなく、 「待って…今よ」 というタイミングを、Zラインで客観的に計ります。
Zの具体的なしきい値(1.5なのか2.0なのか2.5なのか)は、 Triadや時間軸によって調整の余地があります。 このあたりは統計ダッシュボードなどで検証しながら、 勝率やPFとのバランスを取ってチューニングしていきます。
10. 「どこで終わりにするか?」 ─ Z Exitという発想
“歪みトレード”で大事なのは、入り口だけではありません。
- 歪みが解消されたら(Z ≒ 0)、優位性はほぼ消滅 します。
- 欲張ってポジションを握り続けると、逆方向の新たな歪みに巻き込まれるリスクが高まります。
そこでTriParityの実装例では、
- Zが0付近に戻ってきたポイント を
- 「Z Exit」としてラベリングし、1つの出口候補にする
という考え方を採用しています。
- エントリー:Zが閾値(例:±2.0)を超え、回帰し始めた局面
- エグジット候補:Zが0近辺(あるいは定義したゾーン)に戻ってきたところ
- それでも戻らない場合の保険:SL(損切り)やTimeout(時間切れ)
「歪みの始まり」と「歪みの解消」を、どちらもZスコアの世界で扱う――これがZ Exitの発想です。
11. まとめ ─ 言葉から数字へ
最後に、今回の流れを一気にまとめます。
- TriParity
- 3通貨の「本来の噛み合い方」を関係式で定義する。
- Gap(Parity Gap)
- その関係式からズレた分=三角関係そのものの歪み。
- Z-Score
- その歪みが、過去と比べて標準偏差の何倍分外れているか。
- Distortion Line
- Zスコアの推移を1本のラインとして可視化。
- Trade
- Z Entry / Z Exit を使って、「行き過ぎ→回帰」の区間だけを狙う。
つまり、
「なんとなく高い(安い)」という感覚を、「Zスコア2.3」といった数字の根拠に変えるプロセス──
それが今回のテーマでした。
12. 次回予告 ─ 先導レッグへ
次回は、この「ZとDistortion Line」の上に、
- どのペアが歪みに一番寄与しているのか?
- 誰が本当に相場を押しているのか?
という 「先導レッグ(ドライバーレッグ)」 の考え方を重ねていきます。
同じTriadの中でも、どのペアで建てるのがもっとも“筋の通ったリスクテイク”なのか――
そのヒントを、具体的に見ていきましょう。
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