「普通の日本人」が投資に勝てない理由 【中原駿の今日のひと言】7月20日更新
多数派は必ず敗北する
日本人はみんなと一緒が心地よい。だが、みんなと一緒だと絶対に負ける環境がある。マーケットだ。マーケットは数少ない少数派が多数派を破壊する数少ない場だ。多数決、多数派工作などが基本の民主主義社会にあって、そうした原則をあざけわらうのが相場というものだ。
そして、どうやらそれは今回も同じのようだ。多くのセンチメント指標が6月にかつてないレベルまで低下していた。6月の勉強会でも、「センチメントだけ見れば、リーマン・ショック並、パンデミックを遥かに下回る」と指摘した。財政出動、金融緩和こそないが自律反発する条件は既に取っていた。
そこに援軍となる情報が入って来た。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の月次ファンドマネジャー調査によれば、ファンドマネジャーは極端に弱気のポジションを取っているという。調査によれば、株式への資金配分は08年10月以来の低水準、マネーマーケットファンド(MMF)は01年以来の高水準。通常より低いリスクを取っていると回答したファンドマネジャーは差し引きで58%、世界金融危機時を上回る記録的水準に達した。つまり、株を減らしその株もグローバル分散投資から米国のディフェンシブ銘柄に移し、現金をたくさん保有している、という訳だ。リスクは高インフレ、次いで世界的リセッション、タカ派の中央銀行、システミックなクレジットイベントというのがコンセンサスだ。ファンドマネジャー達はこうした極端に悲観的なリスクに対応できるポジションをすでに作ってしまった。一方で向こう1年にインフレ率が低下するとの予想も金融危機以降で最高。これは金利低下見通しを意味する。BofAのストラテジストらによれば、同社独自のブル・ベア指標は「最大の弱気」を示したという。
ファンドマネジャーらが多く保有し、恐らく今後最も危険にさらされやすいのは米ドルと原油・商品、ESG(環境・社会・ガバナンス)関連資産、現金のロングと、米国債のショートだ。その中でも特にユーロ圏と日本の株式市場について、投資家は最も弱気のポジションを傾けている。
これだけ条件が揃えば、何ら好材料が無くても日本株が上昇するのも無碍なるかな。そして、米ドルを強気にしているのも長い目で見れば非常に危険―と分かる。