【三通貨パリティで読むFX ─ 日常の“歪み”を稼ぎに変えるTriParity分析】第2回:2通貨だけの分析で“構造”が見える? ─ 1ペア分析の限界
前回は、「相場は理論どおりには動くはず?」「毎日どこかで小さな“歪み”が生まれている」というところまでご一緒しました。
今回は、その“歪み”を1つの通貨ペアだけ見て追いかけると、どんな限界にぶつかるのか──
そこから整理してみたいと思います。
1. 多くのトレーダーがやっている、典型的な「1通貨ペア分析」
まずは、よくあるチャートの使い方から振り返ってみましょう。
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左上:USDJPYの15分足
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右上:同じUSDJPYの1時間足
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下段:RSIやストキャス、MACDなどのオシレーター
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必要に応じてボリンジャーバンドや移動平均線を重ねる
こんな構成で、
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「短期足でタイミングを測りつつ」
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「上位足の方向性を確認して」
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「オシレーターで行き過ぎをチェック」
というのが、もっとも一般的な1通貨ペア分析のスタイルではないでしょうか。
このやり方自体は、決して間違いではありません。私自身も長く使ってきましたし、今でも参照します。
しかし、「相場の歪み」を本気で取りに行く、という観点で見ると、1通貨ペア完結の分析には、どうしても埋められない“盲点”が出てきます。
2. 1通貨ペア完結の分析だからこそ見えなくなる3つのこと
1つの通貨ペアだけを見ていると、次の3つが見えにくくなります。
① 「誰が本当に相場を押しているのか」が分からない
たとえばUSDJPYが急上昇したとしても、
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USDが強くなっているのか
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JPYが弱くなっているのか
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それとも、両方が同時に動いているのか
1通貨ペアだけでは、本当の“主役”が判別しづらいですよね。
同じ時間帯に、たとえば
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EURUSDも上昇している
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でもEURJPYはヨコヨコ
という状況なら、
「あ、これは“ドル高”が主役だな」
と分かるかもしれませんが、
その判断も結局は複数チャートを“感覚的に”見比べた印象でしかありません。
② 他通貨との「関係性(構造)」が分からない
テクニカル指標は、基本的にその通貨ペアの中で完結した情報しか見ていません。
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ボリンジャーバンドは、その通貨ペアの価格の標準偏差
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RSIやストキャスティックスは、その通貨ペアの上げ下げの強さ
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MACDは、そのペアの移動平均線同士の関係
つまり、「USDJPYの世界の中の行き過ぎ」しか見ていないのです。
しかし実際の為替は、
USD・JPY・EUR・GBP・AUD…といった通貨そのものの“綱引き”の結果としてレートがついています。
1通貨ペア完結の指標だけでは、
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「いまEURとGBPのどちらが本当に買われているのか」
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「クロス円全体の動きに対して、この通貨だけがおかしな位置にいるのか」
といった “相対的な歪み” は、どうしても見えにくくなります。
③ 歪みが“なぜ”生じたのか、原因を特定しづらい
前回お話ししたように、市場の歪みは
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指標のタイミング
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実需フロー(仲値・Fixなど)
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アルゴの偏り
など、さまざまな要因から生まれます。
しかし、1通貨ペアだけを見ていると、
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「この下落は、NZDだけが売られているのか?」
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「それとも、ドルが全面高になっているだけなのか?」
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「別の通貨が動いた結果として、間接的に動かされているだけなのか?」
といった “構造的な理由” までは分かりません。
結果として、
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“強そうに見えた通貨”を買ったら、別の通貨の巻き戻しに飲まれて負ける
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“売られすぎに見えたペア”を逆張りしたら、他通貨主導のトレンド継続で踏まれる
といった「見えない背景」による負け方が増えてしまいます。
3. 「複数ペアを並べれば解決する」は本当か?
こうした限界を感じて、チャートをどんどん増やしていく方も多いと思います。
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上段:ドルスト(EURUSD, GBPUSD, AUDUSD…)
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中段:クロス円(EURJPY, GBPJPY, AUDJPY…)
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下段:インデックスや金・株価指数 など
もちろん、これによって“ざっくりとした相場観”はつかめるようになります。
しかし、実際にエントリーしようとすると、こんな感覚に陥りませんか?
「NZDが弱そうだけど、本当にNZDだけの話なのか?」
「なんとなくEURが強い気がするけど、どのペアで入るのが一番いいのか分からない」
つまり、
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「NZDが弱い」「EURが強い」といった曖昧な印象レベルまでは分かる
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けれど、
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「どのペアで建てるべきか」
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「どれくらい歪んでいるのか」
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「どこまで戻れば“歪みが解消された”と言えるのか」
という、具体的なトレード判断に落とし込む指標にはなりにくいのです。
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4. 欲しいのは「構造レベルの答え」
ここまでを整理すると、私たちが本当に欲しいのは、
「今起きている動きは、どの通貨がどのくらい押している結果なのか?」
「それは、3通貨や複数ペアの“関係式”から見て、どれくらい歪んでいる状態なのか?」
「その歪みが均衡に戻るとしたら、どのペアで・どのあたりまで戻る可能性が高いのか?」
といった、「構造レベルの答え」です。
1通貨ペア完結の分析では、
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価格の動き
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ボラティリティ
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オシレーターの位置
といった “結果として表に出てきた値” だけを見ているに過ぎません。
そこに
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通貨同士の整合関係
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どのペアがどれだけ“歪みに寄与しているか”
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どこから“回帰が始まった”と言えるのか
といった “関係性の情報” を組み合わせることができれば、
同じチャートを見ていてもまったく違う判断ができるはずです。
次の章は「5. 「2通貨では見えない世界」をどうやって見るか?」ですが、この先はお手数ですが、「閲覧申し込み」をしてご覧ください。投稿内容を10分程度にまとめた動画もご用意しています。
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