中原式日経新聞の読み方【中原駿の今日のひと言】7月25日更新
珍しいプロダクトが一面の記事になると・・・
<米国10年債利回り日足>
「滅多に紙面を―ましてや一面を賑わすものではない商品が一面に出たときは、天井か底である」。このマーケットセンチメントの一方的偏りを示す格言は、今も有効と思っている。暴落、弱気筋の意見が大勢を占める、景気後退の悲観一色となる―などがいい例だが、その意味で、まだ日本株に関してそこまで弱気には振れきっていないように感じる。一方で、少なくともここ1年くらいの債券価格の安値(あるいは金利の高値)は既にみたのではないか―と思えるのが、少し旧聞に属するが7月19日の日経新聞の1面、「債券価値、世界で2,300兆円減 1~6月」という記事だ。
まあ、いくつか割り引かなくてはいけないことはある。3連休明けで刺激的なニュースが無かった。それでも、債券の記事が日本経済新聞といえども一面になることは滅多にない。内容はある意味理想的な悲観論で、「債務に依存してきた世界経済は曲がり角」「国債を多く持つ金融機関の経営リスクも高まる」などとし、EU内でのイタリアの落札利回りの上昇や、社債の上乗せ金利、新興国の金融システムへの不安など満載。IMFのいう自国債券の下落で自己資本が毀損する「破滅のループ」まで載せている。〆は「債券利回りの上昇が世界では1.25兆ドルの利払い負担増加となる」と締めくくっている。
実際、信用スプレッドやクレジットリスクは完全に顕在化したとは言えないし、一部納得出来る部分もあるが、こと悲観論ばかり並べてバランスをわざと崩しているあたり編集の意図が見える。
こういう記事が出るということは、米長期国債に関して言えば大方底を見てしまったのではないか―というシグナルだろう。実際、米10年債の利回りは6月14日につけた3.5%前後から0.6%以上金利が下がり、債券価格は上昇している。もちろん、この記事が出た後も上昇を継続中。
景気後退もそれに伴うクレジットリスクの拡大もまだまだこれからなのだろうが、ことソブリン―リスクフリーといわれる米国債の特に10年ゾーンについては、今年の金利上昇の殆どは既に終わってしまったのではないだろうか。