重要指標前の過ごし方【中原駿の今日のひと言】7月27日更新
重要指標前の過ごし方
―FOMC後のマーケットアクションを考える―
今週は多くの重要指標が出るが、何と言っても注目は27日深夜(28日午前3時)のFOMC声明とその後のパウエル議長の会見だろう。その前にも住宅関連や耐久財受注、消費者信頼感などの重要指標が目白押しだが、よほどサプライズがない限り「FRBが現在の状況をどう捉えているか、マーケットとミスマッチはあるか」をマーケットは注視しているに違いない。
コンセンサスは0.75%の利上げで、先行きに関しては物価上昇に断固たる姿勢を示すものの、やや景気配慮を見せる発言、あるいは景気に先行きに対する悲観的な発言が出るのではないか―ということだ。特に0.75%の利上げは「異例」というパウエル議長の言葉が信頼に足るものならば、次回以降の利上げは0.5%の巡航速度に落とす、あるいは0.25%も有り得る―と示唆されれば、マーケットにとって僥倖となるだろう。すなわち、債券は上昇し、株は買われ、ドルは下がり、商品―特に石油や小麦などは軟調となろう。
問題はこうしたコンセンサスが足の速い投機筋織り込まれつつあることだ。つまり、「想定通り」でもごく短期的には逆にいく可能性がある。つまり、FOMCが想定通りでも、パウエル議長の発言がややハト派的ととられる可能性があっても、15分~数日程度は逆にいく可能性がある―ということだ。
それでもそのまま株安・消費高に回帰するとは考えにくい。6月中旬までに作られた機関投資家やヘッジファンドの巨大な「リスクヘッジポジション」があるからだ。彼らのポジションは「悲劇シナリオ」あるいは「スタグフレーション」ポジションといえる。原油など商品のロング、ドルのロング、株のショート(特にグロース株と日経平均)、債券のショート、現金のロングだ。だが、個別には正しくとも、トータルでは必敗のポジションといえる。「悲劇シナリオ」ならば債券は買われるはずだし、「スタグフレーション」シナリオであれば、現金を持つのはナンセンスだ。彼らのポジションは典型的な合成の誤謬となっており、見通しが正しくても、作った中のいずれかのポジションは大きくやられることになるだろう。
現時点ではまるで世界経済崩壊シナリオのようなこの「リスクヘッジポジション」は7月以降うまくいっているとは言い難い。そして、6月中旬に完成したこのポジションに対するマネージャーの確信度は今どれくらいまで落ちているのだろうか。いや、たとえポジションに確信度があってもあまりにも相場が逆にいけば、そのポジションを減らすことは十分あり得る。
ということは、短期筋が「想定通り」で債券のロングやドルのショートを減らしても、こうした巨大な「リスクヘッジポジション」がポジションを一部でも巻き戻せば、早晩マーケットは元に戻る。
なお、筆者のシナリオは短期的には「インフレ鎮静化」と「景気後退リスク」によって年前半のポジションは一定程度までは巻き戻しされ、それはまだ道の途上―というものだ。果たして筆者の考えのような値動きを見せるか、現時点での需給がもう一度明らかになる28日以降の相場に注目したい。