EAの評価・選択方法(後編)[柿澤真正]
柿澤真正さんプロフィール
かきざわ・まさのぶ。2009年よりFXの自動売買システムの開発を開始し、EasySniperやMultiAgent等をはじめ、多くの自動売買システムを証券会社やユーザに提供してきた。インヴァスト証券の自動売買サービス「シストレ24」にて、提供ストラテジーMultiAgentが2016年の年間アワードを圧倒的成績、評価で獲得。また、ひまわり証券の自動売買サービス「エコトレ」にて提供ストラテジーの「ひかえめビーナス」が2013年〜2014年の1年以上にわたり利用者数1位をキープ。利用者数は700名を超える。現在は、MultiAgentをさらに進化させたドリームエージェントFXを提供中。
この連載では、FXの自動売買システム、その中でもMetaTrader4(以下MT4)上で稼働する自動売買システムであるEAにスポットを当て、それを運用していくための知識・ノウハウを専業トレーダーの柿澤真正さんにナビゲートしていただきます。EAの運用を検討している方はもちろん、既にEAを利用している方もぜひ参考にしてください。
※この記事は、FX攻略.com2019年4月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
EAの成績を二つの方法で判断
皆さん、こんにちは。前回に続き、「EAの評価・選択方法」に関して説明していきたいと思います。前回は「EAの特性」に関しての詳細を説明していきましたが、今回は「EAの成績」についてです。
EAの成績を確認する方法としては、前回の最後にも少しお話ししましたように、
- フォワードテスト
- バックテスト
の2種類があります。前回も説明した通り、フォワードテストとは実際にリアルタイムでEAを稼働させてトレードなどの動きを見ること、バックテストとは過去の相場データを使ってシミュレーションをすることです。
バックテストの詳細に関しましては次回以降に譲るとしまして、今回はフォワードテストの成績レポートを用いて、EAの成績の見方を説明していきたいと思います。基礎編からお読みいただいている方に関しましては重複する箇所もあるかと思いますが、再度復習だと思ってお付き合いください。
画像①はMT4の標準機能で出力できるレポートの一部となります。それでは①~⑥の各項目を順に見ていきましょう。
各項目を確認し性能を比較する
まずは①の損益曲線です。これは初期投資額からの損益額を時間の経過に合わせて示したものです。グラフ形式になっているのでざっくりとした数字の把握しかできませんが、これまでの損益の経過を視覚的に確認することができます。例えば、一定期間経過後の利益が同じ5万円だったとしても、-10万円の後に15万円取るのと、1万円を5回継続的に取るのとでは、恐らく多くの人がより安定的な後者を好むのではないでしょうか。損益曲線では、このようにどのような経緯を経て現状に至っているか、そのプロセスを視覚的に確認できるので便利です。
次に②の純損益です。これはレポート出力期間最終日時点での損益額です。現段階でどれだけの損益額となっているのかを示しており、これと初期投資額との比較で累計損益率を把握できます。画像①では、純損益は4034.89ドルとなっており、初期投資額は10000ドルですので、累計損益率は約40.3%ということになります。もちろん、この数字は大きければそれだけ多くの利益を稼いでいるということになります。
③はプロフィットファクターです。一般的には聞きなれない言葉ですが、自動売買の世界ではよく登場する概念です。これはそれまでの総利益をそれまでの総損失で割った数字であり、1より大きければ利益が出ているということになります。この数字も大きければ大きいほど利益を獲得する能力が高いことを示しています。例えばこの数字が2であれば、このEAは総損失の2倍の利益を稼ぐ能力を持っているということになります。
④はドローダウンです。ドローダウンとは、過去に最大でどれくらいの損失が発生しているかを表すものであり、損失率(リスク割合)を表す数字です。この数字が小さければ小さいほど、リスクが少なく、より安定したトレードを行うことを意味しています。⑤は勝率です。これに関しては説明するまでもないでしょう。
最後に⑥は総トレード数になります。総トレード数に関しては、成績には直接関係ありませんが、トレード数が多い方が良い、逆に少ない方が良いなど、人それぞれ好みがあるかと思いますので参考までに確認しておくと良いでしょう。
トレードの継続にはドローダウンを重要視
⑥は置いておくとして、では①~⑤のどれを見てEAを判断すれば良いのか。人それぞれ何を重視するかによって判断する優先度は変わってくるかと思いますが、私であれば、②純損益、④ドローダウンの二つで大まかに判断し、それに①損益曲線で全体的な損益の傾向を確認する、という手順を取ります。
ここで特に注意していただきたいのは、基礎編でも述べましたように、EAの評価にあたりより重要なのはドローダウンであるということです。いくらトータルで大きな利益を上げているとしても途中であり得ないくらいの損失が発生しているようであれば、人間の心理としてなかなかトレードを続けることはできません。
当たり前のことですが、継続的に利益を得ていく、資産を増やしていくことの前提条件としては「継続してトレードを続けられること」が何よりも重要です。継続してトレードを続けるために、ご自身の基準を満たすドローダウンのEAを選択するようにしましょう。