リーマン再来に備え知るべき「ローン証券化の闇顔」
こんにちは、下山です。
「今の状況がリーマンショック前の状況と酷似している」
そんなことが市場関係者の間でささやかれていますが、
前回のメルマガでは、
「本当に今とリーマンショック前の状況が似ているのか?」
ということを検証するため、リーマンショックが起こった
歴史的背景についてお伝えしました。
簡単におさらいすると、2003年ごろから
アメリカで信用力の低い人に向けたサブプライムローンが拡大し、
多くの人々が住宅価格の上昇を拠り所に
危険な住宅ローンを組んでしまったことが事の発端です。
「お金ないけどどうせ家の価格上がるから大丈夫!
いざとなれば家を売れば良いし。」
という楽観的な考えの元、低所得者の人々も
返済のあてが無いローンを組み始めます。
そんな中、2006年に住宅価格の上昇が止まり、
次々とローンの返済が滞り、
リーマンショックにつながっていく、という話でした。
ただ、市場を狂わせたのは
無謀なローンを組んだ人のせいだとは言いきれません。
利益を徹底追求して
多くの人に無謀なローンを組ませたローン会社こそ、
リーマンショックのそもそもの原因を作った
張本人とも言えます。
ローン会社と聞いても
イメージが湧きにくいかもしれませんが、
信用力の低い人々に高金利でローンを提供する
日本の「消費者金融」を思い浮かべていただくと
イメージしやすいかもしれませんね。
では、その消費者金融的なローン会社は
リーマンショック前、何をしたのか?
本日は、リーマンショックが起こる前に
ローン会社が低所得者にローンを組ませた裏で
何をしていたのか?ということについて
お伝えさせてもらいます。
全てを細かく解説することはしませんが、
全体的な流れを簡潔にご理解いただけるよう
お伝えいたします。
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リスクを回避するローン会社
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サブプライムローンは
信用力が低い人に向けたローンですから、
返済が滞るリスクが高いことはローン会社も、
もちろん承知の上です。
ですからローン会社は、ただ指をくわえて
ローンが返済されるのを待ったりしません。
ローン会社は将来、低所得者から
返ってくるお金を受け取る権利、つまりローン債権を
証券会社や投資会社など金融機関に売却してしまいます。
貸し倒れのリスクを手放していたわけです。
ちなみに、
「ローン会社が、ローン債権を売却していた」
と聞いて、もしかしたら
イメージしづらいかもしれませんが・・・
ローン会社は
サブプライムローンとして貸したお金を
返済してもらう権利を持っていますよね。
これは1つの「資産」と言えますが、単純にその資産を売却した、
と捉えてもらえればイメージしやすいかと思います。
では、ローン債権を売却された投資会社などは何をするのか?
もちろん、投資会社もローン債権を
そのまま持ち続けるわけではありません。
そのローン債権を「証券化」します。
証券化の意味が分かりづらいかもしれませんね。
ローン債権を売却された投資会社は
その債権が将来的に生み出す
キャッシュフローへの信用力を裏付けとした
「住宅ローン債権担保証券(RMBS)」を発行します。
また小難しい単語が出てきましたが・・・、
「住宅ローン債権担保証券」というのは
読んで字のごとく、
住宅ローンを担保として発行される証券です。
投資会社は
「住宅ローン債権担保証券」を発行し、
それを投資家に売ります、というのが一連の流れです。
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サブプライムローンは金のなる木
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これ、ローン会社としては
すごくおいしい状況だと思いませんか?
貸し倒れリスクから解放され、
しかもローンの返済を待たずに
再び貸したお金が手元に戻ってくるわけですから。
そしてローン会社は返ってきたその資金を
またサブプライムローンとして貸し付けます。
欲が深いですね(笑)
ローン会社はローン債権を売却し
貸し倒れリスクから解放された上で、
そこで得た資金を使い、
また新たな融資を行なっていました。
ローンを組ませれば組ませるほど、
ローリスクで儲かる、なんておいしいビジネス。
ローン会社としては
どうせ貸し倒れのリスクを負いませんので
ローンの審査もどんどん甘くなっていきます。
こうして
本当ならローン審査に通るはずのない人々が
続々とローンを組み始め、マーケットの爆弾が
ますます大きく膨れ上がっていきました。
ローン会社も、市場リスクがどんどん膨らんでいることは
薄々気づいていたでしょう。
でも「儲けられるだけ儲ける」という感じで
際限なくサブプライムローンが拡大していきました。
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まとめ
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話をまとめます。
ローン会社は、信用力の低い人に
高金利のサブプライムローンを組ませた後、
そのローン債権を投資会社などに売却。
投資会社はそのローン債権を証券化し、投資家に売却。
ローン会社は再び得た資金を使い、
再び信用力の低い人にサブプライムローンを組ませます。
信用力が低い人々にとっては
たとえ高金利でも住宅ローンを組めるだけで
ありがたかったんですね。
ここで、ローン会社と信用力が低い人々の
利害が一致し、爆発的にサブプライムローンは
拡大していき、それがやがてリーマンショックにつながった
という話です。
ただ、ここで1つ不思議に思いませんか?
「信用力が低い人に向けたローン」が
原資産になっている証券なんて
なぜ投資家は欲しがったのでしょうか?
例えばあなたが、
「消費者金融のローンが原資産になっている
証券があるんですけど、どうですか?」
と言われたらあなたは買いますか?
「怖い」と思うのが普通の感覚ですよね。
では、なぜ投資家は証券を買ったのか?
この続きは次回改めてお伝えします。
それでは本日も最後まで
ご覧くださいましてありがとうございます。
下山敬三
よろしいですか?