ネット業界から仮想通貨業界に自主規制を促す
2月7日に底をつけいよいよトレンド転換か、と期待されたBTCですが、テクニカル的な要所をクリアできずに失望売りが加速。逆にテクニカル上の下落サインを連発する形でダウントレンドに突入しました。
■テクニカル要因から安値に再チャレンジ
まずは長期的な目線から解説します。
日足でBTCを見ると、高値圏でしっかりしたダブルトップを形成しています。また右側の肩は昨年からの下落チャネルに上値を抑えられる格好で重なっているため、綺麗に下落のサインとなっています。このためBTCの中長期的な目線は下落方向にシフトし、しばらくは2/7につけた65万円を目指してジリジリと下げる展開を見ています。
■グーグル広告出稿禁止で売り圧力が加速
さて、このようなテクニカル要因からBTCは下落トレンドに突入しましたが、この売りを加速させた材料に3/14にグーグルの仮想通貨関連の広告出稿禁止が報じられた事が挙げられます。これはグーグルがadwords(広告サービス)の2018年6月からのルール改訂で、仮想通貨に留まらずあらゆる金融取引において検索ユーザーに投機的取引や詐欺につながる可能性のある広告を一切表示しないようにする自主規制になります。
このようにインターネット企業が広告を禁止したり検索のアルゴリズムを変更したりすると、世界のすべてがインターネットにつながっている現代では、中央機関が操業停止を命令するくらいのインパクトを企業に与えます。むしろ、公的機関の規制よりもインターネット上の規制の方が大きい、と言えるかもしれません。
これを受け、仮想通貨取引所などが新たに投資家、決済店舗を獲得するのが難しくなることから、通貨需要が減ることが連想され下落した、というわけです。
とはいえ、マーケットはすっかり無視していますが、この広告出稿ルールの変更にはちゃっかりと例外が用意されていて、「金融サービス当局からの認可を取得する」などの条件をクリアすれば、広告が出稿できるようになっています。したがって、日本では金融庁の認可を得ている業者にとっては、まったく無傷どころか、競合が減って広告収益率が改善します。つまり仮想通貨業界全体にとってネガティブなのではなく、ルールを守らない業者にはネガティブで、ルールを守る業者にとってはポジティブです。相場は都合の悪い情報をことごとく無視しますが、この材料は長い目で見ればむしろプラスの材料だと筆者は考えています。
Googleや、先んじて広告を停止したFacebookは、決して仮想通貨業界を潰すつもりはありません(むしろ今後積極的に参加すると思います)。彼らの真意は、国に任せる事なく、自らが社会インフラとしてビジネス面から仮想通貨金融のルール作りを国に代わって行おうとしているのです。むしろこれこそが、非中央集権時代の(国に任せない)ルール作りだと思います。仮想通貨にとっては大きな前進です。
■ドミナンスはBTC優位になりそう
とはいえ下落トレンドは下落トレンドですので、回復にはしばらく時間がかかるでしょう。その間に有益なトレードアイデアを一つ提案します。
規制報道を受けるとBTC市場は弱気になりますが、本来は規制が設定される事でBTCの基軸通貨としての確たる地位が裏付けられるため、ポジティブに働きます。ICOなどを締め出す全般規制は信用力と知名度の低いアルトコインにとっては不利に働く一方で、BTCにとっては公的機関のお墨付きが頂けるので有利です。このため、BTCの存在感が規制によって高まるわけです。それを裏付けるかのように、BTCのドミナンス(市場占有率)は回復を見せています。
これを踏まえれば、今はBTC/JPYでトレードするより、BTC買いアルトコイン売りのトレードに優位性があるでしょう。こういう発想の転換ができると突発的なニュースにも対応できるので、是非今後は意識してみてください。
■目先の下落はどこまで続くのか
BTC/JPYに関しては売りがとても強くしばらく下落が続きそうですが、筆者は下落目途を年初来安値の65万円付近から50週移動平均線が位置している72万円付近で考えています。
こういう時こそ冷静さが肝心です。
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【執筆者】
河田 西欧(カワダ サイオウ)
トレイダーズ証券市場部ディーリング課
スイス・ジュネーブ生まれ。慶應義塾大学卒。
世界各国を旅した経験から実体験に根ざしたファンメンタルズ分析は説得力がある。
学生時に学んだ行動経済学を活かし、市場参加者の心理的バイアスを理論的に分析しトレードに活かす。
趣味は将棋でアマ高段者の腕前。中盤の駆け引きは相場の次の一手を読む時にも活かしている。
「大衆は常に間違っている」が信条。
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