【投資業界の闇】忖度で格付け甘くつけられるケースも
こんにちは、下山です。 「歴史は繰り返す」と言われますが、 ここ最近のメルマガでお伝えしているように、 「今の状況がリーマンショック前の状況と似ている」 と市場関係者の間でささやかれています。 そこで、どう似ているのか?ということをお伝えするため、 前回、前々回のメルマガではリーマンショックが起こった 歴史的背景を紹介いたしました。 読まれていない方もいらっしゃると思いますので、 おさらいとして、簡単にまとめておきます。 ※できるだけ丁寧にお伝えしますので 「お金がウラでどう動いているのか?」 興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。 ↓ 2003〜2004年ごろローン会社が、信用力の低い層に向けた 住宅ローン(サブプライムローン)に力を入れ始めます。 ローン会社というのは、日本でいう 「消費者金融」のようなイメージですね。 もちろん高金利でしたが・・・ 信用力の低い人にとっては住宅ローンを組んで マイホームが手に入るだけでありがたい話でした。 しかも当時アメリカで住宅価格が上昇していましたので 「いざとなれば住宅を売ってしまえばいい」 という安易な考えで 多くの人がサブプライムローンに飛びつきます。 一方でローン会社は貸付けた後、返済を待つことなく 投資銀行や証券会社などの金融機関に ローン債権を売却してしまっていました。 そしてローン債権売却によって得た資金を また信用力の低い人に貸し出す、 そんな自転車操業をしていました。 ローン会社は貸し倒れリスクを回避していましたので (実際には回避しきれていませんでしたが・・・)、 審査もどんどん甘くなっていきます。 また、ローン会社からローン債権を買い取った 投資銀行や証券会社は、それを 「住宅ローン債権担保証券(RMBS)」として証券化し、 投資家に売っていました。 というのが前回までの話ですね。 でも・・・、1つ疑問に思いませんか? 「住宅ローン債権担保証券」は 「信用力の低い人に向けたローン」が原資産になっています。 普通に考えて、危険だと思いませんか? もちろん、いろんなスタイルの投資家がいますので ハイリスクハイリターンを好み欲しがる投資家もいます。 でもやっぱり「危険なものからは手を引きたい」 と考えるのが一般的な投資家心理です。 ですが、たくさん買われました。 なぜ? 一見危険に思える「住宅ローン債権担保証券」は なぜ投資家に受け入れられたのか? というのが本日のテーマです。 ==================== なぜ投資家はリスクをおかして買ったのか? ==================== 投資家に買われた1つの理由は、 その「格付け」にあります。 「住宅ローン債権担保証券」は、 なぜか格付け会社によって 高い格付けがなされていました。 不思議ですよね。 その格付けが狂っていたことは 今となっては誰の目にも明らかですが・・・、 格付け会社に「安全です!」と太鼓判をおされていたので やっぱり買われていくんですね。 では、具体的にどのような根拠で高い格付けが なされていたのでしょう? たとえば100億円分の住宅ローンがあったとして、 投資銀行がそれを原資産として 証券化することを考えたとします。 この時に考慮されるのは 「そのローンがどれくらいの確率で貸し倒れるのか?」 ということです。 仮に、過去の統計データをもとに、 「100億円分の住宅ローンのうち、 70億円は、ほぼほぼ100%の確率で返済されるだろう」 となったとします。 そうすると、この70億円分の住宅ローンを原資産として 発行された証券にはAAAの格付けが与えられます。 こちら「シニア」と呼ばれます。 で、“残りの30億円分の住宅ローンを 原資産として発行する証券”は、「シニア」より リスクの高い証券として「メザニン」「エクイティ」 という順番でランク付けされます。 もし住宅ローンが焦げ付いた場合、 最悪の被害を受けるのが「エクイティ」というわけです。 さて、あなたなら 1:「シニア」 2:「メザニン」 3:「エクイティ」が 用意されていた場合、どれを選びますか? おそらく大半の方が 一番リスクの低い「シニア」を選ぶでしょう。 やはり、「メザニン」は危険で手が出しづらいですよね。 でも、証券発行元は「メザニン」も売りたいわけです。 (「エクイティ」は一般的に投資会社が保持していました。) で、どうしたかというと、 「メザニン」を他のローン債権などと混ぜてしまったんですね。 いわば、腐った肉を他の肉と混ぜてハンバーグ作ったら 腐った肉の味なんて分からなくなるでしょ? みたいな。 「メザニン」を 自動車ローンや消費者ローンなどの債権と混ぜて再合成し、 『合成債務担保証券 (CDO)』として販売しました。 これ、安全だと思いますか? 理論上は安全とされたのです。 たとえば 「住宅ローン」 「自動車ローン」 「消費者ローン」 焦げ付く可能性がそれぞれ30%で、 それぞれのリスクが独立しているのならば、 この3つを掛け合わせてしまえば 最終的なリスクは、0.3× 0.3 × 0.3 = 0.027 つまり「2.7%」になるよね、という理論です。 それぞれ30%だったリスクは混ぜると約3%に落ちる、 ということです。 一見、正しく見えるかもしれません。 確かに、 「住宅ローンが焦げ付いても、自動車ローンや 消費者ローンは関係ないから、リスクは低くなる」 と言われたら、 「そうですね」 と納得してしまうかもしれません。 でも、 この理論が正しくなかったことは歴史が証明しています。 結局、腐った肉は他の肉と混ぜても 腐った肉でしかなかったということです。 ずさんな格付けに多くの投資家が踊らされてしまう そんな悲しい現実がそこにはありました。 ==================== 忖度で格付け甘くつけられるケースも ==================== 話をまとめましょう。 投資家にとって格付けは無視できない重要な指標ですが、 「住宅ローン債権担保証券」は 1:「シニア」 2:「メザニン」 3:「エクイティ」 とランク付けされ、 「シニア」には高い格付けが付与されました。 低い格付けの「メザニン」も 他のローンなどとごちゃ混ぜにされ、 『合成債務担保証券 (CDO)』として 高い格付けを獲得した状態で売り出されました。 格付けが低かったはずの「メザニン」が 他と混ぜれば格付けがアップする、 そんな筋の通らない理論がまかり通っていたわけです。 こんなことが許された理由として、 「格付け会社がCDOを売り出す過程に積極的に参加していた」 という話があったり、 「甘い格付けをすることで格付け会社が収益を得ていた」 とも言われています。 今回リーマンショックにまつわる内容をお伝えしましたが、 ・格付けの過信は危険 ・分散投資は必ずしも安全ではない といったこともご理解いただけていれば幸いです。 それでは本日も最後まで ご覧くださいましてありがとうございます。 次回はやっと本題です。 これまでの話を前提としてリーマンショック時と 現状を比べて何が似ているのか?何がヤバいのか? という話をお伝えいたします。 下山敬三
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