EAの評価・選択方法(前編)[柿澤真正]
柿澤真正さんプロフィール
かきざわ・まさのぶ。2009年よりFXの自動売買システムの開発を開始し、EasySniperやMultiAgent等をはじめ、多くの自動売買システムを証券会社やユーザに提供してきた。インヴァスト証券の自動売買サービス「シストレ24」にて、提供ストラテジーMultiAgentが2016年の年間アワードを圧倒的成績、評価で獲得。また、ひまわり証券の自動売買サービス「エコトレ」にて提供ストラテジーの「ひかえめビーナス」が2013年〜2014年の1年以上にわたり利用者数1位をキープ。利用者数は700名を超える。現在は、MultiAgentをさらに進化させたドリームエージェントFXを提供中。
この連載では、FXの自動売買システム、その中でもMetaTrader4(以下MT4)上で稼働する自動売買システムであるEAにスポットを当て、それを運用していくための知識・ノウハウを専業トレーダーの柿澤真正さんにナビゲートしていただきます。EAの運用を検討している方はもちろん、既にEAを利用している方もぜひ参考にしてください。
※この記事は、FX攻略.com2019年3月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
EAの選択基準は大別して二つある
皆さん、こんにちは。今回は、「実践編」に移っての3回目となります。前々回、前回と2回にわたり、EAのセットアップ方法について見てきました。これで、MT4へのEAの組み込みに関してはできるようになっているはずです。ただ、現実問題として、「組み込むためのEA」をまだ手にしていない方もいるのではないでしょうか。
そのような方の中には、「どうやってEAを選択すれば良いのか?」と悩んでいる方もいらっしゃるかと思います。そこで今回は、「EAの評価・選択方法」に関して2回にわたり詳しく説明していきたいと思います。
EAを選択するにあたっては、大きく以下の二つの選択基準が存在するかと思います。①EAの特性②EAの成績—それぞれについて詳しく見ていきましょう。
EAの特性を知ろう
「EAの特性」とは、EAのトレードスタイルや特徴のことをいいます。具体的には、
- スキャルピング、デイトレード、スイングトレード
- 順張り、逆張り
といったトレード頻度やトレード手法に関するもので、EAがどのようなトレード手法を前提にトレードロジックを組み立てているか、を指します。EAが持っている特性を深く知ることで、どのような相場状況で高いパフォーマンスを発揮しやすいトレードロジックかを把握できます。それによって、相場状況に応じた適切なEAの選択ができるようになる他、自分好みのトレード手法に合ったEAを選択できるメリットもあります。
どんなに最終的に利益が出るEAであっても、利用する人の好みに合わないトレード手法であれば、最後までEAを使い切ることができません。具体的な話をすると、例えば、ゆったりポジションを持つスイングトレードが好みの方が短期トレードを繰り返すスキャルピングタイプのEAを利用すると、利益が上がっていたとしても気持ちが落ち着かず、そわそわした状態でEAのトレードを頻繁にチェックしてしまい、せっかくの自動売買のメリットである「人の手を介在しない」ということを覆す結果となってしまいます。
また反対に、普段スキャルピングを好む人がスイングトレードタイプのEAを利用すると、ポジション保有時間の長さに耐えきれず、EAの決済を待たずに自分で決済してしまうという結果も生じてしまいます。
EAを利用して自動売買を行うことのメリットを「トレードによるストレスの緩和」や「労力の軽減」という前提で考えるのであれば、自分のトレードスタイルに合ったEAを選ぶことは非常に重要になります。
ただここで、EAの特性を把握するにあたって、大きな障害があります。それは、全てのEAが知りたい情報を可能な限り公開してくれているわけではないということです。
特性を把握するには実際に動かす必要あり
EAには独自のトレードロジックが詰まっており、これはEA開発者や提供者にとっての大きな知的財産です。そして、このことは成績が良いEAであればあるほど重要な事項となります。EAの特性を詳細に公開するということは、トレードロジックを公開することと同義です。
EAの特性を詳細に公開すればするほど、独自のトレードロジックであったはずのものが模倣され、その優位性が失われていきます。そのためEAの特性に関しては、そのトレードロジックの詳細が分からない程度にしか公開されないのが一般的です。
では、そのような状況下で、どのようにEAの特性を把握するのか。そのキーワードは、「バックテスト」と「フォワードテスト」です。バックテストとは過去の相場データを使ってシミュレーションをすることです。一方フォワードテストとは、実際にリアルタイムでEAを稼働させてトレードなどの動きを見ることです。一般的にはデモ口座で様子を見ます。特にバックテストに関しては短時間で長期間のトレードの動きを見ることができるため、EAの特性を把握する上で有効なツールとなります。
このように実際にEAを動かしてトレード内容を見ていくことで、どのような相場状況とマッチするEAなのか、どのようなトレードスタイルのEAなのか、を把握することが可能となります。EAを実際に手にしてからでないと利用できない手段ではありますが、もし試用版等が配布されているEAであれば、ぜひ試してみてください。
次回は、二つ目の「EAの成績」に関して見ていきたいと思います。