FRBの「黒歴史」とは 【中原駿の今日のひと言】7月13日更新
歴史は繰り返す
―米10年金利と2年金利逆転が意味するもの―
FRBは否定に必死になっているが、景気後退を示す最も有力な指標の1つは、米国2年債と10年債の逆イールドだ。過去この逆イールドが発生して景気後退に陥らなかったことはほぼない。あれほど否定された2019年8月の逆イールド発生も、結局パンデミックによる景気後退につながった。
<10年債と2年債の金利差>
今年は4月の頭に逆イールドになったものの、当時は金利上昇時における一時のあやとして無視された。しかし、7月に入ってからの逆イールドは0.1%、終値でも0.08%と4月の終値0.05%を超えた。これで今回の逆イールドは2007年以来最大のものとなった。今回の逆イールドがしんこくなのは、カーブの形状にもある。通常債券トレーダーは2年のみならず、5年、20年、30年と見ていく。短期から長期にリスクプレミアム(またはタームプレミアムともいうが)に応じて、いわば期間の長いものを持つリスクに応じて金利が順に上がっていくのが通常の姿である。言い換えれば、期間が長い金利は常に期間が短いものより高い。これを順イールドと呼んでいる。
景気回復期にはこうした順イールドは強化される。言い換えれば、短期と長期の金利差が拡大していく。このようなイールドカーブの形状変化は6月に10年債が3%到達するころまで続いた。しかし、10年債が3.5%を付けるころには、イールドカーブで最も高い金利は5年ゾーンになっていた。6月14日の終値は10年債3.49%に対して5年債は3.61%であった。逆に30年債は3.45%と10年債金利より低くなっていたのである。
マーケットは金利上昇を中期のリスクに過ぎず、米国の潜在成長率が上昇したとも好景気が長く続くとも考えなかった。そしてその後景気後退の可能性が高まり、金利上昇のリスクは減少しつつあると見做し、カーブ全体に金利が低下した。金利の山も5~7年ゾーンから2~5年ゾーンに前倒しされた。7月12日現在最も金利が高いのは3年ゾーンとなっている。そしてその金利はピークから0.5%程度低下し、3.07%となっている。
現在市場は金利引き上げを2023年の早い段階で終了し、その後は金利低下あるいは横ばいとしている訳だ。
心理面に左右される株式市場よりも債券市場はプロのたたき合いという部分と機関投資家が多く存在することからカーブの形状は集合知として未来を的確に予測することがある。それを信じるならば、インフレも金利上昇も2023年初頭、遅くとも中盤までに終了し、その後はリセッションと金融緩和の時代となるだろう。