ICT理論 × 機関投資家・スマートマネー|その③『リクイディティ(流動性)狩り』
リクイディティ(流動性)とは?
リクイディティ(Liquidity)は日本語に訳すと「流動性」で、市場で大量の注文が集まっているポイントという意味の専門用語です。
機関投資家はリクイディティを狙っている
機関投資家は自分の大量注文を隠すために、個人投資家の注文が集中している場所を狙います。でも一度に出すと価格が大きく動いてしまいます。そこで、個人投資家の注文(リクイディティ)を利用します。
リクイディティが集まる場所
主要なリクイディティプール
前回高値・安値
多くのトレーダーが意識する価格
ブレイクアウト狙いの注文が集中
心理的な価格(キリ番)
100.00、110.00などの切りの良い数字
個人投資家が注文を置きやすい価格
重要なサポート・レジスタンス
何度も反発している価格帯
多くのトレーダーが注目
トレンドライン
上昇・下降トレンドライン付近
ブレイクアウト待ちの注文が蓄積
損切り注文の集中ポイント
個人投資家のストップロス
機関投資家の格好の標的
リクイディティの種類
バイサイド・リクイディティ(Buy-side Liquidity)
前回高値の上
レジスタンスライン上
個人の売りストップ注文が集中
セルサイド・リクイディティ(Sell-side Liquidity)
前回安値の下
サポートライン下
個人の買いストップ注文が集中
リクイディティ狩りの仕組み
リクイディティ狩りの手順
① リクイディティプールの特定
② 一旦その方向にブレイク(個人投資家を騙す)
③ 個人投資家が飛び乗る/損切りする
④ その注文を利用して大量ポジション構築
⑤ 狙っている本当の方向に価格を動かす
具体例:バイサイド・リクイディティ狩り
価格の動き(前回高値突破→急落)
①一旦ブレイク! → 個人が「上抜けた!」と飛び乗る
②急落開始! → 機関投資家の本当の狙い
③結果 → 個人は高値で買わされ、すぐ損切りとなる
具体例:セルサイド・リクイディティ狩り
価格の動き(前回安値割れ→急騰)
①一旦ブレイク! → 個人が「下抜けた!」と売り参入
②急騰開始! → 機関投資家の本当の狙い
③結果 → 個人は安値で売らされ、すぐ損切りとなる
リクイディティ狩りの見抜き方
リクイディティ狩りは、機関投資家が個人トレーダーのストップ注文を狙って仕掛ける典型的な動きです。その特徴を理解することで、だましに引っかかるリスクを大幅に減らせます。以下のような条件や値動きが揃ったときは、注意が必要です。
狩りが発生しやすい条件
重要レベル付近で値が動いている
前回高値・安値に接近
何度も反発している価格帯
急激なブレイク
勢いよく重要レベルを突破
大きなローソク足での突破
すぐ逆行
ブレイク後すぐに元の価格帯に戻る
30分〜2時間以内の逆転
ボリュームの急増
ブレイク時に取引量が急増し、その後ボリュームが減少
狩り後のサインに注意!
リクイディティ狩りの直後は、相場の方向性が大きく転換する局面です。高値・安値を一瞬だけ突破してから反転する動きは、機関投資家がポジションを仕込んだ証拠とも言えます。ここで焦って追随すると「だまし」に巻き込まれますが、逆にサインを正しく読めば大きなチャンスとなります。以下に、狩り後のサインを紹介します。
バイサイド・リクイディティ狩り後の下落サイン
前回高値を一旦突破
長い上ヒゲの陰線形成
すぐに高値下に戻る
大きな売りボリューム
セルサイド・リクイディティ狩り後の上昇サイン
前回安値を一旦下回る
長い下ヒゲの陽線形成
すぐに安値上に戻る
大きな買いボリューム
時間帯別リクイディティ狩りの特徴
アジア時間(8:00〜16:00)
特徴:小規模な狩りが多い
対象:4H足以下のレベル
注意点:ダマシが多く、慎重に
ロンドン時間(16:00〜24:00)
特徴:大規模な狩りが発生
対象:日足レベルの重要ポイント
推奨:最も狙い目の時間帯
ニューヨーク時間(21:00〜翌5:00)
特徴:激しい狩りと反転
対象:週足レベルの超重要ポイント
注意点:値動きが激しく、資金管理重要
🌙 オーバーナイト(5:00〜8:00)
特徴:流動性が低く狩りは少ない
推奨:エントリーは避ける
活用:狩りの結果確認に使用
リクイディティ狩りトレードの注意点
リクイディティ狩りを利用したトレードは高い収益性を持つ一方で、特有のリスクも存在します。成功するためには、よくある失敗パターンを理解し、適切な対策を講じることが重要です。
よくある失敗パターン
①偽の狩りに騙される
偽の狩りに騙されることは、最も多い失敗の一つです。本当のブレイクアウトとリクイディティ狩りを区別するのは簡単ではありません。特に重要な経済指標発表時や、強いトレンドが継続している場面では、一見狩りのように見える動きが実際には本格的なブレイクアウトであることがあります。十分な逆転確認を行わずに早まったエントリーをすることで、大きな損失を被るリスクがあります。
②損切りが遅い
これも深刻な問題です。「これは狩りのはずだ」という思い込みにより、明らかにレベルが更新されても損切りができないトレーダーが多く見られます。市場は常に正しく、自分の分析が間違っている可能性を受け入れる柔軟性が必要です。
③時間軸の混同
これは戦略的な誤りを生みます。15分足レベルの小さな狩りを日足レベルの重要な狩りと勘違いしたり、上位足の大きな流れを無視して下位足の動きだけに注目することで、全体的な方向性を見誤ってしまいます。
④エントリータイミングが早い
本来取れるはずの利益を逃したり、不要な損失を被ることがあります。狩りの確認前にエントリーしたり、明確な逆転シグナルを待たずに飛び乗ることは、成功率を大幅に下げる要因となります。
成功のコツ
①上位足の流れを確認する
上位足の確認は必須です。日足や4H足のトレンド方向を把握し、重要なサポート・レジスタンスレベルを特定してから、リクイディティ狩りの分析を行います。上位足の流れに逆らった狩りよりも、流れに沿った狩りの方が成功率が高くなります。
②忍耐強く待つ
これも重要な要素です。狩りの完了まで焦らずに待機し、明確な逆転シグナルが出るまでエントリーを控えます。市場には常にチャンスがあるため、不確実な場面で無理にトレードする必要はありません。
③複数の根拠を重ねる
ことで、勝率を大幅に向上させることができます。単純なリクイディティ狩りだけでなく、オーダーブロックやFVGとの組み合わせ、そして時間帯と市場参加者の動向も考慮に入れることで、より確実性の高いトレードが可能になります。
④適切な資金管理
長期的な成功において、資金管理は最も重要な要素です。1回のトレードで総資金の2%以下のリスクに抑え、損益比1:2以上を目安とすることで、たとえ勝率が60%程度でも長期的には利益を積み上げることができます。
機関投資家心理の完全理解
なぜ狩りをするのか?
効率的な約定
個人の注文を利用して大量取引
スリッページを最小化
市場操作の合法性
テクニカル分析の範囲内
規制に抵触しない手法
個人心理の利用
FOMO(見逃し恐怖)を誘発
パニック売買を促進
まとめ
リクイディティ狩り = 機関投資家が個人の注文を利用する戦略
狩りの場所:前回高値・安値、サポ・レジ、心理的価格
見抜き方:急ブレイク → すぐ逆行のパターン
戦略:狩り確認後に逆方向エントリー
組み合わせ:OB・FVGとの併用で勝率アップ
成功の鍵:忍耐と冷静な判断
狩りに引っかからず、逆に狩りを利用する。これが個人投資家の生存戦略です。