2016年第2四半期におけるゴールドの総需要は堅調~不確実性が増すマクロ環境に支え
1、不確実性が増すマクロ環境に支えられ、2016年第2四半期の総需要は堅調
ワールド・ゴールド・カウンシルは、2016年第2四半期のゴールド・デマンド・トレンドを発表した。
それによると、マクロ環境に対する投資家の懸念及び金価格の長期価格低下傾向が終わりに向かっているという見方を反映して、投資需要(特に ETF)が大幅に増加し、第2四半期の総需要は前年同期比で15%上昇した。
ー森田隆大のひとくち解説ー
マクロ政治経済・環境の不透明性、金融政策の手詰まり感、マイナス金利政策、英国の EU 離脱、トランプ旋風が止まない米国大統領選など、投資環境が激動している。
こうした環境において、投資の大原則は分散とリスクヘッジである。金が投資に果たせる役割は主に6つあるが(下記図表参照)、その全てが当てはまる投資環境になりつつある。このパーフェクトストームと言える状況が、金の投資需要を押し上げたのである。
2016年上半期の投資需要は、リーマンショック後を超え、半期として過去最高であり、投資需要はしばらく堅調に推移する可能性が高い。一方、投資需要の増加によってもたらされた金価格の急上昇は、宝飾需要及び中央銀行の購入にマイナス影響を与えた。
多くの需要家は、価格が落ち着くまで様子見の姿勢を取ったと思われ、金の三大需要家グループである、中国、インド、中央銀行の購入意欲が構造的に変化したわけではない。
テクノロジー(産業用)需要は、一昔前に比べて、価格が高騰した金をより安い材料に代替する動きを受け、ここしばらくは年3%ほど需要が低下している。
供給の方は、金価格の上昇に刺激され、価格弾力性が高いリサイクルが大きな伸びを示した。
2、密輸が示すインドにおける金需要の強さ
ロイターやインディアン・エクスプレスなどの地元メディアによると、今年に入り、インド金市場において密輸が急増加している。
2016年の密輸量は300トンに達する可能性があると推測されている。
ワールド・ゴールド・カウンシルが発表している統計によると、昨年のインドの金需要は約860トン、2016年上半期は約250トンである。インドは中国に次ぐ最大の金需要国である。
ー森田隆大のひとくち解説ー
数年前、インド政府は貿易赤字をもたらす最大要因の一つである金輸入を減少させるため、輸入税を導入した(現在10%)。今年に入り、金取引に物品税(1%)を新たに徴収すると発表した。
しかし、これに抗議して、第1四半期に金小売業者が40日超にわたるストライキを行い、需要に悪影響を与えた。
さらに、金価格が急騰したため、より安い価格で金を購入できるグレー市場(税金を支払わない密輸品)が急速に成長した。
現地報道によると、密輸者は国際価格(現在1トロイオンスあたり$1,320)より100米ドルほど低い値段で業者に卸している。
そのため、密輸の増加とともに、現地の金精錬業者が設備の閉鎖に追い込まれるなど、政府に助けを求める厳しい状況に直面している。密輸により喪失する政府による輸入税の年間収入も、10億米ドル以上になる見通し(密輸量=300トンと仮定した場合)である。
グレー市場を通しても、金を購入したい消費者の姿勢は、インドの潜在的な金需要の強さを象徴しているのではないだろうか?婚礼用、宗教用に加え、(銀行機能が提供されている)都市部以外で貯蓄・ファイナンス手段として日々活用されている金は、未だ有力な代替物がないのが実態である。
ここに来て、インド政府はこれまでの金需要抑制政策を見直すことを示唆しており、インドの中央銀行も消費者ファイナンスの現状と将来の在り方を調査する委員会を設置すると発表している。
よろしいですか?